HOME > ニュース > Sマーク認知度は31%と前年比3ポイント上昇も、ネット販売拡大など電気製品の安全性確保へ啓発活動はますます重要に

電気製品認証協議会が「2022年度記者懇談会」を開催

Sマーク認知度は31%と前年比3ポイント上昇も、ネット販売拡大など電気製品の安全性確保へ啓発活動はますます重要に

公開日 2023/04/13 11:04 PHILE WEB ビジネス編集部・竹内純
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

■Sマーク認証製品の市場での買い上げ調査を毎年実施



電気製品認証協議会(SCEA)は「2022年度記者懇談会」を開催し、広報活動を中心にした1年間の活動を報告した。

電気製品認証協議会 会長 横山明彦氏

冒頭にあいさつに立ったSCEA会長・横山明彦氏(東京大学名誉教授)に続き、基本問題専門部会の活動について、幹事長・基本問題専門部会長の小野亮氏(東京大学教授)が報告を行った。Sマーク認証の試験基準は、電気用品安全法(電安法)の対象製品については同法の技術基準を適用しているが、「市場の事故情報に基づく安全性確保の観点から、独自の追加基準を6つ、運用基準を4つ追加して柔軟な運用を行っている」と説明した。

Sマーク認証の信頼性向上を目的に、Sマーク認証製品の市場での買い上げ調査を実施しており、「認証した当時と市場品が同等であるか、SCEAのサーベイランス(監視)の一環として行っている。過去5年間はすべて同等性を確認しており、いい結果が得られている」と2022年度も買い上げた12製品すべてに認証時との同等性が確認されたという。

電気製品認証協議会 幹事長・基本問題専門部会長 小野亮氏

2022年度は第3四半期(4月〜12月)まで、Sマーク認証製品での製品事故、Sマークの不正使用の発生は認められず、リコールは2件あったが、いずれも使用されている部品に不備があり、すでに当該メーカーによる改善が確認された。

小野氏は「Sマーク認証製品での事故やリコールが発生した場合には、認証機関による事実関係調査を実施し、原因の究明や再発防止を促す。また、Sマークの不正使用や初回ロット検査等で問題が発生した場合には、認証機関による事実関係調査を踏まえ、認証取り消し処分等の厳しい対処を行う」と厳しい口調で訴えた。

現在、Sマーク認証機関は、電気安全環境研究所(JET)、日本品質保証機構(JQA)、UL Japan、テュフ・ラインランド・ジャパンの4機関があり、Sマークの認証レベル統一をはかるため、月1度の認証機関連絡会を開催している。

■Sマークの市場認知度が年々上昇。2022年度は31%に



続いてSマークの広報および普及促進活動について、幹事長代理・広報専門部会長・三浦佳子氏(消費生活コンサルタント)が説明した。

コロナ禍で店頭での広報イベントや認知度調査など「オープンでいろいろなことができなくなり3年が経った」というなか、サンケイリビング新聞社の協力を得てWEBアンケート形式による「Sマーク市場認知度調査」を新たに開始した。

Sマーク

Sマークの市場での認知度は、2020年度は25.3%、2021年度は28.0%、2022年度は31.0%と、アンケート対象が異なるため単純比較はできないものの、Sマークの認知度が少しずつ上昇している。三浦氏は「なぜ伸びているのか。地道な広報活動がボディーブローのように効いてきたと自信を持ってお応えしたいところだが、はっきりとはわからない。しかし、NITE(製品評価技術基盤機構)さんで事故の情報を報告されるなど、皆さんが身の回りのことに興味を持ち、大きな変化が起きているのかもしれない」と分析した。

電気製品認証協議会 幹事長代理・広報専門部会長 三浦佳子氏

ただし、性別や年代間でバラツキが認められ、「安かろう悪かろうとは意識せずに買い物をされる傾向も見受けられる若年層に向けた広報活動が今後重要になってくる」と指摘。「学校で製品安全の授業はないので、いかに安全な製品を選ぶことが日常の生活に大切なことかを地道に広報していくことが大切。Sマークが付いていないものがダメということではなく、付いているものの優位性を伝えていきたい」と訴えた。

日本百貨店協会、日本チェーンストア協会、家電量販店、日本DIY協会、日本通信販売協会、全国電気商業組合連合会、神奈川県電機商業組合の7団体の協力のもとに毎年実施しているSマーク付き電気製品の店頭普及率実態調査においても、昨年度の66.2%から72.2%へ普及率にも上昇が認められた。価格.comでも同67.5%から70.6%に、ネット販売大手3社(アマゾン、ヤフー、楽天)の平均でも同55.8%から61.1%へ上昇した。

カテゴリー別では、これまで普及率が低かったフードプロセッサー、電気掃除機、電気ポットなどに改善が見られ、「いままでSマークを取得していなかったメーカーが取るようになり改善された」と説明した。「Sマークの取得にはお金もかかり、メーカーそれぞれに考え方があるが、Sマークが付いていることに対し、消費者のニーズも高く、販売にもつながるという機運を盛り上げていかなければならない」と力を込めた。

■ネット販売の製品安全性には事業者の一層の認識向上も不可欠



コロナ禍で加速したネット販売に対しては、2020年にネット販売事業者により結成されたオンラインマーケットプレイス協議会(JOMC)と「製品安全」をテーマにした意見交換会を開催している。電気製品の事故など様々なトラブルが発生しており、ネット事業者からは対策の説明、SCEAからは改善点を直接要望するなど貴重な場になっている。

「売るための場を提供しているだけという認識のところもまだまだある。場を提供する=安全な商品を提供しなければならないという認識をいかに持っていただけるか。安全性の高いものしか流していませんと言ってくれるような事業者が増えてくれることを心底願っているが、道のりはまだまだ遠い」と強い覚悟で臨む。

電気製品の安全性を確保する方策の一環として開催している製品安全セミナーでは、中国のエンジニアに対してなかなか正しく伝えられない「製品安全:PSEとSマーク」をテーマに、日本語に加えて初の中国語によるオンラインセミナーを開催した。4つの認証機関・各工業界やJOMCから中国のメーカーや工場へ案内したことで、セミナー動画への視聴アクセス数は2,416件を記録。中国からの輸入製品において、Sマークのさらなる普及へ期待が高まった。

Sマークの広報活動ではTwitterをはじめとするSNSやモーションまんが「Sマークってなあに?」を積極的に活用するなど、さらにターゲットの幅を広げた取り組みに力を入れている。

2022年12月31日現在のSマーク認証状況は、新規認証状況は認証件数が1,104件、認証モデル数が2,842モデル。認証取得者数は681事業者。登録工場は1,073件(国内330件、海外743件)となる。昨年度と比較すると新規認証所得者数はほぼ横ばい傾向だったが、コロナによる国内外の移動制限がなくなるなか、中国との回復状況が注視される。

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE