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Fidelioのフラグシップ機は名演・名録音をいかに再現したのか?

フィリップス“Fidelio”「X1」で山之内正がクラシックを徹底試聴する

2014/01/16 山之内 正
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X1は楽器ごとの音色の変化を精緻に描き分けてみせたが、その描写のきめ細かさは声の音色や響きにもそのまま当てはまる。バルトリの声は特に低音域から中音域のやや暗く重い音色に特徴があり、その声質でノルマのアリアを歌うと、これまで聴き慣れた音楽の印象が一変する。幼い子供たちを失うことへの不安や恋敵アダルジーザをめぐって揺れ動く心情が生々しく伝わるだけでなく、陰のある音色によって表現が深みを増し、説得力が高まるのだ。そうした演奏上の効果を実感するためには、声の音色の変化や微妙な響き具合を正確に再現しなければならない。

ヘッドホンアンプは主にラックスマンの最上位モデル「P-700u」を使用した

■誇張のない自然な音色で演奏の本質を雄弁に語る

録音時と同一形式の96kHz/24bit音源をX1で聴くと、そうした音色の違いを鮮やかに聴き取ることができる。アダルジーザの声はノルマとは逆に軽めで柔らかいが、その音色は彼女の年齢的な若さや純粋さにふさわしい。二重唱で異なる響きの声が重なり、異種の音をあえて対比させることで音楽的にも緊張が生まれ、演出効果はいっそう高まる。

X1のサウンドに注意深く耳を傾ける山之内氏


山之内正の評価
独唱陣をサポートするオーケストラはこの録音でもピリオド楽器が使われており、声のハーモニーが織りなす微妙なテクスチャーを冴え冴えとした音色で見事に際立たせている。X1は音場の澄んだ感触を引き出しつつ、オーケストラの躍動感豊かなテンポ感を際立たせ、この録音の個性を忠実に再現してみせた。

オーケストラ、ピアノ、ヴァイオリン、声楽と性質の異なるクラシックの音源を横断して聴いてみるとX1の特徴が浮かび上がってくる。ひとことで言い表すと「誇張のない自然な音色で演奏の本質を雄弁に語る」ということだろうか。言葉で言うのは簡単だが、それをここまで見事に実現した例は珍しい。


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