最新モデルの音質をチェック

ビクターの“ツインシステムユニット”方式採用カナル型イヤホン − 「HA-FXT90」を速攻レビュー

レビュー/高橋 敦
2011年04月05日
ビクターの独自技術が生み出した“ツインシステムユニット”方式を採用する、カナル型イヤホン最新機種「HA-FXT90」のレビューを高橋敦氏が速報レポートする。

独自のマイクロHDユニットが実現した「ツインシステムユニット」の技術

ビクターからまた画期的な技術を採用するカナル型イヤホンが登場した。中高音再生用と低音再生用のユニットを並列配置する「ツインシステムユニット」を搭載した「HA-FXT90」だ。


HA-FXT90(ブラック)

限定モデルのレッド
帯域ごとにユニットや振動板を複数搭載するイヤホンはこれまでにも存在したが、ダイナミック型ユニットの並列配置は業界初だ。その実現には、先立ってトップマウント構造を実現した極小径マイクロHDユニットの存在がある。

通常のダイナミック型ユニットであれば、単純に大きさの問題で、並列配置による搭載は非現実的になる。しかしビクターにはマイクロHDユニットがあったがゆえに、並列配置というアイディアが現実性を持ったのであろうし、逆にマイクロHDユニットの存在がそのアイディアを導いた面もあるはずだ。

中高域/低域用2つの振動板を並列に配置したツインシステムユニットを採用

さて複数ユニットを搭載するモデルでは、ネットワーク回路で音声信号を帯域ごとに分割し、各ユニットに送り込むのが常識だが、本機は少々違う。高音用のユニットと低音用のユニットに送り込まれる音声信号は同じものだ。ユニット自体のチューニングによってそれぞれの帯域での特性を向上させつつ、重なる帯域も大胆に活かして、音の厚みを出そうという狙いである。そのため、各ユニットの個性は大きな意味を持つ。

中高音域ユニットの振動板は、PET素材にカーボンナノチューブをウェットコーティングして、さらなる軽量性と高剛性を実現。カーボンナノチューブは通常のカーボンよりさらに応答特性に優れ、歪みが少ないという。

ユニットの背面にJVCロゴをデザイン。ブラック/レッドそれぞれに異なるデザインを採用している

低音域用振動板の素材はHA-FXC71/51と同様にカーボンだ。そしてそれぞれ前述のように主担当帯域にフォーカスしたチューニングが施されている。その両ユニットを、不要振動を抑える高比重金属製メタルユニットベースに配置して、一体化したものが「ツインシステムユニット」になる。では、実際の音を聴いていこう。

ケーブルの色も本体色に合わせてコーディネートされている

レッドモデルは編組ケーブルを採用。表面はクリアカラーの被覆でカバーしている


最新モデル「HA-FXT90」のサウンドを速報

Helge Lien Trio「Hello Troll」のベースとドラムスは、音像を緩く広げることなく、ぎゅっと詰まった密な音色。ベースはアタックや音程感も確か。ピアノは角を落とし過ぎずに硬質な透明感を持っている。全ての音がブレなくビシッと決まっている印象だ。2基のユニットの音が正確に、効果的に重ねられていると感じる。

静かな場面では、スネアのバズやベル系の音色など、弱音の響きの抜け方、残り方も印象的。徹底的な制振対策も功を奏しているのだろう、音場に綺麗な余白が残されているので、それを背景に弱音も引き立つ。

相対性理論「シンクロニシティーン」のベースも、音像を膨らませずにぐいっというドライブ感だ。ドラムスも含めてリズムは、中低域の厚みを出しつつ、しかしタイトだ。やくしまるえつこの倍音感の豊かな歌声は、ふわっという柔らかさよりも、はっとさせるシャープさの要素を引き出す。シンバルもすっと耳に切れ込んでくる、刃のような薄さで心地よい。

ツインシステムユニットの強みは、わかりやすいワイドレンジさや量感のアップにではなく、音色や音場の充実感にあるようだ。イヤホンにおける複数ユニット構成の新しい可能性を示してくれる製品だ。

本機の付属アクセサリー

プラグはL型のステレオミニ


【SPEC】●形式:ダイナミック型 ●出力音圧レベル:107dB/1mW ●再生周波数帯域:8Hz〜25kHz ●インピーダンス:12Ω ●最大許容入力:150mW ●ケーブル:1.2m Y型、ステレオミニプラグ L型 ●質量:約6.8g ●問い合わせ先:日本ビクター お客様ご相談センター TEL/0120-2828-17


高橋 敦 プロフィール
埼玉県浦和市(現さいたま市)出身。東洋大学哲学科中退後、パーソナルコンピュータ系の記事を中心にライターとしての活動を開始。現在はデジタルオーディオ及びビジュアル機器、Apple Macintosh、それらの周辺状況などに関する記事執筆を中心に活動する。また、ロック・ポップスを中心に、年代や国境を問わず様々な音楽を愛聴。その興味は演奏や録音の技術などにまで及び、オーディオ評に独自の視点を与えている。