「オーディオと音楽の酸いも甘いも熟知した大人の魅力」

ラックスマンのCDプレーヤー「D-38u」を石原氏が聴く

石原 俊
2010年01月18日
ラックスマンが往年の銘機「SQ-38」系の現代版、「SQ-38u」(ファイル・ウェブ特別レポート)をリリースしたのは記憶に新しい。その精密にして心あたたまる音楽表現は、真空管アンプの歴史に新たな1ページを書きくわえたといっても過言ではないだろう。そのSQ-38uとペアを組むべきCDプレイヤー、それが「D-38u」である。

D-38u

SQ-38u

D-38uは、SQ-38uと同じ16mm厚のMDFのケースでメインシャーシ部がカバーされている(底面は同じサイズなので積み重ねセッティングが可能だが、その場合は放熱の必要上、SQ-38uをD-38uの上に載せる)。ドライブメカニズムはD-0系と同じく、シャーシの左側にあり、デジタル系とアナログ系の電力供給がセパレートされている。

D-38uのリアパネル

トレイの右側にある小窓から見えるのは出力段の真空管ECC82(12AU7)だ。この回路は通常のソリッドステート式バッファー回路の後段に配されており、フロントパネル中央下に設けられたSQ-38uと共通のデザインのスイッチを上下させることで、真空管出力とソリッドステート出力を切り替えることができる。このスイッチを含めたノブ類の操作感は抜群だ。

そして、持ち重りのするリモコンの使用感もすばらしい。なお、本機には本格的なヘッドフォン出力を装備しているので、単体で使用しても立派なヘッドフォンシステムとして機能する。

そのサウンドはオーディオと音楽の酸いも甘いも熟知した大人の魅力をもつものだ。ジャズでは、音場の空気感と音像の実体感の両方に重心のかかった非常にバランスの良い表現を聴くことができる。したがって旧い録音はフレッシュに、新しい録音はトラディショナルに感じられる。

女性ヴォーカルは音像がやや大きめだが、耳元に囁きかけられるかのよう。おそらく設計者はオンナの色気(ただし、あくまでも音楽における)の何たるかを熟知しているのであろう。

それでいてクラシックは正統派である。オーケストラの解像度は抜群だ。弱音時は、木管セクションのひとつひとつの音像がキュッと引き締まっており、個々の動きを的確に聴き分けることができる。大音量時でも弦楽セクションが混濁せず、ヴァイオリンセクションのうねるような動きを捕捉し続ける。

真空管出力とソリッドステート出力の音色差は微妙だが、前者は暖かみを、後者は爽やかさを基調としている。


◆筆者プロフィール 石原 俊 Shun Ishihara
慶応義塾大学法学部政治学科卒業。音楽評論とオーディオ評論の二つの顔を持ち、オーディオやカメラなどのメカニズムにも造詣が深い。著書に『いい音が聴きたい - 実用以上マニア未満のオーディオ入門』 (岩波アクティブ新書)などがある。

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