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注目海外ブランド訪問記

カジュアルオーディオブランド「ケンブリッジオーディオ」「モダン・ショート」を山之内正が訪ねる

2010/12/09 レポート/山之内 正
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モダン・ショート
メッツォ、アビアノなど意欲的なシリーズを続々と登場させた


モダン・ショートのフラグシップ「パフォーマンス6」
ケンブリッジオーディオのスピーカー開発はピュアオーディオとは別のアプローチの製品に限定しており、本格的なハイファイスピーカーの開発はAP傘下のもう一つのブランド、モダン・ショートの領域である。

同社は1967年に創設された歴史あるブランドで、創設者のロドニー・ショートとノーマン・モダンの2人の名前が社名の由来だ。モダン・ショートのブランド価値を一気に高めた製品が、1984年に発売された2ウェイスピーカー「MS20」である。その流れをくむ「MS30」「MS40」も人気を博し、名声を確実にした。その3年後にタンノイが同社を買収し、グッドマンと合わせた3大ブランドで欧州最大のスピーカーメーカーに成長したことを記憶している読者もいるかもしれない。1989年には3シリーズに射出成形バッフルを採用した「MS3.10」が加わるが、このスピーカーは英国のベストセラーモデルになり、射出成形技術の有効性が世界的に広まるきっかけになった。

1994年には現在のラインナップの起源である「パフォーマンスシリーズ」が登場し、ハイファイスピーカーメーカーとしての評価を確実なものとした。その5年後、APの傘下に入り、意欲的な製品を続々と開発してラインナップのバリエーションを広げていく。その過程で誕生した「メッツォ」「アヴィアーノ」などは、モダン・ショートの新しい世代を象徴する製品群であり、シリーズ最新モデルはいまもファンの支持を集めている。

ブランドの存在感を高めたフラッグシップの極めて高い実力


「パフォーマンス6」の内部構造
人気モデルに採用されている先進的技術の多くは、同社のフラグシップであるパフォーマンスシリーズの技術の一部を継承したものである。その詳細を同社の開発責任者であるグレアム・フォイに紹介してもらった。

トールボーイ型の「パフォーマンス6」のユニークなキャビネット形状は、平行面を排した独自のシェル構造に由来するものだという。キャビネット素材には剛性の高いポリマーレジンを採用しており、完全なモノコックボディを構成。カットモデルのキャビネットに触れてみたが、固有の鳴きとは縁がなく、スピーカーのエンクロージャーとして理想的な性質をそなえていることがわかった。

アルミ製のドームトゥイーターは、独立したハウジングに取り付け、金属製ディフューザーと組み合わせることによって、キャビネットから完全にフローティングされている。ハウジングの通気孔は、独自のベンチレーションシステムとして機能し、トゥイーターが呼吸するように動作して開放的な再生音を実現するのだという。このユニークな形状のトゥイーターユニットは「ATT(Aspirated Tweeter Technology)」という名称が与えられている。

特殊な構造を持つ「パフォーマンス6」のATTシステム

「パフォーマンス6」のATTシステムの技術は「メッツォシリーズ」にも生かされている(メッツォのトゥイーター構造)

ウーファーはアノダイズ処理されたアルミ振動板上に放射状のリブを設けたCPCドライバーを採用し、独立したキャビネットを与えられている。トゥイーターと同様、キャビネットとユニット間で不要振動を伝えない工夫が徹底している。

パフォーマンス6の再生音は3次元の空間再現力が精密で、音像の配置はピンポイントでピタリと決まる。低域から高域にかけて立ち上がりと音速が揃っているため、小音量でも力強く音が浸透し、実在感が高いことにも感心した。パフォーマンス6の音はモダン・ショートのスピーカーを象徴するもので、クオリティの高さは疑う余地がない。いまのところ日本への導入は未定だが、日本のオーディオファンにも、ぜひじっくり聴いてもらいたいスピーカーである。

AP社の試聴室にて

◆取材旅行を終えて
ケンブリッジオーディオとモダン・ショートはそれぞれ得意とする製品カテゴリーが異なるが、製品レベルではもちろんのこと、開発のプロセスでも両者が補完し合う要素がいろいろあるのだという。筆者が最も感心したのは、先端技術の完成度を高める作業を妥協せずに進め、目標に向かって着実に追い込んでいく姿勢が両ブランドに共通していることだ。そのチームワークが生み出す成果が大いに楽しみだ。


【執筆者プロフィール】
山之内 正 Tadashi Yamanouchi
神奈川県横浜市出身。東京都立大学理学部卒。在学時は原子物理学を専攻する。出版社勤務を経て、音楽の勉強のためドイツで1年間過ごす。帰国後より、デジタルAVやホームシアター分野の専門誌を中心に執筆。趣味の枠を越えてクラシック音楽の知識も深く、その視点はオーディオ機器の評論にも反映されている。

(当記事は『オーディオアクセサリー 139号』からの転載です。『オーディオアクセサリー 139号』のご購入はこちらから)

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