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名門スピーカーブランドの新世代モダンスピーカー

タンノイのDefinitionシリーズの旗艦モデル「DC10A」を試聴する

公開日 2014/04/22 12:00 鈴木 裕
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■エンクロージャーの容積が大きく同軸ユニット1発の特別なモデル

エンクロージャーの素材は樺材だ。寒冷地域で時間をかけて育成されたバーチで、年輪の間隔が狭く、堅く、いい響きを持っているという。エンクロージャーの断面は独自のラウンドカーブを持っており共振や内部反射を低減。強固なブレーシング(内部補強板)がいい塩梅で入っていて、構造体としての剛性と、楽器的な鳴りのバランスを取っている。低域を充実させることに対してはバスレフ方式だが、ここでもDC10Aの、ディフィニションシリーズ内における独自のポジショニングが見えてくる。

DC10Aの技術要素

DC10 Tではデュアルコンセントリックドライバーのウーファー部の他に、もうひとつウーファーを持ち、低域を充実させている。これに対してDC10Aではデュアルコンセントリックドライバー1発だけだ。しかし低域の再生レンジはメーカー発表によれば、DC10 Tの30Hzに対して、DC10Aでは28Hzと、むしろ低い領域までを確保出来ている。仕様表を見ると、全高はDC10Aの方が高いが、これはアルミ削り出しの重量級スピーカーベースを持っているためで、実はこの両者、バッフル面の縦と横のサイズを実測してみると同じなのだ。しかし奥行きが違い、DC10Aの方が奥に長い。結果としてはDC10 Tの容積が76Lなのに対して、DC10Aでは103Lと、3割程度大きくなっている。

つまり、デュアルコンセントリックドライバーの磁気回路の構造や磁石自体、そしてより大きい容積のエンクロージャーにデュアルコンセントリックドライバーを一発だけ搭載している点など、ディフィニションシリーズの中にあってスペシャルな存在なのがDC10Aと言える。冒頭に書いた、モダン・クラシックの絶妙なポジショニングというのは、まさにこのことだ。

タンノイを象徴するデュアルコンセントリックドライバー。その磁気回路は原点の方式を取り、磁石自体もアルニコを採用。エンクロージャーはバックローデッド・ホーン方式を取らないまでも大きめの容積にして深い鳴りを目指す。これがクラシックな部分。それに対してモダン、つまり現代的なテクノロジーの部分では、原点の磁気回路の構造を基本的に踏襲しながらもより最適化された設計を行い、従来の3倍の磁力を持つアルニコを採用。含浸処理したエッジや薬剤をコーティングしたパルプ系振動板などのマテリアル処理や、あいはパッシブネットワークの回路は組み立て後にマイナス190℃に冷却処理して信号伝達能力を高めたり、コンデンサーにはタンノイ独自の不要共振を低減する技術を投入するなど、きわめて現代的である。こうした意味でディフィニションシリーズの中にあって、もっともモダンでもっともクラシックな存在なのがDC10Aだ。

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