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3Q単体では増収増益

ソニー、'13年度通期は1,000億の赤字見込み − 会見では平井CEOがテレビ分社化の狙いなど説明

公開日 2014/02/06 16:15 ファイル・ウェブ編集部
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ソニーは、2013年度第3四半期の連結業績決算を発表した。

第3四半期単体の売上高は2兆4,128億円(前年同期比+23.9%)、営業利益は903億円(同+94.6%)、当期純利益は270億円。

これにより、第1〜第3四半期までの売上高は5兆9,010億円(前年同期比+16.4%)、営業利益は1,415億円(同+70.5%)、純利益は122億円となった。


2013年度第3四半期の連結業績決算

第1四半期〜第3四半期を合わせた連結業績決算

第3四半期の売上高増収は、為替の好影響、「プレイステーション4」の発売、およびスマートフォンの大幅な増収が主な理由とのこと。また営業利益の増益は、為替の好影響に加え、テレビの損失が縮小したホームエンタテインメント&サウンド分野での大幅な損益改善、PS4などがあったゲーム分野での大幅な増益などが理由として挙げられるという。


第3四半期のセグメント別業績

第1四半期〜第3四半期を合わせたセグメント別業績
テレビ事業は4Kモデル投入などで収益改善

ホームエンタテインメント&サウンド分野個別に見ると、売上高は前年同期比24.8%アップとなる4,040億円に。これは4Kなど高付加価値モデルの導入による液晶テレビの製品ミックスの改善や、販売台数の増加によるとのこと。

各セグメント別の利益増減要因

営業損益は、80億円の損失だった前年同期から、今期は64億円の利益に転じた。液晶テレビの増収と費用の削減が要因のひとつだという。

テレビの収益は前年同期と比べて改善してきている印象。売上高は2,549億円(前年同期比+39.5%)、営業損失は97億円から50億円に縮小された。

なお別項でお伝えしているとおり、同社はテレビ事業を分社化し完全子会社として運営することを発表した。経営自立性を高め、高付加価値モデルの訴求を推進。2014年度のテレビ事業黒字化を目指す。


モバイル系は今後スマホ/タブレットにリソース集中

スマホやPCなどモバイルプロダクツ&コミュニケーション分野でも、売上高が4,615億円に増収(前年同期比+44.8%)。PCの販売台数は大幅に減少したものの、スマートフォンの販売台数が大幅に増加し、平均販売価格も上がったことなどがカギとなったという。

別項でお伝えしているとおり、PC事業に関しては日本産業パートナーズ(JIP)に事業譲渡することを決定した。今後はスマートフォン/タブレットにリソースを集中するという。


ゲームはPS4が好調

ゲーム分野は売上高4,418億円(前年同期日+64.6%)。PS3の販売台数が大幅に減少したが、北米・欧州・中南米でPS4が発売されたことなどにより、分野全体では大幅な増収を実現した。営業利益は180億円(前年同期比+292.1%)。

なお、PS4本体は欧米での発売後1ヶ月半で240万台、ソフトは970万本を販売。「PS4の導入によってPS+も飛躍的に増加するなど好調な滑り出し」(ソニー CFO 加藤優氏)だという。

ソニー 加藤氏

通期連結業績予想は純利益を大幅に下方修正 − 1,000億円の損失見込む

2013年度通期連結業績予想を下方修正した

昨年10月に発表された2013年度通期連結業績予想を下方修正した。売上高は7兆7,000億円でキープしたものの、営業利益を800億円に引き下げ。当期純利益も、300億円の利益から一転して1,100億円の損失とした。

営業利益の大幅な下方修正は、モバイルプロダクツ&コミュニケーション分野やホームエンタテインメント&サウンド分野、デバイス分野で想定を下回る見込みであること、そして資産売却計画を見直したことによるものだという。

テレビ事業については「今期のブレークイーブンは現時点では難しいと見ている」(加藤氏)とコメント。「最後のところで、特に先進国での高付加価値商品の導入が少し遅れた。また、新興国でも市況が悪化し当初の想定よりも売上が伸びなかったことや、新興国通貨の下落も影響した」と説明する。

しかし、着実に様々な施策を積み重ねてきた結果、収益改善プランを発表した2011年からの2年間で赤字額は1,200億円改善、当初の1/6にまで圧縮することができたとも述べ、事業性は確実に改善されていると説明した。CEOの平井氏も「残念ながら今年度の黒字化は未達見込みだが、この2年間でテレビ事業再生の道筋は見えてきた」とコメントした。

平井CEOがテレビ事業分社化の狙いなどを直接説明

「CEOとしての使命はソニーを改革すること。エレクトロニクス事業を再生、成長させること。そしてエンタメ事業と金融事業をさらに成長させることで、グループ全体の経営を安定させることだと言い続けてきた」と語る平井氏は、エレクトロニクス事業においてイメージング、ゲーム、モバイルをコア事業と定めて商品力強化に取り組んできたことを改めて紹介。

ソニー 平井CEO


2011年に発表した収益改善プラン
「RXシリーズ、Xperia Z1、PS4など、ソニーらしいと言ってもらえる商品を導入できたと手応えを感じている」とし、今年のCESで発表した様々な製品やサービスについても「単に機能が優れた製品を作るだけでなく、お客様の感性を揺さぶり、コンテンツやサービスの創出を刺激するようなサービスを作り出すことを目指すという点で一定の評価を得られたと思っている」と述べる。

そして本日発表したテレビ事業の分社化に対しては「さらなるスピード感が必要だと考えた」と、狙いを説明。ソニーモバイルやSCEを例に挙げ、別会社が独自の判断で動くメリットを説明。「(こうした独自判断による)スピーディな動きをテレビにも持ち込みたい」と述べた。

平井氏はまた、「2013年4月のテレビの平均単価を見てみると、ソニーは37インチ以上では市場平均より3万5千円高い。2014年1月では5万円くらいの差になっている」と、高付加価値戦略が効果を出せていると紹介。「こうした高付加価値戦略を進めることが黒字化の道だと思っているが、分社化でスピーディに事業を行うことでさらに加速されると思う」と語った。

一方、「会社として別だが『ワンソニー』の下、マネージメントは一丸となって取り組んできた」ともコメント。テレビ事業もワンソニースピリットのなかでビジネスを行っていくという姿勢は今後も変わらないとした。

そして「トリルミナス、X-Reality Proなどのテレビにおける技術資産は、他の商品カテゴリーでもソニーの差異化ポイントとして活用されるなど、ソニーの全体戦略において重要なカテゴリー」だと言及。「今回の施策で黒字化をしっかりと実現し、その上で新しいホームエンタテイメント世界の創造を目指していく」と述べた。

なお、会見ではテレビ事業の売却の可能性を問う質問もあったが、「一般論で言えば、将来的にどうかというと、テレビに限らず色々な話がある。だが、現在具体的に売却の計画はまったくない」と回答した。

ソニーがVAIOブランドを利用する余地も

PC事業の譲渡について平井氏は「業界構造の大きな変化のなかで、ソニーとしてはスマートフォンとタブレットに集中すべきと判断した」と改めて説明。既存ユーザーへの継続的なサポート、社員の雇用維持などを総合的に判断した結果、事業譲渡が最適だと考えたという。

なお、別項でもレポートしている通り、新会社の経営陣は現在ソニーでVAIO事業を取りまとめる事業本部長の赤羽良介氏を中心に構成される予定。現在VAIOに関わっている人員については新会社での雇用や配置転換を検討するほか、社外への転身を促進するための早期退職プログラムを実施する見込み。

なお、スマホ/タブレットを始めとするモバイル領域への配置転換については「現在、日本のVAIOビジネスに携わっているのは約1,100名ほどで、新会社との今後の協議次第だが、規模感からして250〜300名くらいがモバイルに移ると見ている」(平井氏)という。

また、PCとタブレットの境界がクロスオーバーしつつある昨今の状況に対しては「たしかに何がタブレットで何がPCなのかは難しくなるだろうが、基本的には、新会社はまずPCビジネスでスタートするということ。どういう商品をVAIOとして展開するかはケースバイケースで議論していく」とした。

なお、マイクロソフトとの関係性については「Windowsということで言えば新会社の扱いになるかと思うが、しかしモバイルOSも有るので、その後はソニーの戦略として考えていく」とコメント。また、「今後の検討課題だ」と前置きした上で、新会社がVAIOブランドを独占的に使用するだけでなく、ソニーが利用することもあり得ると説明した。

質疑応答では経営責任を問う声も

以下、質疑応答の模様をお届けする。

Q.スマートフォンについて、販売予想台数を下方修正しているがその要因と来期以降の見通しについて聞きたい。

A.4,200万台から4,000万台に見通しを下方修正した。ただ、昨年は3,300万台だったのでかなり成長はしていると見ている。Xperia Z、Z1などソニーの技術を結集した商品を投入して、ユーザーからも好評だと受け止めているが、一部地域で台数が上がらない見込みだ。日本市場は想定通りだったが、中国を始めとするアジアやヨーロッパの一部地域などで想定を下回った。来年以降はまだ台数を言う段階ではないがまだ伸びるマーケットだと見ている。成長スピードは少しスローダウンするかもしれないが絶対量としては伸びるだろう。我々としても台数を伸ばしていきたい。

Q.平井氏にとってのVAIOはどう位置づけられるものだったか。

A.ソニーらしい、市場のPCとは違うデザイン、機能があるもので、かなりPC市場に一石を投じてきたブランドだと思う。同時に、いかにお客様に効率的にお届けするかということでサプライチェーンなどでかなり先頭を走ってきてくれたビジネス。オペレーション面でも大きな貢献をしてくれた。そういったノウハウは他のビジネスでも活用してかねばならない。

Q.エレキの黒字化は必達目標だったと思うが、これを達成できないことでの経営責任などはどう考えているか。また、最終損益の赤字転落をどう受け止めているか。

A.色々な考えがあると思うが、エレキ事業のターンアラウンド、そしてエンタテイメントと金融をさらに大きくしてソニーグループ全体の成長に寄与していくのが私の使命だと思っている。赤字転落については、減損や評価減などが含まれるなど、様々な要因がある。純粋にエレキ事業のオペレーションを見れば、テレビ事業も含め、いい方向に向かっているという認識だ。改革をゆるめず進んでいきたい。

Q.これまでも人員削減を行ってきたが、追加で人員削減をすることについてどう受け止めているか。

A.この規模の構造改革は一度ここで打ち止めにしたい。ただ、競争激化しているビジネスなのでポートフォリオの見直しなどは常にやっていかねばならないだろう。

Q.PC事業の海外戦略はどうなるのか。

A.最終的にはJIPが決めることだが、まずは日本からスタートするということで、海外も否定することではない。

Q.今回の2つの改革によってソニーはどの方向を目指すのか。

A.エレキについて言えば、この2年弱、かなりビジネスの集中と選択を行ってきた。そのなかで、例えばバッテリー事業などコア事業をサポートする事業も大きくしていかなねばならないと考えている。集中と選択がよりできているエレキビジネスを目指していく。グループとしては、エレキも金融もエンターテイメントも、お客様に感動していただけるコンテンツやサービス、製品を届けることが使命。これからもソニーはその方向に進んでいくべきだと思っている。

Q.ムーディーズがソニーの株の格付けを引き下げた。こうした市場の評価をどう考えているか。また、そうした評価が今回の決断に影響したのか。

A.格付けは重大に受け止めていて、一刻も早く戻すために取り組んでいく。ただ、弊社のバランスシートをみると、客観的にはそれほど脆弱だとは思っていない。どこが問題視されているかというと先々の収益性、キャッシュフローだと考えている。有利子負債があるなかで、将来稼ぐ力をはかられたときに「少し弱い」と考えられるかもしれないと判断している。コア事業については投資がきっちり効果が出ている。もうひとつ、赤字の止血効果も相まって来年度以降のキャッシュフローを改善して格付けを戻していく。

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