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シリーズの新フラグシップをハンドリング

多彩な機能がより使いやすく − ソニー“Cyber-shot”「DSC-HX9V/HX100V」を試す

公開日 2011/03/30 10:22 編集部:山本 敦
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昨年の春に「DSC-HX5V」が登場したときにも、AVCHDのフルHD動画撮影やGPS/コンパス機能、TransferJet、スイングパノラマなど先進機能を“ぜんぶ乗せ”した内容に驚愕させられたものだが、それから1年間が経ち、より一層の進化を遂げた2つのフラグシップモデル「DSC-HX9V」「DSC-HX100V」が“Cyber-shot”シリーズに加わった。


DSC-HX9V

DSC-HX100V
ともに撮像素子は有効1,620万画素の「Exmor R」を搭載。動画は28Mbpsの1920×1080/60p撮影が可能になり、3D静止画の撮影機能も強化された。今回はコンパクト機のDSC-HX9Vを中心にハンドリングし、最新モデルの特徴に迫りたい。

“Cyber-shot”シリーズの持てる機能を全て詰め込んだコンデジ「DSC-HX9V」

広角24mmからカバーする光学16倍ズーム対応のGレンズを搭載した。レンズ部にはリニアモーターを搭載し、新しいAFコントロールとの組み合わせで約0.1秒という高速オートフォーカス性能を実現している。本体をスイングせずに、ワンショットでフォーカス位置が異なる2つの画像を記録し、被写体の深度を計算した後、3Dに必要な左右の視差を生成し記録する「3D静止画モード」も加わり、従来機よりもさらにバラエティ豊かな動画・静止画撮影ができるようになった。

3Dスイングパノラマ撮影に対応

新設された「3D静止画」


本体を手に取ってみると、煩わしく感じるような重さでは全くないが、多くの機能を詰め込んだことが実感される、ズシリとした手応えがある。レンズのズーム倍率がHX5Vの10倍から、本機では16倍に拡大されたこともあり、本体奥行き寸法はHX5Vが28.9mmであったのに対して、HX9Vでは33.9mmと深くなっている。バッテリー込みの本体質量はHX5Vの約200gから、HX9Vで約245gになっている。新たにポップアップ・フラッシュを内蔵した点など、メカニカルなギミックは、特に男性カメラファンの購買欲をくすぐるポイントになりそうだ。

ポップアップフラッシュを採用

光学16倍ズーム対応のGレンズを搭載


背面右側にコントロールボタンを配置。押し込み感がやや浅いので、最初は操作に慣れる必要があった

グリップ側にバッテリーとカードスロットを搭載


ズーム撮影をテスト

昼間の撮影では最大ズームを効かせても手ブレを抑えて撮影できる。旅行の持ち歩きに重宝しそう

HX5Vにも高度なオート撮影機能が搭載されていたが、HX9V/HX100Vではこの機能が整理・強化された。これまでモードダイヤルにそれぞれ独立して配置されていた「手持ち夜景モード」「逆光補正HDR」「人物ブレ軽減モード」の3つが、新しく「プレミアムおまかせオート」として集約された。プレミアムおまかせオートでは、33のシーン認識を行った結果を解析し、シャッターを押した際、自動的に複数の画像を記録して重ね合わせ処理を行い、高精細な1枚の写真を生成する。重ね合わせ処理のため、ワンショットに2〜3秒程度の処理時間がかかるので連写には向いていない。重ね合わせ処理を行わない「おまかせオート」も従来通り採用されているので、普段はこちらを使うこともできる。

モードダイアルからオートや3D、パノラマなど多彩な撮影機能が選べる

静止画サイズの設定画面


「ペット」モードなども設けられたシーンセレクション

マクロモードに切り替えて、料理を明るく“美味しそうに”撮影できるという「料理」モードで撮影。写真は美味しそうに撮れても、実物はあまり…でした


画像管理ソフト「PMB(Picture Motion Browser」を付属する

MR(メモリーリコール)モードを用意。あらかじめ登録しておいた好みの設定を簡単に呼び出せる

高速オートフォーカス性能を体験するため、水族館で動きの激しい動物を被写体に撮影してみると、その高い性能の恩恵が明らかに感じられた。シャッターボタンを押すと、ほぼ同時に狙った被写体に素速くフォーカスし、撮りたい瞬間を的確かつ逃さずに写真に納められる。追尾フォーカス機能と合わせて使えば、動きの激しい被写体の撮影がグッと楽になるはずだ。

被写体にカメラを向け、コントロールホイール中央の「●」ボタンを押すと追尾フォーカスが起動する

高速AFにより、シャッターチャンスを逃さずキレイな写真が撮れる


シーンモードでは「逆光補正HDR」が改良された。従来は露出アンダーとオーバーの画像2枚から生成していたところを、新たに適正露出の画像を加えた3枚を使用。部分ごとに最適な階調表現を行いながら、白とびや黒つぶれの発生を抑えて“見たまま”に近い自然な1枚の画像を生成する。実際に通常のシーンオートで撮影した画像と比べてみたところ、風景写真は青空の色のグラデーションがよりきめ細かく、色彩感も豊かに撮れる印象だ。他のシーンモードでは、被写体の背景をぼかして撮れる「背景ぼかし」モードも写真撮影の楽しさを広げてくれる。モードダイアルを「MR」に合わせると、ユーザー設定値を3つまで登録しておき、撮影時に素早く読み出すこともできる。

「プレミアムおまかせオート」で撮影。暗所は若干粒子っぽさが出てくるが、明るさや色合いの表現などは無理なくこなす

シーンセレクションを「逆光補正HDR」に設定して撮影。好天下での撮影時は白飛びを抑え、コントラストもキツくなり過ぎず、色味も的確に表現する


「おまかせオート」で撮影。水の透明感も自然に表現される

こちらも「おまかせオート」での撮影。赤色もバランスの良い発色


特殊撮影機能も、3D静止画撮影をはじめ充実している。新たに搭載した「3D静止画」機能は、シャッターを切ると同時に視差をずらした2枚の写真を撮影し、前景・背景の自動判断を行って奥行きを推定し、自然な立体感をつくり出すというもの。本体搭載のモニターは3D表示に対応していないのでその場で3Dプレビューはできないが、HDMIで3D対応テレビにつないだり、MPO形式のファイル再生に対応する機器へSDカードなどに入れて持ち出すことが可能だ。

スイングパノラマは「HRモード」が新しく搭載された。カメラを縦に構えて横方向へスイングすれば、より高精細な4,096×10,480ピクセル(約43M)の高解像パノラマ撮影が行える。パノラマ写真の仕上がりは解像感が高く、周囲の歪みが気にならないほど上手に補正されている印象だ。

従来から備わる横構えポジションでのパノラマ撮影のほかに

カメラを縦に構えたポジションでパノラマ撮影も可能に。最大43M(10480×4096画素)でのパノラマ撮影も可能になった


横構え、標準画質で撮ったパノラマ写真

静止画の連写撮影も、最大16メガの高画質な写真が秒間10コマの速度で撮れる。メカニカルシャッター方式での連写撮影なので、仕上がりも自然だ。再生時には通常の一覧表示のほかに、カメラ本体を左右に傾けて連続する写真を動画のように再生して楽しめる「傾け再生」が面白い。

連写撮影はシャッターボタンを押し続けているあいだ、1回の撮影で最大10枚を連写できる。再生は一覧表示のほかに

本体を左右に傾けて、動画のように連続写真を再生できる「傾け再生」も楽しい


動画記録は新設の「PSモード」が、プログレッシブ方式による28Mbps・1080/60p動画を撮影できるモードだ。動画データは独自フォーマットにより記録されるため、BDレコーダーやディスクにファイルを移して動画ファイルとして再生することはできない。基本的には撮ったカメラをHDMIケーブルでテレビにつないで再生する楽しみ方になる。テレビでPSモードの動画を視聴してみたところ、大画面テレビで見応えのある高精細な映像の仕上がり具合が実感できた。なお動画撮影時には、同社のビデオカメラ“Handycam”シリーズに採用されている、上下左右2軸とジャイロセンサーによる回転軸方向のブレにも対応した3軸補正対応の手ブレ補正機能がはたらくので、コンパクトな筐体ながらブレを抑えた安定感の高い動画が撮影できる。さらに動画撮影中に静止画シャッターを切れば、3メガ(16対9)の静止画撮影が行える。動画撮影時の音声については、本体上部に大柄なステレオマイクが設けられ、記録品位の安定感が高まった。撮影時に誤って指がかからないよう、マイク位置のレイアウトにも気が配られている。ただ、本体のデザインをスマートにしつつ、3.0型の大型モニターを搭載したためか、背面のボタンはやや窮屈で操作しづらかった。特にMOVIEボタンは押し込み感が浅く、撮影を開始/終了の手応えがわかりにくいように思う。

「PSモード」では独自規格の28Mbps・1080/60p動画を撮影

撮影した動画のプレビュー画面



USBバスパワー充電・給電ができるようになったこともポイントで、これにより使い勝手が高まった。USB方式のACアダプターも同梱しているが、PCとUSBケーブルで直接つないだ状態でも充電できるので、例えばデータを吸い上げたあと、接続したまま充電しておくことができる。出張先にPCとカメラを持って行く場合は、ACアダプターは持たずに、USBケーブル一本携えるだけで良くなるので、携行性の面でもポイントが高い。USB給電のメリットは、本機をHDMIでテレビに接続して動画を再生している間も絶えずバッテリーを供給できるので、例えば視聴中にカメラが電池切れしてしまうといった心配もない。なお充電・給電中の撮影は行えない。

USB対応のバッテリープラグと専用のUSBケーブルを付属

側面にはHDMI端子を装備


本体底部にUSBスロットを搭載

USB給電モードのON/OFFを設定


“α”シリーズに迫るハイスペック機「DSC-HX100V」

HX9Vとともに“Cyber-shot”の新たなトップモデルに君臨するモデル。デジタル一眼“α”シリーズをイメージさせる、なだらかな流線型を活かしたボディのデザインは、スタイリッシュであるだけでなく、両手で持った時の安定感も高い。背面ボタンのレイアウトはスムーズな静止画・動画撮影が可能なよう、十分に考慮されていると感じた。

背面には高精細なTruBlack技術を採用した3.0型液晶モニターを搭載

モニター部はマルチアングル対応


モードダイアルの動作もスムーズだ

MOVIEボタンは背面側に配置。HX9Vと比べると押し込み感もしっかりとしていて操作がスムーズに行えた

レンズは広角27mmからの光学30倍ズームに対応した、カールツァイス バリオ・ゾナーT*レンズが搭載されている。レンズの明るさはワイド端時の開放値がF2.8と、明るさは十分。リニアモーターの採用により、AFスピードが約0.1秒という高速性能はHX9Vに同じとなる。

カールツァイス バリオ・ゾナーT*レンズを採用

レンズキャップを装着したところ。本体には紐で結びつけておける

レンズズームの使い勝手については、リング操作によるズーム/フォーカス機能を搭載した点がユニークだ。レンズ側面部分に切り替えスイッチがあり、ズームのみを手動操作する「AF/マニュアルズームモード」と、フォーカスも手で合わせられる「マニュアルフォーカスモード」を切り替えて使える。

リング操作によるズーム/フォーカス機能を採用した

ズーム/フォーカス機能の切換は本体のスイッチから行える


本機も撮像素子に有効1,620万画素の「Exmor R」を搭載し、3D静止画や1080/60pフルHD動画の撮影も可能。“Cyber-shot”シリーズの先進機能を一通り揃えた点はコンパクトモデルのHX9Vと同じだが、背面のバリアングル対応モニターにより撮影アングル自由度が高められている点や、そもそも本体がHX9Vよりも大柄で、よりしっかりとホールドできることもあり、特に夜景の撮影では手ブレなど撮影ミスを抑えながら、安定して写真撮影が楽しめた。TruBlack技術採用の約92万画素/3.0型液晶モニターも見やすくて好感触だったが、0.2型のEVFも備えている点はカメラファンの心を満足させてくれる。EVFと液晶モニターはアイセンサーにより自動で切り替わる点も嬉しい。

晴れた日の風景撮影。「おまかせオート」で撮った写真

シーンセレクションを「逆光補正HDR」に設定。画像全体はやや暗めだが、木の葉の部分などディティールがより細かく表現される印象


HX9Vにはあって、本機にはない機能の一つがUSB給電・充電機能。本機をテレビにつないで、撮影した動画をゆっくり鑑賞したいというニーズはあると思うし、ビジネス用途も考慮した場合はぜひ搭載して欲しかった機能だ。また、ハンドリングしていてレンズキャップの取り回しも気になった。キャップを付けているのを忘れて電源を投入してしまうと、起動時にズームレンズがせり出してきて、キャップがポンと飛び出してしまう。レンズ機構の故障を防ぐためには撮影前に必ずキャップを外すよう心がけるか、あるいは常時外しておくという手もあるが、レンズ保護のためにはお薦めできない。本機専用のレンズ保護フィルターを装着できるようにするなど一工夫あれば、より扱いやすいカメラになるのではと思う。

底面に三脚穴を装備

本機のバッテリー。USB給電・充電が行えないのは残念なところ



サブカメラとして使い勝手もよく、遊び甲斐のあるカメラ

今回紹介した2台は、動画・静止画とも、昨年春に発売されたモデルから大幅なレベルアップを果たし、本格的なムービーカメラとしても使えるカメラだ。HX5Vで目一杯詰め込んだ機能を、HX9V/HX100Vではユーザーに使いやすいよう、上手に整理整頓されてまとめ上げた印象で、多彩な機能を使いこなす楽しさが増した。HX100Vはαシリーズの域に迫る高画質とコンパクトな筐体を両立しており、デジタル一眼を持ち歩くのは面倒だが、機動力優先でハイレベルな写真を撮りたい時などに適したカメラだと思う。デジタル一眼ユーザーのサブカメラを探している方々、またはコンデジからワンランク上のカメラを使ってみたい方々におすすめしたい。

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