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DNAが継続されていくことに期待

ビクター主催「TVF2009」授賞式レポート − 大林宣彦監督らが挨拶

公開日 2009/03/04 12:05 山之内 優子
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日本ビクター(株)が主催する東京ビデオフェスティバル(TVF)は、31回目となる本年、最後の開催となった。今回は授賞式の模様をお伝えする。


これまでのTVFを振り返りながら語り合う、写真左から羽仁進、北見雅則、高畑勳、椎名誠、佐藤博昭、小林はくどう、大林宣彦の審査員各氏。
3月1日、横浜市のランドマークホールで開催された授賞式には、TVFを通じて交流してきたビデオ作家たちが集まり、最後のイベントの時間を楽しんだ。集まった作家の中には、人生の半分をこのフェスティバルと共に過ごしてきたという熱心な映像制作者も少なくない。国内だけでなくアジアや南米各地のビデオ映像作家にとってもTVFは創作の目標となってきた。今回、TVFが終焉を迎えることに自分の創作の故郷を失うような寂しさを感じている人も多いようだ。


ビデオ大賞を受賞した「メラニー」の作者Klaus Fleishmannさんと奥様。「作品を多くの人が見て評価してくださったことがありがたいです。日本に来ることができて大変満足です」とコメント

最後の授賞式となった今回は、これまで31回全回に作品を応募された岡野重和氏や、審査員におなじみとなった池田稔氏、佐藤均氏、西山洋一氏のアマチュアビデオ作家も登壇。
日本ビクター(株)取締役の米光信彦氏は「今年でTVFを終了する理由は、ビデオ文化というものを達成できた事と、一企業の主催によるTVF継続が現在の社会情勢上不可能になったことがある。今後は累積した過去の優秀作品を皆様へフィードバックできるよう、有効な活用を考えてゆきたい」と述べた。

第1回のTVFでは、将来映画監督として有名になる作家たちの作品をおさえ、川崎市立御幸中学の生徒たちの「走れ江の電」が大賞を受賞した。その後も、TVFは生活の中での作者の視点を感じさせる作品を評価してきた。作品や授賞式を通じて、世界各地の作者どうしの交流も生まれた。


1978年に第1回作品募集をスタート
第31回の本年は第1回の応募数の10倍近い2,231作品が、世界54の国と地域から集まり、そのうち、国内作品は760作品、海外作品は1,471作品で、TVFの海外での認知度の高さを語っている。


今年も多くの作品が寄せられた
応募者の64パーセントは20代。最近数年間の優秀作品には、若い女性の作品が目立つ。今年の傾向としては、海外作者のドラマ作品の増加がある。当初は時間や経済的余裕のある世代の趣味と考えられていたビデオ映像制作が若者世代や女性に浸透していることが伺われる。

これらの作品は今後、インターネットなどを通じて紹介を続けていく方向で検討されているという。TVF審査員の審査活動に対しては、企業の行う文化活動を評価するメセナアワード大賞映像部門が授与されている。入賞作品に対して厳しくも暖かい審査を行い、受賞式で作者一人一人に言葉をかけ、表現活動についての高い見識を示してきた審査員各氏の貴重な発言記録集作成も、ぜひ、望まれるところである。

TVFでは優秀作品をインターネットで無償で配信し、多くの人に視聴可能としている。また受賞式は、作品に即しての具体的なコメントと共に「ナンバーワンよりオンリーワンの作品を評価したい」(大林宣彦氏)、『私』が集まってこそ『公』ができる」(羽仁進氏)など、個人が社会の中で生きるうえでの貴重な提言を聞く事ができる機会でもあった。

映像を作る人と見る人、作る人どうし、作る人と審査員どうしが人間的なふれあいができる気持の良い場を作りだしてきたTVFは今回で終了する。TVFが作り出して来たようなコミュニケーションの場と、ここから発信された提言はこれからますます必要とされるものであろう。審査委員のひとりである小林はくどう氏も「今後、TVFのDNAが継続されていくことを期待したい」と語った。

TVFについての詳細、優秀作品の視聴は、下記の東京ビデオフェスティバルのHPから。
http://www.jvc-victor.co.jp/tvf/index.html

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