音質補間技術Supreme EXの効果も検証

PCオーディオ再生にも対応した一体型システム − ケンウッド“ Kseries K731”シリーズを聴く

レビュー/岩井 喬
2012年01月23日
リーズナブルなコンパクトステレオシステムである“Kseries”の新型モデルとして登場したレシーバー「R-K731」と2ウェイスピーカー「LS-731」。価格帯からすると「K711」の後継となるポジションであると考えられるが、「K1000」シリーズが生産終了となった現在、この「K731」が最上位モデルということになる。


R-K731(シルバー)

R-K731(ブラック)
レシーバー「R-K731」は信号の入力から出力段までをフルデジタル化し、電源供給回路を含めて左右独立にレイアウト、高精度な信号増幅とチャンネルセパレーションの向上を図っている。CD部はスロットインスタイルを新たに取り入れ、AM/FMラジオのほか、iPodやiPhoneのデジタル接続、及びUSBメモリー再生に対応したフロントパネル上のUSB入力、背面に設けられたUSBのB端子は48kHz/16bitまでの入力に対応したPC IN、96kHz/24bitまでの入力に対応した光デジタル入力を装備。手にしてみるとかなりの重量感があり、高剛性な4.5mm厚フロントアルミパネルや干渉を避けるため、ブロックごとに二次側巻き線を分けて構成した大型EIコア電源トランスなど、要所要所にこだわりのパーツを投入している。


R-K731の背面端子部
内部の電源供給回路もCDメカやアンプ部、デジタル回路部、アナログ回路部と各々独立した構成を採用。また信号処理においても高性能なΣDSPを配し、独自の音質補間技術Supreme EXもこの中で行っているという。このSupreme EXはデジタル化で失われた高域成分を補間するもので、音楽CDやデジタル入力で20kHz以上の高調波を付加する“音楽CDモード”とMP3などの圧縮ファイル再生時に圧縮処理の過程で失われた高域成分を補間する“音楽ファイルモード”を自動認識して切り替えられるそうだ。なお、本体カラーリングはシルバーとブラックが用意されている。


LS-K731(木目)

LS-K731(ブラック)
続いてスピーカーの「LS-K731」であるが、ラバーエッジ採用の11cmパルプコーンウーファーと、ショートホーンにも似た放射特性をコントロールする65kHzまでの広帯域特性を持つ2.5cmソフトドームトゥイーターから構成され、高密度なMDF製キャビネットを採用。フロントバッフルは18mm厚となる。このフロントバッフル上部にはデザイン的にもワンポイントとなる緩やかなラウンドが施されており、回折波低減に結びつけている。

クロスオーバー周波数が13kHzと高めの設定となっており、ウーファー部での受け持ち帯域が広めとなっているのだが、いわばウーファーをフルレンジ、トゥイーターはスーパートゥイーターに見立てて、ボーカルや弦楽器などの主要な楽器成分の音が集中する帯域を一つのユニットで再生させるのだ。そうすることで音の繋がりを良くし、トゥイーターは高域成分のきめ細やかな再生に注力できるため、96kHz/24bitなどのハイレゾ音源再生時には大きなアドバンテージになるのである。「LS-K731」もカラーリングは2色用意されており、木目調とブラック仕様から選ぶことができる。

基本的にCD再生でのサウンドを聴くことにしたが、サイズを感じさせない量感とバランスの良さとともに、音場表現力の豊かさ、空間の広さを実感した。特に一辺1m程の正三角形を結ぶ至近距離で聴いた場合ではサウンドステージの臨場感がとてもリアルに感じられ、スピーカー再生ならでは空間の奥行き感もわかりやすい。なお「R-K731」のボリューム表示が“50”を超えるとリレーで切り替わる動作音がするのだが、アンプにおける小音量時と大音量時の動作を最適化しているものと思われる。

Supreme EXを有効にすると音場はより一層広がりを増し、音像の密度も厚くなってくる。質感も滑らかで、ハーモニーの階調はかなりきめ細かい。クラシック音源である『惑星』では細やかな管弦楽器の響きは澄んでおり、ホールトーンは豊潤な余韻に満ちる。ティンパニの打感もハリ良く、ローエンドは心地よい弾力だ。ジャズ音源『プリーズ・リクエスト』においては、密度ある滑らかなピアノの中高域が涼やかな倍音を聴かせ、低域の伸びも素直で存在感のあるタッチである。ウッドベースは弦の鮮やかなたわみが生き生きと張り出し、胴鳴りもむっちりとした響きで、ドラムの自然な厚みとともに各々が立体的に浮き上がってくる。

『Pure2』ではホーンの定位、キレもすっきりとしており、アンビエントの余韻もナチュラルだ。ウッドベースは躍動的な動きでボーカルはウェットできりっと引き締まった音像感である。口元は滑らかで艶良く描かれる。ロックの『MENIKETTI』ではディストーションギターの芯が良く見える小気味よい刻みと、スマートな引き締めを見せるリズム隊との対比がいかにも自然で、アナログライクな厚みも持っている。

iPodからのデジタル接続のサウンドはS/Nが向上し、音像も太くディティールがより細やかに描写される傾向で、クラシックの音場は付帯感のないクリアな響きが得られる。USB接続になると音像の太さ、厚みがより強調される傾向で、どっしりと安定感のあるサウンドとなる。ポップスのスフィアをPC環境(Windows Vista、foobar2000、WASAPI)で聴いてみたところ、ボーカルは質感滑らかで、声のハリも自然に捉えられる。コーラスは清々しいシャープな際立ちとなるが、ソロパートではリヴァーブの響きも分離良く、クリアに浮き上がってきた。ギターはリッチな倍音が声を包み込み、リズム隊はふっくらと安定した土台を築いて聞きやすいサウンドを作り上げてくれた。

どの入力でも安定した空間表現、太さのある音像を描いてくれることが良く分かったが、価格を踏まえてそのサウンドと対峙すると、倍以上のシステムで聴いているような充実感が得られる。特にニアフィールドでのサウンドの存在感は驚きのクオリティで、C/Pが非常に高いシステムであるといえよう。

試聴ソース
■クラシック
・『ホルスト:惑星・木星/レヴァイン指揮・シカゴ交響楽団』(ユニバーサル・グラモフォン:00289 477 5010)
■ジャズ
・オスカー・ピーターソン・トリオ『プリーズ・リクエスト』〜ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー(ユニバーサル:UCCU-9407)
・『Pure2 〜Ultimate Cool Japan Jazz〜』〜届かない恋、夢であるように(F.I.X.:KIGA10)
■ポップス
・スフィア『Hazy』(ランティス:LASM-34095~6)
■ロック
・デイブ・メニケッティ『MENIKETTI』〜メッシン・ウィズ・ミスター・ビッグ(DREAM CATCHER:CRIDE35)

岩井 喬 プロフィール
プロ・民生オーディオ、録音・SR、ゲーム・アニメ製作現場の取材も多数。小学生の頃から始めた電子工作からオーディオへの興味を抱き、管球アンプの自作も始める。 JOURNEY、TOTO、ASIA、Chicago、ビリー・ジョエルといった80年代ロック・ポップスをこよなく愛している。

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