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ファッションセンスにこだわったデザインの作り込みが特徴のカナルがタイヤホン

「ドンシャリ系に新たな価値観を提案してくれる貴重な存在」 − MOSTERヘッドホン「NCredible N-Ergy」を聴く

公開日 2013/04/26 12:01 野村ケンジ
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■デザインだけが特徴ではない実力派イヤホン

モンスター製品には、多数のコラボモデルがラインナップされているが、そのひとつ「NCredible N-Ergy」は、ストリートシーンで人気のミュージシャンであり、俳優などもこなすニックキャノンの監修によって生み出されたもの。先ごろモデルチェンジが施され、基本デザインはそのままに、限定となるオレンジを含む5タイプのカラーバリエーション展開となった。

NCredible N-Ergy

「NCredible N-Ergy」最大の特徴といえば、小柄なカナル型イヤホンながら、ファッションセンスにこだわったデザインの作り込みだろう。円を基調としたやや大柄なボディやフラットケーブルからはタフさが感じられるし、ハウジング部にマグネットを内蔵し、ネックレスのように首から掛けられるようになっている機構もなかなかユニークだ。

いっぽうで、ユーザビリティメインでは当然のごとく「CTU(コントロール・トーク・ユニバーサル)」を搭載。1ボタン式のマイク付きリモコンによって、アップルiPhone(iPhone3以降)はもちろんのこと、サムソンGalaxyやシャープAQUOS PHONE、ソニーエリクソンXperiaなどのAndroidスマートフォンも通話や音楽再生のコントロールが行えるようになっている。

カラーバリエーションは全5色

このように、ファッションを最優先した“アクセサリー”系イヤホンにも見える「NCredible N-Ergy」だが、実際のサウンドを聴いてみると、これがなかなかのクォリティレベルを持ち合わせていることに驚く。価格帯を考えると「デザインのみであとはおざなり」になっても仕方のないところだが、意外なほどしっかりした音作りが行われているのだ。

■「ドンシャリ系に新たな価値観を提案してくれる貴重な存在」

傾向としては、ドンシャリ系と呼ばれるバランスで、あくまでもクラブミュージック向けの音作りが為されていることにブレはない。ダイナミック型ドライバーの特徴を活かした、メリハリの良さが最大の魅力ではある。しかしながら、低域のフォーカス感の高さといい、インパクトとクリアさを上手く両立した高域のキャラクターといい、演出の巧みさに関してはなかなかのもの。

特に高域は、安かろう悪かろうというイメージの強いドンシャリ系とは一線を画すもの。シンバルやライドなどの音を聴くと良く分かるが、ありがちな刺激臭溢れるザラザラした音色ではなく、響きの良いピュアな高域を聴かせてくれるのだ。おかげで、サックスやキーボードの音色がとても印象的に聴こえるし、女性ヴォーカルもややハスキーながら、明るく朗らかな歌声を楽しませてくれる。いつもの印象よりも数倍、心の底から楽しんで歌っているように感じられるので、自然と音楽にのめり込んでいってしまう。

いっぽう、低域はとてつもなくディープ。量感を稼ぐために途中の帯域で変な膨らみを設けることもなく、ボトムエンドまでしっかりと伸びきっているうえ、フォーカス感もしっかりしているため、キレの良いリズミカルなサウンドを堪能させてくれる。おかげで、ヒップホップやR&Bなど得意ジャンルの音楽は、体が勝手に動き出してしまう、素晴らしいグルーブ感だ。

そのいっぽうで、ハードロックなどを聴いて見ても、なかなかに絶妙なマッチングを見せたりする。実際のところ、ハードロック系は低域がかなりソリッドでないとグルーブ感が失われてしまうため、ドンシャリ系のサウンドを持つ製品とはあまり相性が良くないのだが、この「NCredible N-Ergy」はさにあらず。低域のキレがよく、ギターの音色も煌びやかさを持ち合わせているため、グルーブ感の高い、前のめりな演奏が楽しめるのだ。特に最新ジャパニーズロックとの相性は抜群。Supercellなどを聴くと、ギターもヴォーカルも存在感が際立った、ビート感溢れる演奏を聴かせてくれた。

確かに、サウンドキャラクター的にはかなりの個性があるものの、屋外ではこういったバランスの方が演奏を楽しみやすいだろうし、積極的な演出を持つ派手な聴かせ方のほうが方が好み、と感じる人も少なからずいることだろう。もともと、クラブミュージック系に割り切った潔さが魅力の製品だけに、すべてのジャンルをそつなくこなす優等生ではないが、否定的なイメージの強いドンシャリ系に、新たな価値観を提案してくれる貴重な存在であることは確か。重低音を忌み嫌う人にこそいちどは聴いてほしい、なかなかに魅力的な個性派だ。

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