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タブレットの新基準となるか

【レビュー】「iPad mini」の実力をチェック − 優れたバランス感覚のアップル新タブレット

公開日 2012/11/09 10:30 編集部:風間雄介
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Retinaディスプレイを搭載することが現実的でない理由は承知している。iPadの膨大なアプリ資産をそのまま活用することを重視すれば、iPad 2の解像度である1,024×768ピクセルか、縦横ともにその整数倍となる2,048×1,536ピクセルの2通りの選択肢しかない。中途半端な解像度にすると、アプリ開発者にその解像度へ対応させる手間を取らせてしまい、対応が整うまではユーザー体験も損なわれる。アップルが忌み嫌うところのフラグメンテーション(断片化)が起きかねない。

7〜8インチ級の2,048×1,536ディスプレイを無理して搭載すれば、コスト高によって価格が一気に高くなるだろうし、歩留まりも心配の種になる。またパネルの開口率も下がるため、結果としてバックライトを強力にする必要があり、バッテリーの持続時間に悪影響が出る。さらに画素数が一気に4倍になるため、グラフィック処理性能も大きく上げざるを得ず、より高性能なプロセッサーが必要となる。これも当然ながらコストや発熱、バッテリー消費などに悪影響を及ぼすだろう。

このような理由は重々理解した上で、それでもなお、Retinaディスプレイを搭載しなかったことが残念で仕方ない。こういった数々の不可能とも思える課題を力技で解決してきたのが、最近のアップル人気の源泉と考えていたからだ。また将来的にはiPad miniもRetina化される可能性が高く、これも即購入して良いものか悩む一因となり得る。

解像感については上記の通りだが、そのほかのディスプレイ性能はどうだろう。まず、視野角はIPS液晶ということもあって十分広い。複数人で一つの画面を見ても十分鑑賞に堪えうるレベルを確保している。

色の再現性はというと、第3世代iPadやiPhone 5と比べると、色域が明らかに狭い。光沢のある真っ赤なナイロンジャケットを撮影した写真では、第3世代iPadはきっちりとその素材感を表現するのに比べ、iPad miniでは赤色部分が朱色に見え、くすんだ印象になる。緑方向、青方向も同様に色再現範囲が狭く、第3世代iPadと比べると、色乗りが浅く、全体的にのっぺりとした印象となる。

iPad mini(左)と第3世代iPad(右)の色合いの比較。iPad miniは真っ赤なジャケットが朱色になってしまっている

同じく黄色や緑、青の色合いも、左のiPad miniは実際とは異なる色にシフトしてしまう

反面、最暗部から最明部までのダイナミックレンジは広く、暗部の階調の表現力は第3世代iPadにひけをとらない。暗めの映像が多い映画でも、黒つぶれをさほど気にすること無く視聴できるだろう。なお色温度については、筆者所有の個体で比較すると、第3世代iPadに比べてiPad miniの方が若干低い印象だった。

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