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音質だけでなく使い勝手も検証

ふだん使いに最適な実力派 − PHILIPS “Fidelio"「S1」の魅力とは?

公開日 2014/04/01 11:27 山本 敦
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■セミオープンバック型の持ち味を活かしたサウンド

「S1」の音響面での大きなハイライトは、「S2」と同様にセミオープンバック型(半開放型)構造のハウジングであることだ。13.5mm口径・ダイナミック型のネオジウムドライバーを搭載。本体背面に細かなメッシュ状のベントを設け、反対のノズル側には均圧化チャンネルを組み合わせてドライバーの駆動を最適化している。

セミオープンバック型を採用。ハウジングの後部はメッシュ状になっている

一般的にセミオープンバック型は、オープン型(開放型)のナチュラルな音の抜けと広がり感、クローズド型(密閉型)のタイトで力強い中低域を兼備したサウンドが持ち味になると言われている。「カナル型イヤホンは着けた時の圧迫感や閉塞感が苦手だけど、オープン型の音漏れも気になる」いう人には、双方の懸念が解消できる選択肢といえるだろう。


セミオープン型を採用する「S1」は、カナル型イヤホンながらナチュラルかつ開放的なサウンドを楽しめる
では「S1」の音を聴いてみよう。ハイレゾ音源の再生は、Macと再生ソフトの「Audirvana Plus」、Cambridge AudioのUSB-DAC「DacMagic XS」を組み合わせて行った。スマートフォンで使うユーザーも多いだろうと想定して、CDリッピングの素材もiPhone 5sで聴いてみた。

宇多田ヒカルのハイレゾタイトル『First Love 2014 Remaster』から「time will tell」を試聴した。解像感の足りないイヤホンで聴くと、宇多田ヒカルのハスキーボイスがやたらザラついて聴こえることがあるが、S1で聴いてみると、しっとりと伸びやかで奥行き表現に富んだ歌声が特徴的だ。オープンタイプのインナーイヤホンでは低域の力不足と物足りなさを感じることも多いが、S1ではベースラインがしっかりと力強くエネルギッシュだ。ぷりっと弾けるような弾力感と粘りけのある低音が気持ちいい。音圧はきつ過ぎず、音色が濃いめながらフットワークも軽快なサウンドだ。

洋楽の女性ボーカルはJane Monheitの『The Heart of The Matter』から「Sing」のハイレゾ音源を聴いた。とても明るく力強いメロディラインだ。ボーカルは細部のテクニックを描き込まれるだけでなく躍動感に満ちている。パーカッションやアコースティックギターの音色にも豊かな広がりと温もりがあって、まるでアーティストたちと演奏の空間を共有しているような没入感が体験できる。

宇多田ヒカル『First Love 2014 Remaster』(96kHz/24bit)

Jane Monheit『The Heart of The Matter』(96kHz/24bit)

インストゥルメンタル系のジャズはどうだろう。Bill Evans Trioのアルバム『Waltz for Debbie』から「Milestones」をハイレゾ版で試聴した。余分な演出っぽさはないが、クールなピアノの音色を、他のイヤホンで聴くよりも、S1はより雄弁に旋律を歌い上げている。ウッドベースのソロで弦を弾く指使いまでもがハッキリと目に浮かぶのは、情報量の多さゆえだ。ヴィレッジ・ヴァンガードに集うオーディエンスのざわめく声がリアルに再現され、クラブの室内に漂う熱気が立ち上ってくるようだ。音楽のジャンルを問わず、ライブもののリスニングにはぴったりのイヤホンと言えるのではないだろうか。

Bill Evans Trio『Waltz for Debbie』(192kHz/24bit)

ここまでハイレゾ音源を中心に試聴してみたが、次はiPhoneとの組み合わせでの音質も確認してみよう。

次ページ「S1」と「S2」の個性の違いを検証する

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