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名門スピーカーブランドの新世代モダンスピーカー

タンノイのDefinitionシリーズの旗艦モデル「DC10A」を試聴する

公開日 2014/04/22 12:00 鈴木 裕
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DC10Aの音質試聴レポート
■一聴して音場空間の広さと音像の立体的な描き方に感銘

試聴はエソテリックの試聴室で、レファレンスも同社の製品で固めた。デジタルプレーヤーがP-02+D-02(マスタークロックジェネレーターG-01からクロック入力)、アンプはC-02+A-02。

エソテリックのプレーヤーやアンプと組み合わせて、DC10Aを試聴した

聴き出してすぐにその音場空間の広さと、音像の立体的な描き方に感銘を受ける。クラシックのオーケストラではステージが左右のスピーカーを中心として出現し、各パートや楽器が定位しているのだが、それが単にそこにあるのではなく、床があってその上にある程度の高さを持って吹いたり弾いていたりするニュアンスがきわめて強い。

基本的な音調として、太く、音が濃い感じがあるのだが、それは音色感の濃厚さと言うよりも、味わいとか深みといった意味での、複雑な音の成分をびっしりと描きこんであるような感覚だ。音の立ち上がりや下がりは良く、音自体にシュアさと言うか厳格さを持っている一方、それと矛盾しているようだが、とても安定感のあるふくよかな音で、音と音楽の美しさをよく感じさせてくれるのも出色の表現だ。また演奏上のダイナミックな変化をリニアに聴かせてくれる感じも高い。低域の密度は最低域まで薄くならず、グランカッサやステージの床の鳴る暗騒音も上手に表現してくる。

【DC10Aはどんな人にお薦めできるか?】
音楽的な表現力と分析的な再生音を持ち合わせ
多くのファンに薦めされる価値あるスピーカー


ディフィニションシリーズの中で同じような全高を持つDC10Tはアキュレートな傾向が強く、高域のレンジも35kHzまで伸びているのに対して、DC10Aは音楽的な表現力の高さや味わいの部分のニュアンスの強いスピーカーだ。同じシリーズでありながら性格が違うのだ。ただし、それはあくまでもモダン・クラシックという成り立ちの範囲のことであり、音楽ソフトのそれぞれの音場感や音色感をよくほぐれた音で、情報量の欠落なく聴かせてくれる能力は高い。あるいは、プレーヤーやアンプ、電源系といったアクセサリー類の音の違いをよく反映するセンシティヴさも持っている。ノミナルインピーダンスは8Ωで能率も93dBあるため、アンプの選択肢も広いだろう。本体の材質はバーチだが、仕上げはダークウォルナット、チェリー、ブラックがあり、その美しい仕上げはモノとしての満足度が高い。音も含めて価格以上の価値を感じた。多くの人に薦められるスピーカーだ。

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