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アルバム制作の裏話なども披露

YMO40周年記念!松武秀樹氏とハイレゾアルバムを楽しむ「ハイレゾリスニングイベント」レポート

2019/04/29 編集部:成藤 正宣
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3月28日、東京都内の会場にて、YELLOW MAGIC ORCHESTRA(以下、YMO)の結成40周年とハイレゾ・リマスタリングアルバム第2弾の配信開始を記念した特別イベント「松武秀樹氏×『YELLOW MAGIC ORCHESTRA』ハイレゾリスニングイベント」が、e-onkyo music主催のもと開催された。

本イベントは、YMO楽曲制作やライブに深く関わり “YMO 4人目のメンバー” として著名なシンセサイザープログラマー・松武秀樹氏と共に、YMO活動当時の思い出や楽曲制作の裏話など貴重なエピソードを交えつつ、リマスタリングが施されたYMOのハイレゾ音源を楽しもうという催し。

“4人目のYMO” 松武秀樹氏がゲスト

参加者には、2月27日から配信中のYMOハイレゾ・リマスタリングアルバム第2弾『パブリック・プレッシャー(2019 Bob Ludwig Remastering)』『増殖(2019 Bob Ludwig Remastering)』購入者の中から抽選で選ばれた十数名のファンが招かれた。

抽選で選ばれたYMOファンが、松武氏とともにハイレゾ音源とトークを楽しんだ

今回ハイレゾ・リマスタリングされたYMO楽曲をはじめ「プロがスタジオで聴いているのと同じ音を、一般のリスナーも共有できるようになったことの意義は大きい」と語る松武氏は、リスニングイベントの第1曲目として1stアルバム『イエロー・マジック・オーケストラ(2019 Bob Ludwig Remastering)』より「シムーン」をチョイス。

1曲めは1stアルバム『イエロー・マジック・オーケストラ』からチョイス

松武氏はこの楽曲を選んだ理由について「YMO独特の“ゆらぎ”のグルーヴが使われた代表曲だから」と語る。入力したパラメータに従って機械的に演奏されるシンセサイザーの音だが、本楽曲をはじめとするYMO楽曲では、パラメータを工夫しリズムのゆらぎを作ることで“人間臭く” 感じられるよう試みたのだという。


続いて選曲されたのは、なんと『増殖(2019 Bob Ludwig Remastering)』3トラック目に収録されたショートコント「Snakeman Show」。当時の総理大臣や社会問題のパロディーで、音楽の一切入っていない純粋な肉声のみが収録されたトラック。ハイレゾアルバムを購入するほどのファンが相手だからこそのトリッキーな選曲と言える。

2曲めはなんと楽曲ではなく、『増殖』収録のショートコント

肉声だけのトラックでありながら、松武氏は「声がとてもリアルで、つばの散る音まで生々しく聞こえる」とその音質に感心していた。それもそのはずで、会場に用意された機材はスピーカーがONKYOのブックシェルフ型2ウェイスピーカー「Scepter SC-3」、同プリアンプ「P-3000R」、同パワーアンプ「M-5000R」、PIONEERのネットワークプレーヤー「N-70AE」と選りすぐりで、ハイレゾ・リマスタリングされた楽曲のクオリティを十二分に引き出していた。

スピーカーにONKYO「Scepter SC-3」、プリアンプにONKYO「P-3000R」、パワーアンプ「M-5000R」、ネットワークオーディオプレーヤーとしてPioneer 「N-70AE」が用意された

3曲目は2ndアルバム『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー(2019 Bob Ludwig Remastering)』収録の「ABSOLUTE EGO DANCE」。本楽曲制作時の思い出について松武氏は、「(作曲を担当した)細野さんは、いつも他のメンバーが作曲を終えた後にすこし毛色の違う曲を作るんです。この曲も、いま聴いても格好いい」とコメント。

3曲目は『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』より「ABSOLUTE EGO DANCE」

また、本楽曲で特徴的な沖縄音楽を思わせる指笛のような音色はEMSというシンセサイザーで手ずから打ち込んだことや、当時非常に高価な機材だったハーモナイザーを導入し、手探りで使い方を学びながらスネアドラムの音作りに利用したことなど、手間を惜しまない制作背景も語った。

松武氏が制作にまつわるエピソードを次々と披露する

4曲目に再生されたのは「ファイアークラッカー」。再び1stアルバム収録の楽曲だが、今回は松武氏いわく「日本版よりディスコティック、ダンサブル」にミキシングされた、低音豊かなUS版からの選曲。松武氏は音作りの逸話として、スネアには3つの音を重ねることで迫力を出したこと、ベースの音は決定に至るまで10回以上試行錯誤を重ねたことなどを紹介した。

アメリカの音楽シーン向けにミキシングされた『イエロー・マジック・オーケストラ』US版

「ファイアークラッカー」再生後には、事前に集められた参加者からの質問がいくつかピックアップされた。アナログ・シンセサイザーのオーソリティーとして知られる松武氏だが、「現代のシンセサイザーの中で1つだけ過去に持っていけるとしたら?」という質問には「iPhone」と回答。録音に1日かかることも珍しくなく、ポータブルカセットレコーダーもまだ普及していなかったような時代では、録音が簡単にできるiPhoneはサンプラーとして大変有用だからとの理由だそうだ。

アナログ・シンセサイザーをソフトウェアで再現するバーチャル・シンセサイザーについてどう思うかという質問には、「YMOで使っていた巨大なシンセサイザーが、タブレットのような小さなサイズで再現できるのは良いことだと思う」と肯定的な一方、「音を聴き比べてどうか、というのは別にしても、音作りに対してやる気と追求心が必要なのは同じ」と、ツールが変わっても制作のロジックは共通していると主張。

参加者からの質問では、氏が造詣の深いアナログ・シンセサイザーに関わる事が多く聞かれた

その逆に、アナログ・シンセサイザーを扱う上で大事なポイントについて聞かれると、「日頃のメンテナンスが大事。特に多い接触部のトラブルに出会うことが多く、はんだ付けの技術は身につけておいたほうが良い」とアドバイスしていた。

イベントのラストを飾ったのは、YMOを語る上では外せない1曲「TECHNOPOLIS」。前方に座る松武氏はもちろん、参加者のだれもが曲に合わせてリズムを取り、会場全体が心地よい一体感で包まれていた。

現在、松武氏はe-onkyo musicとの共同企画として、アナログ・シンセサイザーによるインプロビゼーションを収録したハイレゾアルバム『Hideki Matsutake Raw Sound Series』をe-onkyo musicにて独占配信中。第1弾は“タンス”の愛称を持つ大型モジュラー・シンセサイザー「Moog IIIC」をフィーチャーし、アナログ・シンセサイザー特有の音質やノイズにいたるまで“生” の音にこだわって収録しているという。

松武氏のアナログ・シンセサイザーをフィーチャーした企画盤『Hideki Matsutake Raw Sound Series』はe-onkyo musicにて配信中

また、e-onkyo musicでは、今回のようなプレミアムなハイレゾリスニングイベントを今後も企画/開催していきたいとのこと。魅力的なアーティストとハイレゾ音源と共に上質なひとときが過ごせる企画を、今後も期待したい。

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