シャープ、家電に生成AIを搭載し、新たな家電の世界観を創出。テレビはトップブランドを堅持
テレビ事業はフルラインナップで国内トップブランドを堅持
シャープは事業説明会を開催し、5月12日に発表した中期経営計画において、中核として位置付けたブランド事業および研究開発の取り組みを紹介した。暮らしの領域を担うスマートライフ事業については、常務執行役員 Co-COO 兼 スマートライフビジネスグループ長 菅原靖文氏が説明を行った。
「あなたの明日を、もっとあなたらしく、ワクワクする日々に」をビジョンに掲げ、「お客様にあっと驚いていただける、また、思わず他人に自慢したくなる、そんな商品やサービスをお届けし、プレゼンスを高めていきたい」と訴える菅原氏。
SHARPブランドをグローバルに拡大していくために、「AIoT事業の拡大」「新たな需要を創造する商品の創出」「ブランディングの強化」の3点を重点取り組みとして挙げ、それぞれ説明した。
「AIoT事業の拡大」では、10年にわたり取り組むAIoT家電がすでに、幅広いジャンルにわたり累計出荷台数で1,000万台を突破していることなどを強みに、家電とAIサービスが暮らしの悩みに寄り添い、“ココロの晴れた暮らし” をいつでもサポートする世界観を創り上げていくとした。
そのために力を入れるのは「生成AI」。「昨年来、生成AIが世の中に出て、この1年間、IoTと呼ばれるものが本当に市民権を得た。これを家電機器に搭載することに邁進し、新たな家電の世界観を創り上げていきたい」と力を込めた。
KPIとして、独自の顧客データを活用したAIサービス利用者数400万人以上(うち有償プラン利用率5%以上)、COCORO MEMBERS会員数1,300万人以上、AIoT家電累計出荷台数1,450万台以上とし、商品とサービスの両面からAIoT事業を拡大する。

今後、サービスを拡充していくことによる実現例として、「生成AIを活用した流暢な会話を通じた暮らしの悩みの把握の強化」「災害時は家電が防災情報を発話し、迅速な避難・救出を支援」「会話内容・家電使用履歴を買い替え後の機器にも引き継げる」などを紹介。スマートライフAIサービスを2026年度までに導入し、2027年度までにAIサービス事業の本格展開を目指す。

また「エアコン、洗濯機、調理家電など、家電のIoT接続率は年々上昇している。そのなかで我々が着目し、家電のIoT化を加速していくのが生成AI。そうした世界観がますます広がると考えており、IoT家電の普及を加速化していきたい」と語る菅原氏。

さらにその変化を、「家電そのものが変わるチャンスと捉え、“次もシャープ、次こそシャープ” と、シャープを1度使うと離れられない、そうした理想を現実にしていきたい。その足がかりの3年間となる」と気を引き締めた。
「新たな需要を創造する商品の創出」では、「シャープというのは、世の中にないものを生み出す、先取りして作り出す。ここにシャープという会社が存在する社会的な価値があった。これをしっかりもう1度受け継ぎ、世に送り出していくことにトライしていきたい」と語る。
その具体的な製品の例として、従来比3分の1の調理時間を実現した高速オーブン、過冷却技術で猛暑対策にも貢献するアイススラリー冷蔵庫、90%の節水を目標として掲げている水循環型洗濯システムなどを紹介した。
3つめの「ブランディングの強化」では、独自性と技術力を兼ね備えた “あなたらしい暮らし” を実現するブランドとして、日本/ASEAN/米州それぞれの特性に応じたプロモーションで、シャープの製品・サービスに対する認知を高めていく。
「プライベートブランド含め競争が激化していることは間違いない事実。しかし、それで市場が活性化していることも事実。そこにシャープが存在する価値、提供する価値をしっかりとお客様に伝えていくことが重要」とブランド価値の啓発の力を入れていく。
シャープではすでに1,000万台以上のIoT機器が普及しており、「ベースとして培っている膨大なデータを活用し、お客様により寄り添った商品の提案、活用の提案ができる。これがシャープの強み。それをお客様にアピールし、お客様により近いところで提案することが、われわれの勝ち筋」と訴えた。
個別の事業戦略として、テレビシステム事業についても説明した。菅原氏は「シャープには画像技術、ソフト技術、省エネ技術にまだまだ一日の長がある」と、自社開発/生産ではフラグシップモデルを強化。エントリーモデルではODM/OEMなどを活用したフルラインナップ戦略で、国内トップブランドの座を堅持する。

なお、エントリーモデルは現在、単独で採算がとれているが、それができなくなったときには、「集中と選択で判断が必要とされれば、市場撤退をするという判断もある。事業として見極めて戦っていく」との考えを示した。
「テレビの在り方が今、問われている」と市場の変化に着目する。スマホの台頭でテレビの存在感が若者を中心に希薄になったと言われるなか、「テレビをディスプレイと捉えると、YouTubeを大画面で見て楽しむなど需要は全然落ちていない。番組を視聴するというだけではなく、それ以外のニーズをしっかりと捉えていくことが重要」と指摘した。
業績目標として数字を示し、2024年度実績の売上高6,440億円、営業利益率3.4%に対し、2025年度は同6,500億円、5.4%、2027年度は同7,020億円、6.0%(挑戦目標7.0%以上)を掲げ、事業の高付加価値化、グローバル拡大を推進し、売上/利益のさらなる成長を目指す。



