「Dolby Atmos for Cars」に4chスピーカーのエントリーモデル登場。7.1.6chモデルと音はどう違う? 記者が体験した
ドルビージャパンは、2025年7月16日 - 18日の期間で愛知県国際展示場にて開催されている、国内外から自動車関連の最新技術や製品が集う日本最大規模の自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展 2025」に出展。立体音響技術のDolby Atmosを体感できる「Dolby Atmos for Cars」を展示している。編集部記者が実際に体験してきた。
Dolby Atmos for Carsは、最新の立体音響技術であるDolby Atmosを車載音響にも導入したもの。Dolby Atmosの特徴でもある、スピーカーの数に依存せず、オブジェクトベースによるイマーシブサウンドを体感することができるのが大きなメリット。現在、世界27か国で導入が進んでおり、今後国内での普及が高まることも期待されている。
Dolby Atmosフォーマットの音源は、メタデータに音の位置情報が含まれているため、再生時のシステムに応じて各スピーカーからどのように音を出すのかを、機器側でリアルタイムにレンダリングして再生するシステムとなっている。また、運転席から助手席、後部座席においても高さ方向を含めた没入感の高いサウンドを体感することできる。
従来までのDolby Atmos for Carsは、7.1.6chなど天井スピーカーが有りのタイプ、5.1chなどの天井スピーカーが無しのタイプで、Dolby Atmosを体感できるとしていた。今回、新たにソフトウェアがバージョンアップしており、フロントとリアにスピーカーを設置した4chシステム(スピーカーが4基/アンプが4基)でもDolby Atmosをカバーできるようになったという。
これにより、フルスペックの7.1.6chシステムのハイエンドクラスから、最小4chシステムのエントリークラスまでDolby Atmosが導入できるようになり、Dolby Atmos for Carsのラインナップ拡充に大きく寄与するとしている。

アルファードが「立体音響空間」に!Dolby Atmos for Carsの没入感に驚いた
ドルビージャパンは「第15回 オートモーティブワールド」に出展し、「Dolby Atmos for Cars」の体験デモブースを展開する。メディア向けの体験会が実施された。
2023/01/18
本イベントブースでは、全6基のスピーカー構成である4chシステムを導入した軽自動車であるスズキ「ハスラー」、全21基のスピーカー構成によるフルスペックの7.1.6chシステムを搭載したLサイズのミニバンであるトヨタ「アルファード」を展示。現在提案するエントリーシステムとハイエンドシステムを聴き比べられるようになっていた。
スズキ ハスラーには、カロッツェリアのスピーカー “Cシリーズ” から、ウーファーとトゥイーターがセパレートになっている2ウェイ・スピーカー「TS-C1740S」が採用されており、フロントのバックヤードなどにトゥイーター、前方・後方ドアの下段部分にウーファーを設置。併せてパイオニア独自の車内チューニング技術も投入されている。
デモンストレーションでは、Apple CarPlayによってDolby Atmos音源を再生。TIËSTO & SEVENN 「BOOM」を試聴したが、フロントLRとサラウンドLRしかスピーカーがない平面的なシステムにも関わらず、車内全体を包み込むような、高さ方向からも音源の空気感が感じられる音場が再生されていた。


量感あるビート音による車内をまるごと揺らすような低域、左から後ろ、後ろから右へと移動していく音の動きもスムーズで、また垂直方向の移動も感じられ、水平・垂直の両方で音像がしっかりと把握できるほど、包囲感に富んだサウンドを体感できたことが印象的だった。またボーカルもファントムセンターによる再生ながらも、フロントの中心に定位していることが鮮明に認識できた。
次にトヨタ アルファードに搭載されたハイエンドシステムによるDolby Atmos再生を試聴。こちらのデモカーはLRのトゥイーターおよびセンターのトゥイーターとウーファーをフロント部に、前方ドアにフロントLRのウーファー、後方ドアにサラウンドのトゥイーターとウーファー、トランク側近辺にサラウンドバックのトゥイーターとウーファーを搭載。
さらに、前方ドアと後方ドア、そしてトランクドアの上方にハイトスピーカーを備え、トランクの下にはサブウーファーが装備されており、全部で21基のスピーカーが導入されている。


楽器が色々な位置から入ってくるミックスがユニークなDonald Byrd「Byrd In Flight」は、エントリーシステムよりも空間の密度感が高いため、音に包まれている感覚もいっそう強まる。序盤のパーカッション位置、左からホーンセクションが入ってくる部分など、音が入ってくる感覚も非常に鮮明である。
音源自体がもともとリアリティが高いため、楽器の質感も生々しいが、そこにユニークにミックスされた音像の定位も合わさると、目の前にステージがあるような実存感が一気に高まるようだ。
次いで、音の移動感が楽しい音源のひとつであるa-ha「Take On Me(2015 Remaster Version)」を聴くと、音が前面に集中しているステレオコンテンツではなかなか味わうことができない、左右への動きや後ろを回り込む動きが、アトラクションで音を“体感”しているような感覚が得られる。
ボーカルやシンセサイザー、弦楽器の音にリバーブの成分があり、空間性のある音の質感になっていることが相まって、Dolby Atmosで再生されるとライブハウスにいるようなライブ感を体感。こういった音源に対して没入感を得られるのもDolby Atmosならではの特徴であると認識できた。


ブース出展にあたりDolby Japan株式会社 代表取締役社長 大沢幸弘氏は、「今回、主催側から『ぜひDolby Atmos for Carsがあったほうがいい』とお声を掛けてもらうことができて大変良かった。どの時間帯においても、試聴の列が絶えず続いており、来場者の方からも良い反応をいただけた。また、本当にサラウンドまでのスピーカーだけで、ここまでの立体的なサウンドを再現できるのかと驚きの声もあり、良いリアクションをいただけた」と出展への反響の大きさを語ってくれた。



