搭載製品は来年初頭に登場予定

クアルコム新DDFAチップ「CSRA6640」詳報、100ドル以下のスマートスピーカーを高音質に

山本 敦
2019年03月20日
米クアルコムは、カリフォルニア州サンディエゴの本社で現地時間3月19日にプレス発表会を開催。独自のクラスDデジタルアンプ用ICチップ「Qualcomm DDFA」に20Wクラスのパワーステージを統合した最新ICチップ「CSRA6640」を発表した。

パワーステージを一体化したDDFAのアンプIC「DDFA6640」(写真中央の黒い正方形の板)を乗せた評価ボード

DDFAとは “Direct Digital Feedback Amplifier” の略。デジタル方式の高速・高精度なフィードバック機能を搭載したことにより、アナログアンプに匹敵する低歪みと高S/Nを合わせて実現できる。また、デジタルアンプならではの小型化・低消費電力化のメリットも引き出せることから、オーディオアンプやサウンドバーなど幅広いカテゴリーのコンポーネントを手がけるパートナーに広がりつつある。

DDFAのメリットは、デジタルアンプICとしてはこれまでにない高音質再生を実現できるところにあると説明

今回発表されたCSRA6640は、従来はパワーマネージメント/PWMモジュレーター/パワーステージ/フィードバックプロセッサの4つのモジュールで構成されていたICを一つに統合したことが大きな特徴だ。デノンのプリメインアンプ「PMA-60」、ヘッドホンアンプ「DA-310USB」などの製品に採用されている現行モデル「CSRA6620」は、その前世代のチップであるデジタル信号処理を担う「CSRA6600」とフィードバックプロセッサ「CSRA6601」の2チップ構成をひとまとめにした点で画期的だったが、今度はついにパワーステージも一体化を果たした。

これまでデノンやヤマハなどのメーカーが、コンシューマ向けオーディオ製品にDDFAを採用してきた

パワーステージをシングルチップに取り込むとなれば、当然発熱処理とのトレードオフも生じる。CSRA6640は全体のバランスを最適化したことで、最大20Wまでのステレオ出力(モノラルでは最大40W)という仕様にまとめている。一方で現行モデルのCSRA6620も外付けパワーステージとの組み合わせに自由度が高く、100Wクラスのハイパワー出力のコンポーネント設計にも適しており、CSRA6640と並行して展開される。

CSRA6640はエントリークラスのスマートオーディオ製品もターゲットに見据えている

クアルコムではDDFAの最新アンプICであるCSRA6640が、よりコンパクトなローエンドクラスのオーディオコンポーネントの開発に活路を開くものであるとしている。特に100ドルを下回るスマートスピーカーにおいて「省電力と高音質の魅力を合わせて打ち出すために欠かせないICだ」と語るのは、Qualcomm Technologies Internationalのプロダクトマーケティング部門シニアマネージャーであるAndrea Cantone氏だ。同氏はさらに、オーディオメーカーにとってDDFAが製品開発のコストダウンにも貢献できるアンプICであると提言している。

Qualcomm Technologies InternationalのAndrea Cantone氏

オーディオ用アプリケーションプロセッサー「QCS40x」シリーズとCSRA6640を組み合わせたスマートスピーカーのリファレンスモデルを展示

CSRA6640の開発者向けサンプル出荷は、既にCSRA6620を採用する製品を商品化したティアワンメーカーから優先的にスタートしている。最新チップを搭載したコンシューマ向けオーディオコンポーネントが商品化を迎える時期について、Cantone氏は「早ければ来年の初め頃になるのでは」と見通しを語っていた。

CSRA6640のICチップの実装面積については、パワーステージを取り込みながらCSRA6620とほぼ変わらないサイズに納めている。リニアPCMは384kHz/32bit対応、DSD128/64のネイティブ再生に対応するオーディオスペックは従来のCSRA6620と同じになる。

オーディオコンポーネントのメーカーに提供を開始したCSRA6640の評価キット

なお1つのCSRA6640のチップがサポートできるのは最大20Wのステレオ再生、最大40Wのモノラル再生まで。同日発表されたクアルコムの新しいオーディオ用アプリケーションプロセッサー「QCS40x」シリーズに接続すれば、最大32chまでのマルチサラウンド再生環境のアンプICにも応用できる。

こちらはQCS40xシリーズとCSRA6640によるマルチチャンネル対応のサウンドバーのリファレンスデザイン。モジュラー構造のアーキテクチャを採用することにより、複数個のICを組み合わせて最大12chまでのオーディオコンポーネントを想定した開発環境が組めるという

クアルコムでは開発者向けにCSRA6640のハードウェアとソフトウェア、開発ツールを一式にしたキットの提供も行う。ティアワンメーカーから優先的に出荷を開始しているが、数ヶ月以内には一般個人からの申し込みを受け付けるシステムも整えたいとCantone氏が語っていた。

5.1.2chの再生環境でドルビーアトモス、DTS:Xの再生デモを行った

最新世代のDDFAが、サイズと省電力性能に加えて、音質にもこだわったスタンダードクラスのオーディオコンポーネントの拡大に弾みを付けるのだろうか。今後の動向にも様々な角度から注目したい。

関連リンク

関連記事