【最速レビュー】ハイレゾサラウンド配信音源再生に対応したオンキヨーの新AVアンプを山之内正が試聴

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取材・執筆/山之内 正
2012年05月10日
オンキヨーの新AVアンプ「TX-NR818」「TX-NR717」は、基本性能の充実はもちろんのこと、ALAC再生への対応、そして世界で初めてドルビーTrueHDのサラウンド音源の再生に対応するという、革新的なネットワーク機能を搭載した点が大きな特徴だ。e-onkyo musicで5月から配信されるハイレゾ・サラウンド音源をいちはやく入手し、山之内氏が試聴をおこなった。

革新的なネットワーク機能を搭載した新モデル

オンキヨーが6月上旬に発売するAVアンプの新製品、TX-NR818とTX-NR717はネットワークオーディオに関連した革新的な機能を内蔵している。その詳細は後で触れることにし、まずは概要を紹介しておこう。

TX-NR818

TX-NR818のフロントパネルを開けたところ


TX-NR717
いずれもTHX Select2 Plusに準拠した7.1chアンプで、前者がチャンネルあたり145W、後者が同140Wの出力を確保した大出力アンプだ。数値上はほぼ同等に見えるが、電源回路などアンプの基本構成はTX-NR818の方が設計に余裕があるので、大型スピーカーと組み合わせるならこちらを選ぶことをお薦めする。

TX-NR818の背面部

TX-NR717の背面部

3段インバーテッドダーリントン回路をディスクリートで構成したアンプ回路、デジタル信号特有のノイズを低減するVLSC回路など、オンキヨーのアンプでおなじみの高音質技術は同社のピュアオーディオ製品から受け継いだもので、両機種ともクオリティ確保のかなめになっている。ネットワーク再生の基本機能も両機種で共通し、中高級AVアンプの必須条件となった192kHz/24bit信号のデコードにも対応。新たにアップルロスレスをサポートしたことも注目を集めるに違いない。そして、2機種共通で今回初めて対応したのが、サラウンド信号のネットワーク&USB再生である。

ハイレゾ・サラウンド音源配信の再生対応に注目

5月30日からe-onkyo musicがドルビーTrueHD、WAV、FLACの各形式でハイレゾ・サラウンド音源の配信を開始するのに合わせ、この2機種を皮切りにオンキヨーのAVアンプはサラウンド音源の再生をいち早くサポートする。特にドルビーTrueHD形式での配信は世界初で、そのファイルをLANまたはUSB経由で読み込んで再生する機能の内蔵もこの2機種が世界で最初の製品になるという。さらに、ファームウェアのアップデートにより、今後は下位モデルでも同様な機能が使えるようになる予定だ。

e-onkyo musicが配信するハイレゾ・サラウンド音源は、2L、オクタヴィア、サイデラなど複数のレーベルから提供される約100アルバムでスタートした後、その他のレーベルも参加する予定で、いずれも映像を含まない音声だけのマルチチャンネルデータだ。SACDやブルーレイで発売されているマルチチャンネル録音と同様、5.1chシステムで再生するピュアオーディオのフォーマットと考えるとわかりやすい。

サラウンド音源はいずれもDRMフリーで配信されるので、パソコンでダウンロードし、NASまたはUSBにコピーして再生するというのが基本的な手順になる。ただし、前述のファイル形式のサラウンド音源はいまのところDLNAでサポートしていないため、アンプのDLNA機能ではなく、新たに搭載される「ホームメディア」のメニューから再生する必要がある。その点さえ注意すれば、これまでのLANオーディオやUSBオーディオと同様、テレビやスマートフォンの画面を見ながら選曲、再生などの操作ができる。映画や音楽など映像ソフトに加え、音楽ソフトでも最上のクオリティでサラウンド再生を楽しめるようになるので、音楽ファンなら誰もが歓迎するのではないだろうか。

ハイレゾ・サラウンド音源を再生する際は、「DLNA」メニューではなく、新設された「Home Media」メニュー(写真右上)から行う。

「Home Media」メニューから行う点を除けば、今までのネットワーク再生と手順は同じ。簡単に再生することができる。


「Onkyo Remote 2」からも「Home Media」にアクセスし、ハイレゾ・サラウンド音源再生が可能だ

ドルビーTrueHDの配信音源はジャケット写真やアーティスト名といったメタ情報の埋め込みに対応しないため、非表示となるのが残念
ステレオ音源はハイファイ指向の強い再生音が魅力

注目のサラウンド再生の前に、まずはステレオ音源で基本性能を確認しよう。TX-NR818、TX-NR717いずれも正確で丁寧なディテール描写が特徴で、エントリークラスとは一線を画す解像感を聴き取ることができる。192kHz/24bitを含むハイレゾ音源とCDで実例を紹介しよう。

オーケストラがフォルテシモに到達したときの押し出し感、音圧感は上位のTX-NR818が優位だが、細部の描写と高域にかけての抜けの良さは両機種ほぼ互角と言っていい。いずれもAVアンプというよりピュアオーディオのアンプに近いニュートラルな音調で、いい意味でハイファイ指向の強い音だ。ボーカルはすっきりと細身の音像だがウォームなタッチもそなえ、リアリティは抜群に高い。ジャズはピアノの粒立ちがクリアで鮮鋭なタッチを聴かせ、ベースやドラムと重なる低音部でも輪郭がぼやけずに深い音を響かせる。

サラウンド音源は実在感や空間の広がりに驚く

メニューをホームメディアに切り替え、NASにコピーしたサラウンド音源(ドルビーTrueHD 5.1チャンネル、96kHz/24bit)を聴く。オルガン伴奏でバボラークがバッハを演奏するおなじみの音源だが、マルチチャンネルで聴くと余韻の広がりが自然で、演奏している空間の大きさや天井の高さを連想させる。オルガンのペダル鍵盤の一番低い音域でも音色と音程をはっきり聴き取れるのはこの音源のステレオ版と同様で、ロスレス形式とはいえ、非圧縮と同等の純度を引き出していることがわかる。

2Lレーベルの音源で聴くアカペラの合唱曲は空間の描写が驚くほどリアルで、その空間のなかで溶け合うハーモニーが聴き手を豊かに包み込む。残響が長いにも関わらず声の表情や息継ぎの描写が生々しく、発音も鮮明で、和声が変化する瞬間の空気の変化など、ステレオ音源を上回る実在感も体感できた。

サンプル音源に含まれていた女性ボーカルは声のイメージがスピーカーに張り付かず、空中にフワリと浮かび上がる。フロント中心のミキシングだが、ギターやトランペットの音像は左右スピーカーを大きく離れた位置に定位し、ステレオ再生では体験できない方向感と距離感を再現、奏者が立っている位置をピンポイントで描写していることに驚く。映像がないのでかえってサラウンド音場の広がりは制約を感じることがなく、広く深いスペースを実感できるのが興味深い。

最後にBDで聴いた映画のサウンドについても紹介しておこう。『ハンナ』は台詞と効果音の音像が引き締まり、位置と音色の精度が高いことに特徴がある。『ラスト・ターゲット』の環境音は空間の広がりが大きく、遠近感にリアリティを実感。雰囲気や量感で広がり感を出すというよりも、作り手の意図通りに方向感や距離感を再現している印象が強く、高精度な立体音場が展開した。

音源の種類やチャンネル数に関わらず、ハイファイ指向の強い正確な再生音を引き出すことが、TX-NR818、TX-NR717に共通する。音楽再生の頻度が高い聴き手にお薦めしたい製品の筆頭候補である。

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