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前機種「HMZ-T1」と比較視聴

【レビュー】着実な進化を遂げたHMD第2弾、ソニー「HMZ-T2」

公開日 2012/09/12 20:19 ファイル・ウェブ編集部:風間雄介
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■HMZ-T2とT1を比較視聴

続いて画質をチェックする。HMZ-T2とT1を交互に、文字通り取っ替え引っ替えしながら視聴した。

余談になるが、T2とT1を、なるべく条件を揃えて視聴するのはなかなか難しい。というのは両機とも、装着してからゆっくり時間をかけて輝度を落とすという、人間の「暗順応」を利用した処理を行っているからだ。そのトリガーになっているのはヘッドパッドで、これで装着状態を判定し、徐々に輝度を下げていく。

この処理では、数十分単位でゆっくりと輝度を落としていくため、たとえばHMZ-T2をしばらく視聴した後にいきなりT1を見ると、すごく明るい映像に感じてしまい、まともな比較にならない。両モデルを同じ状態で視聴するためには、ヘッドパッドを何かで押しておくなど、両機の映像を表示し続けておく必要があるのだ。

閑話休題。まずは2DのBDソフト『ロスト・ハイウェイ』を視聴した。色温度は「シネマ2」、映像モードは「シネマ」で揃えた。

暗いシーンが連続する作品だが、有機ELならではの黒の沈み込みに目を奪われる。暗部の階調の描き分けも見事で、様々な黒の質感を克明に描き出す。自発光デバイスならではの圧倒的な黒の表現力は、昨年のモデルと同様、圧巻の出来映えだ。黒の表現能力については文句のつけようがない。もう一つ付け加えると、24p映像を2-3プルダウンせずに表示する「24p True Cinema」は非常に効果的。映画らしい映像が堪能でき、なぜ昨年モデルで採用しなかったのか不思議なほどだ。


下部のライトシールドの形状を大きく変更した
一方で、明部の表現能力には課題も残る。白ピークが飽和する傾向があるし、最明部付近の情報が失われてしまう傾向もある。これらはT1でも感じた傾向で、T2ではかなり改善されているが、それでもなお改善の余地があると感じる。デバイス自体のダイナミックレンジの問題なのかも知れない。

またデフォルト値ではディテールが込み入った部分の輪郭強調が強いため、シャープネスも落とす必要があるが、シャープネスを落としても、たとえば木々の細かな葉の部分などで、リンギングのようなノイズが依然として見える場合がある。これは絶対的な解像度が足りないからだろう。

そのディテールの表現能力についてだが、HMZ-T1よりもT2の方が、格子感が若干少なくなったことは、確かに実感できた。T2がT1に比べてパネル能力をしっかりと引き出しているのは確かだ。かと言って、それが劇的なレベルの変化かというと、それほどではない。個人差はあるだろうが、筆者個人の感覚としては依然として格子感がかなり気になる。特にフルHDテレビの映像を見慣れていると、ドット感が目立つ本機の映像は、ややチープに感じられるのだ。

さらに白いオブジェクトの周りに、ぼんやりとハローのようなものが見えるのも気になるポイントだ。これはHMZ-T1でも感じたことで、たとえば夜空に浮かぶ星の周囲が、白く薄ぼんやり光るのだ。とは言え、これは視力矯正用メガネを通して見ていることが悪影響を与えている可能性もある。

有機ELパネルは昨年のものとまったく同じだ

色についても、T1よりもT2の色再現性が高いことがわかり、パネルの持つ色再現性をさらに引き出していることが実感できる。全体的に色乗りが良くなった印象だ。これは前述の、14bitリニアRGB 3×3の変換マトリックスエンジンを使った成果だろう。ただしこれも、両機を見比べたらわかるという程度で、ドラスティックな進化を遂げたと報告できるレベルにはない。特に映画を観る際には、少し色の濃さを抑え気味にした方が、より自然な、映画らしい映像を楽しめる場合がある。ただしポテンシャルとして色再現範囲が広い方が、様々なケースに対応できるのは言うまでもない。

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