HOME > ニュース > ドルビービジョン/アトモスは『BLAME!』をどう彩った? 吉平副監督が明かす3DCGアニメのこだわり

Netflixでのドルビービジョン/アトモス配信が開始

ドルビービジョン/アトモスは『BLAME!』をどう彩った? 吉平副監督が明かす3DCGアニメのこだわり

2017/08/04 編集部:小野佳希
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

なおBLAME!はモーションキャプチャーでCGを動かすのではなくキーフレームアニメーションを採用。カットごとにフレームレートを変えることで「ジャパニメーションの独特な部分も表現できるようにした」という。

また、主人公の霧亥が駆除系セーフガードをナイフで刺すシーンでは、駆除系の首筋のあたりに刺さったナイフを抜く際に筋肉や骨のひっかかりで頭部が少し持ち上がってからナイフが抜けるなどといったように、リアルな描写になるよう配慮。そのほかにも「目のハイライトの動き方など、細かな動きにもこだわった。より実写の演技に近い表現を採り入れている」とのことだった。

ヘルメットを脱ぐシーンも頬や髪へわずかにひっかかる様子も細かく描写するなどでリアルな演出を行っている

そのほかでは、髪の毛の描写にもCGアニメならではの難しさがあるという。「手描きのセルアニメでは、(元々のデザインと動きの整合性をとるため)カットによって毛束が倍の量になっていたり、風でなびくと中から新しい髪の毛が増えていたりすることがあるが、CGではそれが難しい。そのため、ふだんは見えない位置にも髪の毛を隠したりウィッグをつけたりして複雑な表現をしている」という。

■3DCG制作のメリットとは?

1日の作業で進むのは「3秒くらいのアニメーションをつけられる」程度とのこと。「我々は非常に生産性が高く、ハリウッドのアニメのフルCGアニメの1/3〜1/5分くらいのスケジュールでやっている」(吉平氏)という。

そして吉平氏は「新しいユーザーを獲得するために、様々な観客に対する新しい提案をしていきたい」と、セルルック3DCGアニメを採用している背景を説明。「日本のアニメの世界において、セルルックCGはまだマイノリティの域を出ない。手描きはそれ自身に魅力があり、コンピューターが描いたものがそれだけで手描きアニメを追い越すことはないと思っている。いろんな表現や技術を採り入れて補うことで自分たちの競争力にしていきたいと思っている」と語った。

なお、前述のようにモデリングやリギングなどが必要なため「初期段階では手描きよりもコストがかかる」(吉平氏)セルルック3DCGだが、そうした前工程が完了したデータを様々に応用できる点がメリットだ。

「安定して高いクオリティで制作を進められるし、例えば家具などの小道具を他の作品に流用するなどといったこともできる」と、最終的なコストは手描きセルアニメと変わらないレベルに落ち着くと吉平氏は説明。「長く制作を続けるほどコストは低くなっていくため、手描きアニメより少しクオリティの高いものをつくって初期シーズンを終え、次のシーズンでコストを抑えてそれを回収していくという戦いをすることもある」という。

■Netflixで全世界配信。海外配信に向けた配慮とは?

Netflixでは、日本だけでなく海外に向けても『BLAME!』が配信される。そのため、日本のマンガ/アニメ独特の表現はなるべく入れないよう気をつけたと説明。

次ページドルビーアトモスで「仮想世界が目の前に広がっているかのような臨場感」

前へ 1 2 3 4 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE