秋に日本発売予定の新製品を速攻レポート

BOSE、“睡眠専用”完全ワイヤレスイヤホン「Bose noise-masking sleepbuds」海外発表

山本 敦
2018年06月21日
米BOSEは、同社初の入眠サポートに特化した完全ワイヤレスイヤホン「Bose noise-masking sleepbuds」を、6月21日から北米で販売開始した。発売に合わせてグローバルプレスイベントをニューヨークで開催し、世界各地から集まったジャーナリストに向け、新製品の特徴を説明する場を設けた。現地から製品の詳細をレポートしたい。

ニューヨークのマンハッタンにあるホテル「The Quin」に世界各国のプレス関係者を集めて「Bose noise-masking sleepbuds」のグローバルローンチイベントが開催された

ボーズは昨年秋に、アメリカを拠点とするクラウドファンディング・プラットフォーム「Indiegogo」をベースに、Bose noise-masking sleepbudsの試験導入を行った。プロジェクトの成功、支援者からの好評価を受けて、今回一般向け商品として発売される。まずは北米/カナダからの先行導入となるが、日本や中国などアジアの各地域では今秋に発売が予定されている。北米での販売価格は249.95ドル(約27,500円)。

ボーズ初の“入眠サポート用”完全ワイヤレスイヤホン「Bose noise-masking sleepbuds」

今回のグローバルプレスイベントは、ニューヨーク・マンハッタンのラグジュアリーホテル「The Quin」を会場に、現地時間6月20日に開催された。

新製品のプレゼンテーションは米Boseのチーフ・ブランド・オフィサー、Ken Jacob氏が担当した

Bose noise-masking sleepbudsは一見すると完全ワイヤレスイヤホンのようなデザインだが、その用途は音楽を聴くためではなく、入眠サポートを主眼に置いているところが他にはない特徴だ。

アルミニウム製の専用充電ケースを用意する

本機のパッケージ。3サイズのイヤーチップやUSBケーブル、トラベルポーチが付属する

本体の設定や操作を行うため、iOS/Androidのスマホとペアリングして専用アプリ「Bose Sleep App」につなぐ必要はあるものの、スマホからの音楽ストリーミング再生や音楽ファイルの転送・保存には対応していない。“スタンドアローンで機能するイヤホンを眠りながら使う”というユニークなスタイルに注目してほしい。

耳に装着した状態を見ていただければ本機の小ささが一段とよくわかるだろうか

ボーズのイヤホンとしては最もコンパクトサイズ。本機専用の「StayHear+ Sleep tips」を装着して使う

イヤホンに内蔵するメモリーには、発売時から入眠に適した10種類の音源がプリセットされている。10種類の音源から環境に最適な1つを選び、眠りに就く前に再生をスタートすると、睡眠中はループ再生される仕組み。なお音源には「Rustle:風が木の葉を揺らす音」「Cascade:小さな滝のせせらぎ」など自然系の音から、「Circulate:サーキュレーター」「Altitude:飛行機内のアンビエントノイズ」といった機械音、さらに集中力を高めるための「ブラウンノイズ」などが揃う。製品の発売後もファームウェア更新による音源追加を予定している。

ケースのフタは親指でスライドさせると簡単に開く(写真左)。イヤホンをケースのコネクタに接触させると充電開始。約8時間の充電で約16時間連続使用できる。駆動効率と安全性の高い充電式の酸化銀電池により、内蔵バッテリーは1度のフル充電から長く使えるが、チャージもスロースピードでじっくりと蓄電される

任意の音楽を再生する機能をあえて削ったことで、イヤホン本体が驚くほどに小さく、軽くできたことが本機の特徴だ。ボーズの既存ラインナップの中でもとりわけコンパクトな「Bose SoundTrue Ultra in-ear headphones」と比べても半分近いサイズ感だ。

片方のイヤホンは、専用のイヤーチップを外した状態で重さが約1.4g、サイズは約1cm四方。耳に装着し、枕に耳を当てながらベッドに横になっても違和感を感じさせない。さらに安定したフィット感が得られるよう、イヤーチップにはスタビライザーを一体化した本機専用の「StayHear+ Sleep tips」が同梱される。サイズはS/M/Lの3種類、素材は柔らかいシリコン製。ハウジングは密閉型なので、イヤーチップを付けて耳に装着するだけで相当な遮音性が得られる。寝汗をかいても機器が故障しないようイヤホンは防滴加工とした。

右側がイヤーチップを外した本体

ノズルのポートは楕円形

イヤホンの内蔵バッテリーには、いわゆるボタン電池に多く使われている、安定した給電能力と長寿命を特長とする酸化銀電池を採用した。イヤホンは専用ケースに入れてから1回の充電に約8時間かかるものの、フル充電からは約16時間の連続駆動が可能だ。ケースの満充電までには約3時間が必要。パッケージにはUSBケーブルやトラベルポーチが付属する。

ケースの充電はmicroUSB端子

ノイズをマスキングする機能については、同社が発売する「QuietControl 30」や「QuietComfort 35 II」に搭載されている、内蔵マイクで外の環境音を集めて、騒音だけを解析・抽出して逆位相の音をぶつけて打ち消す、いわゆる「アクティブノイズキャンセリング・テクノロジー」とは仕組みが異なっている。

内部構造の展開図。Bluetooth通信用のアンテナはレーザーエッチングによりハウジングの内側に成形されている

Bose noise-masking sleepbudsは、主に睡眠時の妨げになりがちな“いびき”や“ねごと”など、「人の声」を聞こえにくくして、入眠を支援するためのイヤホンだ。従来のアクティブノイズキャンセリング機能は、エンジン音や車の走行音など持続的に鳴り続ける「低音」をカットする目的には適しているものの、一方で人の声をノイズと位置付け、消音する用途には不向きであったことから、本機は中低域を核として効果的に消すことに注力した。

実物によるパーツ構成のほかに、モックアップによる各パーツの詳細が解説された

本体にマイクは搭載していないので、外音に対してリアルタイムでマスキングを施す処理なども行わない。シチュエーションに最適な音源を選んで音量を調整するだけ。使い方はとてもシンプルだ。

ボーズのイヤホンとして初めてコンパクトながら出力効率の高いBA型ドライバーを採用。担当者は「これまでBA型ドライバーはボーズが理想とするサウンドが得られなかったのでオーディオ用には搭載してこなかったが、ノイズマスキング用途のデバイスにはこれが相応しかった」ため、ブランドとして新たな選択に踏み出したのだと説明している。基板にはBluetoothの通信モジュールやフラッシュメモリ等を搭載する


サイズはアメリカで流通する貨幣の中で最も小さな1ペニー硬貨よりもコンパクト
イベント会場に展示された実機で効果を試す機会も得た。小さい円筒形の充電ケースのフタを開け、マグネットで吸着されたイヤホンをそれぞれ取りだして耳に挿入する。イヤホンを着けていることを思わず忘れてしまうほどフィット感は良好だ。これならパートナーのいびきよりも先に、耳に着けているイヤホンが不快で目覚めてしまう、といったこともなさそうだ。

ホテルの一室に設けられたデモルームで「Bose noise-masking sleepbuds」を体験。パネルに埋め込まれたスピーカーで、いびきやざわめく人の声を再生しながらノイズマスキング効果を確認できた

ケースからイヤホンを取り出すと電源が自動的にオンになる。選曲やボリュームは、Bose Sleepアプリを入れたスマホから設定する。音楽の再生音量を下げてもマスキング効果が得られるようにバランスが最適化されている印象だ。

ボーズは本機の使用時に、入眠中に火災探知機の警報や赤ちゃんの鳴き声などが聞こえなくなってしまう心配は少ないとしている。実際にデモルームで試してみた限りでは、スピーカーから鳴っているダミーの“いびき”の音がきれいにマスクされても、ボーズのスタッフがすぐ隣りで説明している声は聞こえていた。使い方としては「深く寝入ってしまった時と一緒で、聞こえづらくなることが心配なら、最終的には添い寝してくれるパートナーを頼りにするなど、自身で対策を立ててほしい」と呼びかけている。あるいは片側だけを身に着けて使っても、マスキング効果は得られるように設計されている。

Bose Sleepアプリのメイン画面(左)と専用音源の選択画面(右)。アプリからは再生・停止、音量のコントロールのみを行う。音源は左右のイヤホンそれぞれに内蔵したフラッシュメモリに保存されている。コントロール信号を同期させて、左右の音源を“せーの”で再生するイメージ。左右のイヤホン間ではオーディオ信号、および同期信号の伝達等は行わない

イヤホンには音楽再生だけでなく、目覚ましアラーム機能も搭載されている。また、入眠後もずっと音が鳴り続けていることの方が気になるというユーザーのために、一定時間のタイマーをセットして自動的に音楽再生をフェードアウトする機能も付いている。

スリープタイマー機能をセットしておけば、任意の再生時間が終わるとループ再生していた曲がフェードアウトする。イヤホンの電源がシャットダウンされるわけではないので、目覚ましアラーム機能は有効だし、他の曲に切り替えるとすぐに再生が始まる

イヤホンとスマホの間はBluetooth「クラス3」の微弱な電波で通信を行うため、一晩中身に着けて寝たとしても健康に対する影響はないとボーズでは補足する。また電源に酸化銀電池を採用したもう一つの理由は、一晩中身に着けていても本体がオーバーヒートしないように配慮したためとしている。

ベッドサイドに「Bose noise-masking sleepbuds」を置いたイメージ

Bose noise-masking sleepbudsは、日本では昨年秋に発売されたボーズ初の音楽向け完全ワイヤレスイヤホン「SoundSport Free wireless headphones」とはまた切り口の異なった、イノベーティブな製品だ。日本市場でも受け入れられるのか、秋の発売が楽しみである。

ボーズは今年の春、“音声の拡張現実”をコンセプトとしたスマートグラス「Bose AR」(関連ニュース)のコンセプトを発表している。また日本でも発売されている「SoundWear Companion spkeaker」は、まだ数少ない話題の“肩のせスピーカー”だ。さらに今回レポートした“入眠用イヤホン”もラインナップに加わり、これまではどちらかと言えばコンサバティブだったボーズのイメージが大きく変わっていくのかもしれない。ブランドの今後にもさらに注目したい。

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