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事業間融合で複合製品創出を

10月から経営統合のJVCケンウッドが経営戦略を説明 − 「合併は成長への新たな創業」

公開日 2011/09/26 17:14 ファイル・ウェブ編集部
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(株)JVCケンウッドは、同社の経営戦略についての説明会を本日都内にて開催した。

同社は先日、2014年度までの新中期経営計画を発表(関連ニュース)。新企業ビジョン「感動と安心を世界の人々へ」のもと、強い事業に集中して利益ある成長を図るべく、カーエレクトロニクス、無線機器、カメラ機器、映像機器、音響機器、映像・音楽ソフトの各事業分野での経営方針が示された。本日の説明会ではさらに詳しい内容が説明された。

■河原会長「合併は成長への新たな創業」

会の冒頭には、同社代表取締役会長 兼 執行役員 統合経営責任者の河原春郎氏が登壇。「2008年10月にビクターとケンウッドの経営統合を行ってから、テレビなどホーム用民生事業を約3分の1に絞り込むなど様々な構造改革を行った。その結果、この3年間で市販カーエレクトロニクス事業、業務用システム事業など強い分野にリソースを割いたバランスの取れた事業スタイルとなった」と、経営統合後の経緯を振り返った。

JVCケンウッド 河原春郎氏

合併後の“新生”JVCケンウッドの詳細

「今年の10月にはビクター、ケンウッド、J&Kカーエレクトロニクスが経営統合し、新しい『JVCケンウッド』が誕生する。合併は成長への新たな創業と考えている。ガバナンスを多重構造から一元化することにより、戦略遂行力と迅速性を高められるほか、資金運営も一元化し、資金運用の機動性・戦略性を大幅に高められる。社内制度についても、システムや制度を統合することで、社内交流や異動を活発化し社内の活力を引き出せることと思う。新しい企業ビジョン『感動と安心を世界の人々へ』のもと、不破社長以下一丸となって頑張っていきたい」(河原氏)。

10月の合併により生まれるメリット

新企業ビジョン


■事業間融合で複合製品創出を図る

続いて代表取締役社長 兼 CEOの不破久温氏が登壇。JVCケンウッド全体としての経営戦略と成長戦略について説明した。

JVCケンウッド 不破久温氏

新生JVCケンウッドでは、「音」「映像」「無線通信」の3事業を融合させることで、複合商品を生み出すことが大きなテーマ。例えばケンウッドの音響技術をビクターの映像分野でも活かす、ビクターの映像/音製品にケンウッドの無線技術を活かすなど、それぞれの強みを持ち寄って活かすことで、シナジー効果の創出を図る考えだ。

各事業分野を融合させ、複合商品の開発を目指す

また「安心」を提供する製品への事業領域拡大もテーマに掲げている。カーエレクトロニクス事業では、これまで中心としてきたカーオーディオに加え、ナビゲーション分野やカーエンタメサービスにも着手。カメラ事業では民生用カムコーダーのほか業務用カムコーダー、ハイブリッドカメラ、そして3Dカメラ/IPカメラにも範囲を広げる

各事業分野の今後の製品領域拡大

これらの製品は、マス市場向けというよりはニッチ/カスタム市場をターゲットにする。「B to CからB to B、そしてprofessional to Professional(p to P)を目指し、プロのニーズを聞きながら様々な製品を提供していきたい」(不破社長)。新カテゴリー製品/システムの開発などを目的とする「戦略投資」として、計18テーマについて2014年度までに約70億円を投資する。この内訳は「詳細にはお伝えできないが、カーエレクトロニクスと通信事業と4割、通信事業で3割、映像など新しい分野進出や通信のためのデジタル技術に3割を分配する予定」(不破氏)とのことだ。


■OEMや新興市場拡大に注力。モバイル連携なども強化

続いてカーエレクトロニクス事業の戦略について、カーエレクトロニクス事業グループCOOの江口祥一郎氏が説明を行った。

JVCケンウッド 江口祥一郎氏

同事業は「OEM分野の拡大」「国内ナビの売り上げ倍増」「新興市場への攻勢」を重点に置く。

江口氏はOEM分野が「最も成長が見込め、かつ注力していく分野」と説明。市販事業は特に欧米で圧倒的強さを保持しているとのことで、これを引き続きキープしていく。また成長が見込める中国市場へも本格参入する考えという。そのほか、これまで若干低いシェアに甘んじていた国内市販ナビを強化する計画も披露。「ラインナップ拡充や量販店コラボなどを行い、2014年度までに20万台レベルまで拡販を図っていきたい」と意気込みを語った。

OEM分野の拡大を目指す

海外に比べ弱かった国内市場向け市販ナビも売上拡大を目指す

また新興国市場にも注力。これまで欧米モデルの流用だったものを、新興国市場専用モデルを投入することで、ニーズに合った製品を提供して販売増加を狙う。また、アジア/中南米市場への低価格デジタルメディアプレーヤー導入、中国向けの異型パネル対応商品開発、インド/中近東向けの200mmパネル対応商品開発強化などを行っていくという。

新興国にフィットした専用製品を投入し、売上拡大を狙う

カーエレクトロニクス事業の2014年3月度数値目標

そのほか、モバイルツールとの提携によるリアルタイム情報提供サービスや、通信インフラによる車載ネットワークサービスにも取り組む予定だという。

モバイルとの連携を強化した製品開発も視野に

ネットワークの強化も行うとのこと


■今年度中にワイヤレス通信対応カムコーダー発売予定

続いてホーム&モバイルエレクトロニクス事業の戦略について、同事業グループCOOの不破久温氏が説明を行った。

同事業の第一のテーマは「『撮る』『観る』のニッチ化/プロフェッショナル化」。通常の動画だけではなく新しい静止画を作れる「ハイブリッドカメラ」、3Dカムコーダーの小型化/低価格化、4K2Kカムコーダーなどを投入し、市場開拓を狙う。またプロジェクターも高い評価を得ているため、この価値を更に高める戦略を進めていく考えだという。

ホーム&モバイルエレクトロニクス事業の重点施策

ホーム&モバイルエレクトロニクス事業のの2014年3月度数値目標

第2のテーマは「『もっと簡単に、便利に』『安心』の実現」。カメラとモニターの間に距離があっても映像を簡単にワイヤレス伝送できる技術を深めていき、今年度中に第一弾製品となるワイヤレス通信対応カムコーダーを発売する予定だという。

第3のテーマの「新規事業領域への取り組み」では、バイノーラル録音に関する技術をハイレゾ音源などに応用していくほか、お年寄りに優しいAVアクセサリー、スマートフォン対応アクセサリーなどの強化を図っていくとのことだ。

既存領域を融合させた商品・サービス開発も狙う

「これまではデバイス中心の事業セグメント化をしていたが、これからは製品のカテゴリーを思い切って見直すとともに、強みをもった製品を開発することで、専業メーカーとしてコンシューマーの信頼を獲得していきたい」(不破氏)。

このほか業務用システム事業では、独自開発したデジタル業務用無線機NEXEDGEのネットワークシステムを使用したグローバル展開、システムソリューションビジネスの拡大と中国・欧州・アジア/オセアニアでの展開を狙う。また、自立型防災システムや3Dプロジェクター/2D-3Dコンバーターなど新規事業領域にも取り組むという。

また、エンタテインメント事業では、コアである音楽事業の拡充はもちろん、BtoBビジネスの拡充、パッケージ/配信/ライブなど複数ジャンルにわたるアーティスト関連ビジネスの拡大、アニメ/ビジュアル関連ビジネスの強化などを狙う。さらにDVD/BDなどを製造してきたノウハウを活用し、ノンパッケージ事業やフルフィルメント事業の拡充を行い、「製造会社」からの脱皮を目指す考えとのことだ。


■不破社長「これまでとは違った緊張感を持って推し進めていきたい」

不破社長は、中期経営計画のリスクについて尋ねられると「10月からは4つのセグメントがひとつひとつの事業体として戦略をつくり、実行していく体制となる。個別の要素技術の融合をいかに実現できるかがカギ。例えば車のなかでのエンタメ提供技術を現実に適用していこうとしている協業/競合他社さんは多くあり、一緒に新しい技術の提案をしていくわけだが、その基準を共有できてはいない。映像であれば、4K2Kの撮像から受像までの方式についてはまだ標準化されていないし、一年やそこらでできあがるものではないと思っている。こうした点はリスクと言えるだろう」と回答。

「また、これまで重要なマーケットと考えていた欧州とアメリカの市況は混乱している。新興市場への参入を考えているが、ここにいかにフィットする製品企画をできるかが重要だろう。トレンドとニーズを的確に見極めることが大切だし、大きな課題。これまでとは違った緊張感を持って推し進めていきたい」と締めくくった。

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