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【特別企画】なぜECLIPSE TDはミュージシャン/エンジニアに支持されるのか?

「正確さ」こそ本質 − ECLIPSEの最高峰スピーカー「TD712zMK2」を試聴する

公開日 2013/07/29 10:00 鴻池賢三
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良い音も悪い音も、そのまま再生するのがECLIPSEが目指す“純粋”という考え方だ。一方で、この世に存在するスピーカーを広く見渡すと、音源や再生装置の欠点を補い、音や音楽を楽しく、あるいは心地良く聴かせる「個性」を持ったスピーカーが多く存在し、実際、銘機と呼ばれる製品にはその傾向が散見される。

「純粋」か「個性」か。どちらを良しとするかは、リスナーの判断で良い。ただ心に留めておいて欲しいのは、両者が存在するという事実である。

■「TD712zMK2」の正確な再生を可能にする先進的な技術

TD712zMK2では、ECLIPSEが目指す“純粋”さ、具体的に言えば“インパルスの正確な再現”による“正確な音の再現”のために、さまざまな工夫と技術が投入されている。

特徴的な卵型の外観は「エッグシェル・コンストラクション」と呼ばれる。剛性が高く同一の半径面を持たせないことで、ドライバーから発せられた音が、内部定在波や前面バッフル角での回折効果によって変質しないよう考慮されている。特にTD712zMK2は、前モデルより内部容積を50%アップすることで、低域方向を中心に再生可能な周波数帯域を広げている。

空気の動きを妨げない構造を追求した卵形ラウンドフォルム「エッグシェル・コンストラクション」を採用。内部定在波や筐体に起因する回折効果を抑制できる

スピーカーユニットは直径12cmのフルレンジ一発で、一般的なスピーカーに比べると小口径だ。しかし、これは、コーンの俊敏な動き、つまり、タイムドメイン理論の肝である“インパルスの正確な再現”を最重要項目と捉えての選択である。

振動板は軽量かつ高い剛性と適度な内部損失を持ち、固有の音色を持たないグラスファーバーを採用したオリジナル品だ。前モデルに比べてマグネットやボイスコイルの最適化およびギャップの最小化により、磁束密度を約10%向上させるなど、より感度の高い応答性を実現する地道な改善も施されている。

独自のフルレンジユニットを採用。振動板には軽量ながら剛性や適度な内部損失を持ち、固有の音を発生させない素材を用いている

エッジ、ダンパー、磁気回路なども見直したことにより、より正確なストロークを実現している


5本の支柱を持つ「ディフュージョン・ステー」にユニットを取り付ける、「仮想フローティング構造」を採用。ユニットの不要振動がエンクロージャーに伝わるのを防いでいる
その他、振動による付帯音を抑制するため、スピーカーユニットを仮想的にフローティング構造にしたり、足場となるアンカーを備えるなど、細部に至るまで徹底的な検討がなされている。こだわりはスタンド部にも及び、スピーカー部を三本のスパイクで支える制振支持構造、剛性と内部損失を兼ね備えた支柱、スパイクを一体化したインシュレーターなど、枚挙にいとまない。

オリジナル特殊固定構造により、スピーカー部とスタンド部の点接触を実現。不要振動を排除することで、低域の再現性も向上させた

剛性が高く、素材固有の響きを抑制した試聴を採用。スピーカーの角度調整もシビアに追い込むことができる


脚部の「スパイク・オン・インシュレーター」は、スパイクとインシュレーターを一体化した独自の点接触構造を採用している

一見奇抜にも見える外観は、奇をてらったギミックではなく、音にこだわり、インパルスの正確な再現、ひいては正確な音の再現を追求し、結果として辿り着いた究極の形と言えよう。

次ページ“スピーカーの存在が消える”ほどの空間再現力

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