「様子見」の来店者が多数

ヨドバシAkibaが見たニコン、キヤノンの新ミラーレス。早急な専用レンズ拡充などが必要と指摘

Senka21編集部・竹内純
2018年12月26日
専用レンズの充実へ様子見の来店者
レンズ交換式カメラ市場をリードするニコン、キヤノンの二大ブランドから、9月下旬にニコン「Z7」、10月下旬にキヤノン「EOS R」、そして、11月下旬にはニコン「Z6」と、ファンが待望していた両社初のフルサイズ・ミラーレス機が発売された。

大きな話題を提供し、店頭も盛り上がりを見せたが、はたして、年末商戦を迎えた今の状況はどうなのか。最先端情報を発信する「ヨドバシカメラ マルチメディアAkiba」のカメラコーナーをクローズアップする。

クリスマスセールで賑わうヨドバシカメラAkibaのカメラコーナー

「発売当初は勢いもあり、店頭も大いに盛り上がりました。ただ、メーカーサイドで想定していたほどには勢いが持続せず、現在はひと段落しています」と語る穐田純也氏。手に取る来店者は依然少なくなく、関心の高さをうかがわせるものの、販売には結びつきにくく、「もう少し売れて欲しかったというのが正直なところ」と巻き返しに期待を込める。

ヨドバシカメラマルチメディアAkiba 一眼ビデカメツーリストチーム 穐田純也氏

ウイークポイントとして指摘するのは専用レンズがまだ少ないこと。同時発表されたニコンのNIKKOR Z レンズは3本、キヤノンのRFレンズは4本。ちなみに、2010年からミラーレスを手掛けるソニーのEマウントレンズのラインナップは48本になる。

通路に面した売り場のエンドコーナーでの展開も注目を集めるニコン「Zシリーズ」。お客様の思わず足を止める

目下の主な購入層は、ニコン、キヤノンのデジタル一眼レフユーザーの買い替え・買い増し。両社ともにマウントアダプターが用意され、手持ちの従来レンズを使用できる点は評価されているが、「すでにニコン、キヤノンの一眼レフを所有しており、今すぐに購入しなければならないわけではなく、もう少しレンズが揃ってからと様子見の方が少なくないようです。レンズのラインナップは非常に大事。また、大口径マウントにより得たメリットを肌で感じていただけている方もまだまだ少ないように思います」と専用レンズの重要性を訴えた。

ニコン「Z6」「Z7」を両方購入したり、レンズを全機種同時に購入したりする例が見られる一方、新規購入としてレンズ交換式を選択していくケースはほとんど見受けられない。「新製品発表会では、スマホでの撮影に不満でカメラデビューを目指す層もターゲットとして想定されていたようですが、最初からフルサイズというのは価格のハードルが高過ぎます。しかも、レンズも揃っていない状況ですからなおさら検討の対象としては考えにくいでしょう」と分析する。

同じくエンドコーナーを使ってアピールするキヤノン「EOS Rシステム」

欠かせない “独自機能” が放つ魅力
フルサイズ・ミラーレスで大きくリードするのがソニー「α」シリーズ。「ニコン、キヤノンの新規参入で影響は見られました。ただし、マイナスではなくプラスの影響です」と好調を持続。発売前には一時、比較してから購入したいとの買い控えも見受けられたが、「登場後、比較して検討されるお客様ではαをお求めになるケースが圧倒的に多いです」とアドバンテージに揺るぎはない。

多くの来店者から関心を集めるソニー「α」シリーズは大きな島展示でコーナー展開する

その理由として、瞳オートフォーカスやAF・AE追従での10コマ/秒の高速連写など、他にはできないソニー独自の機能が大きな魅力となっていると指摘する。「センサーメーカーであることも強みですね。他社のデジタル一眼レフやマイクロフォーサーズ、ASP-Cからの乗り換えが多いのもソニーのフルサイズ・ミラーレスの特徴のひとつ。フルサイズ・ミラーレスが、ソニー1強の状況から、ニコン、キヤノンを加えた3強時代へそう簡単には移行しないでしょう」とニコン、キヤノン両社へ一層の奮起を促す。

ソニー「α」シリーズで高い評価を得る独自機能「瞳オートフォーカス」を大きくアピール

ニコン、キヤノンの次の一手、カスタマーは何を期待しているのか。「マウントアダプターが用意されているとは言え、一眼レフのレンズを使用するのでは、小型軽量というミラーレスのメリットを享受できません。まずは専用レンズのラインナップを早期に充実させること。次に、さきほどソニーでも例に出した独自性です。今回、キヤノンは4種類のマウントアダプターを用意して付加価値を提案しましたが、お客様からは大変評価が高く、特にコントロールリング付きは、手持ちのレンズを新しく進化させたように使用できると好評です。こうした独自性がとても大事になります」。

キヤノンの4種のマウントアダプターの中でも特に人気が高いコントロールリング付き

この点において今回のニコンは「ニコンらしさが少し薄かったようです」と印象を語る。「確かにつくりや操作性は抜群です。しかし、それらは使ってみて初めてわかること。実際にお客様から『独自の機能がないからな…』と購入を躊躇される声も聞かれました。また、ニコンのデジタル一眼レフD850と比較して、『価格が高い』とこぼす人も目につき、価格差に相当する価値が十分に認めてもらえていない面も否定できません。ニコンとソニーとで比較検討しているお客様が、瞳オートフォーカスがないことをニコンの弱点に受け止めることもあります」と “ニコンらしさ” をもっとわかりやすく前面に打ち出すことが次の大きなテーマと言えそうだ。

今、必要なのはワクワクするカメラ
スマホでしか撮影したことのないユーザーの取り込みなど、デジタルカメラ市場が直面する課題に対し、フルサイズ・ミラーレスによる盛り上がりは、その一角に過ぎない。しかし、今回、ニコン、キヤノンの両社からフルサイズ・ミラーレスが登場した意義は見逃せない。

すでに48本のEマウントレンズのラインナップを揃えるソニー。9月に発表された大口径超望遠レンズ「FE400mm F2.8 GM OSS」も大きな話題を提供する

「フルサイズには大きな魅力があります。レンズのマウント径が大きくなれば、画質も良くなり、設計の自由度も高くなる。もっと目に見えるような形でその成果を示すことができれば、マイクロフォーサーズやAPS-Cなど、センサーサイズの大きなものを使うことの魅力や長所を伝えることにもつながっていきます。写真を撮る楽しみがスマホで拡がりましたが、次の一手は、画質に価値を感じていただくこと。そのための売り場づくりにもさらに工夫を凝らしていきます」と新しい時代へ意気込みを示す。

「もっとワクワクするようなカメラが出てこないと市場は盛り上がりません」と訴える穐田氏。最近、もっとも衝撃を受けたこととして、ライカ、パナソニック、シグマ三社による『Lマウントアライアンス』の発表を挙げた。フルサイズ・ミラーレスカメラの発売を明言しており、「独自性のかたまりとも言える三社で、レンズの品揃えも計算上は3倍のスピードで進められます。期待値も大きく、大変楽しみです」と語る。

各ブランドも独自のスタンスをアピール。パナソニックはマイクロフォーサーズと発表されたフルサイズでの展開となる。ライカ、パナソニック、シグマの三社による戦略的協業「Lマウントアライアンス」に穐田氏は「シグマ、ライカのファンがパナソニックのフルサイズに関心を持つ可能性も高い」と期待を募らせる

それに対し、「今回のニコン、キヤノンのフルサイズ・ミラーレスは、期待値がかなり高かったこともありますが、度胆を抜かれるとまでは言い難かった。しかし、まだ第一歩に過ぎませんから」と期待を寄せる。各ブランドも独自の方向性を明確に商品企画にさらに力が入る。ニコン、キヤノンの新たなフルサイズ・ミラーレスの展開にも、真価が問われる次の一手に市場の厳しい目が注がれている。

富士フイルムは小型サイズと画質を両立するAPS-Cと画質最優先の中判の二本柱で展開。「富士フイルムが好きのファンも多く、他メーカーの影響を受けにくい」と穐田氏は語る

「ここのところ少し元気がないのではないかという印象を払拭するためにも、新製品の登場が待たれます」と語られるオリンパス。「安定した強さはありますから」と今後の展開に注目だ

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