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これまでの技術の集大成

アイキューブド研究所、“光景を全て作り変える” 新映像処理技術「I3C」を発表

公開日 2017/03/29 17:50 編集部:押野 由宇
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I³研究所(アイキューブド研究所)は、同社が培ってきた映像技術の集大成として、光クリエーション技術の全てのコンセプトを包含する新映像信号処理クリエーション技術「I³C(Integrated Intelligent Interaction Creation、アイキューブドシー)」を開発。そのメディア向け発表会を本日実施した。

アイキューブド研究所ではこれまで、2011年5月12日に「ICC(Integrated Cognitive Creation)」技術を発表。2013年2月25日に、プロジェクター向けに新しい映像空間の価値を提供する大映像空間クリエーション技術である「ISVC(Intelligent Spectacle Vision Creation)」技術を開発(関連ニュース)。加えて2015年3月には、大映像空間における新たな映像の楽しみ方を提案する「ICSC (Interactive-Cast Symbiosis Creation)」技術を開発していた。

これらの技術は「映像に映し出されている場に実際にいるかのような光刺激をディスプレイ上に再現し、人間の脳の負荷を低減させ、その余力を“脳が感動する”」ことへ導くという、光クリエーション技術を根幹にしている。

発表会にて登壇したアイキューブド研究所代表の近藤哲二郎氏は、今回開発されたアイキューブドシー技術は、「忠実光景を創造するICC技術、体験光景を創造するISVC技術、相対光景を創造するICSC技術の3つを兼ね備え、そして超えるような、まったく新しい技術」と紹介した。

アイキューブド研究所代表 近藤哲二郎氏

アイキューブドシー技術はこれまでの同社技術の集大成として開発

この新技術を説明する前に、まず近藤氏はこれまでの技術を振り返った。同社では“三種の景色”として風景、光景、情景を定義。「風景は実世界で、物理的存在としての環境。光景は観測世界で、刹那的情報となる映像。情景は再現vision、個人的情報として記憶されるもの。つまりオブジェクトである風景を、目で光景として観測し、それが個人の記憶により価値が高まったものが情景」とした。

アイキューブド研究所が定義する三種の景色

技術開発の経緯について「人間は見るという行為で、風景を脳にコピーする。そこで大事なのは距離情報。ピントが合うというのは、映像に距離情報をのせて脳に行くということ。800万画素のカメラでカメラマンが撮影した映像を1/300の圧縮伝送でディスプレイに表示させる。ここで圧縮される情報は、ある対象物をキレイに映すといったものであり、その奥にある例えば山や木については考えられていない」という。

人間が実際に目で見る際の捉え方(左)と、テレビ放送のようにカメラで撮影された映像をディスプレイを介して見た際の捉え方(右)の違い

その上で「カメラで撮影された光景を人間が見ているものに近づけたいと、2011年に忠実な光景を創造するICC技術を発表した。奥行き情報が再現できるため、全てのオブジェクトにピントが合う」と説明を加えた。

2013年に開発されたISVC技術については、「風景に自分が取り込まれるような、体感光景を創造する。スマートフォンの写真でも富士山を認識できるが、実際に富士山を見ると圧倒されるような迫力がある。それは高解像度でも体感できるものではない。風景のなかに自分が身を置くことができるのが体感」と、同技術によりもたらされる効果を解説した。

そして2015年のICSC技術では「オブジェクトと自分の関係が認知できる、相対光景の創造。これまではカメラで撮影された映像カメラが置かれた位置で撮影されたものを忠実に再現してきたが、この技術ではその位置に縛られず、自分がその場所に行き、見たいところを注視したかのように感じられる」と述べた。

アイキューブドシー技術は「これらを兼ね備える“統合光景創造技術”であり、光景を全て作り変える」という。これまでの技術に即した忠実光景モード、体験光景モード、相対光景モードの3モードを備えており、これらは1つずつ効かせることも、3つ同時に効かせることもできるという。

アイキューブドシー技術の概念イメージ

実際の見え方について「忠実光景モードではオブジェクト全てにピントが合い、体験光景モードでは太陽が全体を照らすように均一に光が強くなっていき、相対光景モードでは実際にその場所に入り込んだかのように感じられるほど映像に力が増す」とコメント。

デモでは、ディスプレイにアイキューブドシー技術を適用した映像には4K-SDR 100nitのモニターを使用し、比較用のリファレンスとして4K/HDR 510nitのTVが用意された。映像はアイキューブド研究所の入るビルから撮影された街並みで、4K非圧縮のもの。まずアイキューブド技術を使用しない状態では、ディスプレイの輝度の差から、リファレンスのTVの方が圧倒的に明るく見える。

右がアイキューブドシー技術を試すモニターで、左が比較用のTVディスプレイ。素の状態では輝度の高いTVのほうが明るく見える

それがアイキューブド技術を反映させると、ディスプレイ自体の輝度は低いにも関わらず、明るさが逆転したかのように感じられた。

アイキューブドシー技術を使用すると、右のモニターが自然な明るさではっきり見えるようになった

さらに、0〜100で設定される各種モードなどのクリエイションレベルを調整すると、その差が明確になる。カメラで撮影された映像である元映像のピントは変わらないが、それでも遠くの映像がクリアに見え、位置関係が分かりやすくなる。それは同社が「自分が遠くのものに近づいていった時に見える光景が再現できる」と説明した通りだ。

写真左がアイキューブドシーの反映前で、写真右が反映後。遠くの景色がクリアに見えるようになるのが分かる

アイキューブドシー技術の実用化については「現状では開発中なので、技術を作るということに専念している。どのような形で実用化されるかについてはこれから考えていく」としている。

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