「正確さ」こそ本質 − ECLIPSEの最高峰スピーカー「TD712zMK2」を試聴する

TD712zMK2で様々なジャンルのソースを試聴したが、声の明瞭度とナチュラルさも特筆に値する。オーディオ再生の場合、女性ボーカルでは、高い音が先行すると「サ行」が強調されがちだが、プロの声楽家は横隔膜を使って発声するので、ソプラノといえども低音をしっかりと伴って立ち上がる。TD712zMK2では、全ての周波数帯域において立ち上がりが鋭く、厚みのある自然な肉声として感じ取れるのだ。

最後に、筆者が感心するのは、一般的なスピーカーとは異なる低域楽器の表現力だ。特に大型の太鼓やティンパニーは、皮の輪郭や振動が見えるほどスケールの大きさを感じさせる。TD712zMK2では、12cmの口径を持つスピーカーユニットと大容量のエンクロージャーで低域の再生限界を伸ばしているが、それ以上に、音圧では再現できない、振動面が縦か横か、口径、表面の微細に震えなど、質感の再現力に長け、それが一般的なスピーカーとは一線を画すリアルさに繋がっているようだ。

■音のプロが「TD712zMK2」を採用する理由

冒頭で述べたように、ECLIPSEのユーザーには、国内外の著名ミュージシャンやレコーディングエンジニアが名を連ねる。フュージョン界のトップ・ドラマーとして著名なHarvey Mason氏はTD712zMK2のユーザーであり、特に低域の表現能力を高く評価している。ミュージシャン/ドラマーで、数々の著名アーティストのプロデュースも手がける屋敷豪太氏もTD712zMK2のユーザーだ。

彼らがスピーカーに求めるのは、自らの演奏や録音状態をチェックする測定器的な役割といっても良いだろう。彼等が必要なのは、良い音でも、楽しい音でも、ステータスでもなく、演奏の一瞬の隙も見逃さない「正確さ」だからだ。

オーディオの楽しみ方は十人十色であっていい。しかし、好きなアーティストの意図した生の音に、限界まで近づいてみたいと思うのがファンの心情ではないだろうか。それは、HiFi(ハイ・フィデリティー=高忠実度再現)を志すオーディオマニアにも通じる。音楽ファンからオーディオファンまで、まずはその耳でTD712zMK2を体験して欲しい。