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プロカメラマン・川村容一がチェック

フルHD 3Dの魅力がビデオカメラの可能性を広げる − ビクター“Everio”「GS-TD1」で撮る3Dワールド

公開日 2011/02/08 19:10 レビュー/川村容一
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ビクターのデジタルビデオカメラ“Everio”のラインナップに、初めてのフルHD 3D動画撮影に対応したモデル「GS-TD1」が登場した。今回は本機で撮影した3D映像の画質を、プロカメラマンの川村容一氏がチェックした。

最新のハイスピードプロセッサー「FALCONBRID」により高品位フルHD 3D動画撮影を実現


Everio初のフルHD 3D対応機「GS-TD1」
ビクターの“Everio”「GS-TD1」は本格派のフルHD 3D動画撮影に対応したビデオカメラ。本体には暗闇でも光をくっきり捉えることができるF1.2という明るい「GTレンズ」を2基と、2つの高感度B.S.I. CMOSイメージセンサーを搭載している。黒を基調としながらシルバーのアクセントを配したボディは、やや大柄に見えるが、握ってみると実にしっくりとくる。指のかかりも良く、前後の重量バランスも絶妙で、撮影のための道具ならこの大きさが使いやすいと感じた。少し手が小さめな方でも大丈夫なサイズだと思う。


本体に2基のレンズを搭載し、2眼方式による3D撮影に対応した
操作系のボタンは、多機能を備えつつも整理されていて使いやすいと感じた。主なボタンは本体の背面に集中しており、「3D」ボタンで2D-3D撮影の切り替えが行える。液晶モニターを開けば電源が入り、すぐに撮影が始められる。撮影中はズームレバーや録画ボタンの操作がメインになるだろうが、タッチパネルでも操作できるので、初めてビデオカメラに触れるユーザーにもわかりやすく、直感的に操作できるメニュー配置になっている。記録は64GBの内蔵メモリー、SDXC対応のSDカードスロットに対応しており、内蔵メモリーからSDへのデータコピーや移動も可能だ。簡単操作で気軽に撮れるので、ユーザーは3Dを活かす構図などを考えながら撮影に没頭できて、それぞれの映像作品をつくることに集中できると思う。

ボタンなど操作系が使いやすさを十分に考慮してレイアウトされている。リアパネルにはHDMI端子も搭載する

本機にはビクターが開発した最新のハイスピードプロセッサー「FALCONBRID」が採用されている。FALCONはハヤブサの意だが、その名のイメージ通りに超高速な画像処理が高画質な3D映像の記録を支えている。左眼用/右眼用の2つのフルHD映像の信号を同時に処理しながら1,920×1,080/60i記録を実現している。

レンズは3D撮影時に光学5倍、2D撮影時は光学10倍のズーム対応。静止画も3D/2Dで撮ることができる。2Dの静止画撮影は最高画質が298万画素となっているが、シャッターのレスポンスがとても良く、好印象だった。しかもAFの追従性が良かったので、真正面から向かって走ってくる電車にもピントをしっかりと合わせられる。手ぶれ補正はアクティブモードも搭載しているので、歩きながらの撮影でも安定感ある構図で撮影が楽しめる。

液晶モニターは専用メガネなしでも3D表示のプレビューが行える、視差バリア方式の裸眼液晶3Dモニターを搭載する。撮影前に被写体の構図を決める際など、立体感を持たせた構図をしっかりと確認できる。抵抗膜感圧式のタッチパネルはレスポンスもよく快適だ。もちろん2D表示にも対応している。3Dの視差調整は「オート」と「マニュアル」が選べ、マニュアル選択時にはモニターでプレビューしながら、ユーザーが任意に3D表示を最適なレベルに調整できる。

視差バリア方式の裸眼液晶3Dモニターを搭載

モニター左側に表示される視差調整のアイコンをタップすると


視差調整を「オート」「マニュアル」のどちらで行うか選択できるようになる

マニュアルを選んで最適な視差へ任意に調整できる
動画の音声についてもビクター独自のK2テクノロジーを活かした高音質記録に対応しており、独自のバイフォニック3Dサウンド記録が行える。

アプリケーションは「Everio MediaBrowser 3D」を同梱。発売時点ではMPEG-4 MVCで撮影したフルHD 3D映像の「カット編集」のみ対応しているが、後のアップデートで一般的な編集、AVCHD変換後のBD保存なども可能になる予定


3Dで撮る!動画・静止画の実力は?

では、GS-TD1の画質を見ていこう。本機の3D撮影はフルハイビジョンで撮れる「MPEG-4 MVC」モードと、960×1,080/60iのサイドバイサイド方式の3D映像を記録する「AVCHD」モードが選べる。MPEG-4 MVCモードで撮影した3D映像は、カメラをHDMIケーブルで「Frame Packing for Interlaced」方式の3D映像表示に対応するテレビにつなぐことで、いっそう高精細な3D映像が楽しめる。今回はソニーの“BRAVIA”「KDL-46HX900」が本方式に対応していることが確認できたので、撮影した3D映像を本機で視聴してみることにした。

3D映像はむやみに強調された立体感ではなく、商店街や室内を撮った映像は奥行き感とディティール描写がとても自然に表現される。電車が正面から走ってくるシーンでは細部の立体感が活き活きと蘇ってきた。Everioシリーズが元来得意としている上質な細部の描写能力が3Dでも活かされており、色彩の鮮やかな被写体でも色が飽和してのっぺりと見えることなく、細部の質感を保ったまま立体感が乗ってくる印象だった。逆光での露出制御も巧みで、急な明るさの変化にもスマートに対応してくれる。太陽光が不意にフレームインしてしまった際も、映像全体を適切な明るさに調整してくれて頼もしかった。日陰や室内などの暗い場所は、高感度対応の性能がいかんなく発揮され、ノイズの少ない映像を描写する。夜景でも黒が引き締まっていて、夜の雰囲気がとてもリアルに再現される。


3Dモードで静止画を撮影してみた。MPOフォーマットの3D静止画データのほかに、JPEGの2D静止画データ(1920×1080画素)が同時に記録される。今回はJPEG静止画の方をご紹介する

3D撮影時のレンズの光学ズーム倍率は5倍。それでもここまで画角が変化するので、街中スナップなどではそれほど困らない
3D映像を撮影してみて、動画・静止画の撮影に、これまでとはまた違った楽しみ方が発見できそうな感触を得た。「3D撮影に最も効果的な構図」を色々と模索するだけでも楽しくなる。3Dを撮る際は、思い切って大胆に周囲の風景を切り取ってみることが、楽しめるポイントだと感じた。例えば構図の手前側に人物や花など、わざと孤立させて配置した風景を撮ってみると、3Dならではの立体感が強調され、2Dでは見ることのできなかった映像がそこに浮かび上がってくる。3D撮影の際もカメラをむやみに動かさないで撮るフィックスショットが効果的だ。また立体感が少し乏しいように思われる遠景も、5倍の望遠レンズで被写体にクローズアップすることで、今までにない臨場感が得られる。ビデオカメラの新しい可能性が本機に詰め込まれている。


【SPEC】●記録方式:(3D)MPEG-4 MVC/H.264、AVCHD規格準拠 AVCHD (2D)AVCHD規格準拠 MPEG-4 AVC/H.264 ●撮像素子総画素数:1/4.1型 高感度 B.S.I. CMOSセンサー 332万画素×2 ●レンズ:JVC HD LENS GT ●最低被写体照度:4ルクス ●液晶サイズ:3.5型 92万ドット クリアブライトIII ●ズーム:光学10倍(2D)、光学5倍(3D) ●静止画最大撮影サイズ:2304×1296ドット ●記録メディア:内蔵メモリー 64GB、SDXC/SDHC/SDメモリーカード ●消費電力:4.8W(3D/AVCHDモード)、3.8W(2Dモード) ●撮影時外形寸法:102W×64H×186Dmm ●撮影時総質量:約590g ●問い合わせ先:ビクターお客様ご相談センター TEL/0120-2828-17

◆プロフィール 川村容一
写真家。広告代理店写真部、編集プロダクション写真部を経て独立。デジタルカメラでの取材ものから大判フィルムを使った商品撮影が主な仕事。モノクロの処理は自宅暗室で行っている。JPS展実行委員会など事業の運営に参加する。写真添削講座講師も務める。25年以上経験の現場のプロ。社団法人日本写真家協会会員。

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