HOME > ニュース > パナソニック、三洋・パナ電を完全子会社化 − 「SANYO」ブランドは「Panasonic」に統一

2012年1月に事業体制を再編

パナソニック、三洋・パナ電を完全子会社化 − 「SANYO」ブランドは「Panasonic」に統一

2010/07/29 ファイル・ウェブ編集部
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

左から三洋の佐野社長、パナソニックの大坪社長、パナソニック電工の長榮社長
パナソニック、パナソニック電工、三洋電機の3社は、パナソニックがパナソニック電工と三洋電機を完全子会社化することで合意した。

後述するグループ再編後は、ブランドを将来的に「Panasonic」へ原則的に統一する方向で検討している。事業・地域によっては、一部で「SANYO」ブランドを活用することも継続するという。

パナソニックは現在、三洋電機の株式を50.2%、パナソニック電工の株式を52.1%保有。これを一気に100%に引き上げる。パナソニックは取締役会で、両子会社の普通株式を公開買い付けすることを決議。両子会社もこの公開買付に賛同する決議を行った。

買付は8月23日から10月6日まで行い、買付の価格はパナソニック電工が1株あたり1,110円、三洋電機が同138円。最大買付総額は8,184億円となる予定で、買い付け資金はパナソニックの手元資金で行うが、買付後の財務基盤を強固にするため、外部資金の調達を予定している。

完全子会社化に向けた財務面の取り組み

公開買付の実施後、2011年4月を目処に両子会社とパナソニックの間で本株式交換を行い、完全子会社化を実現する。

公開買付の概要

完全子会社化する理由についてパナソニックは「事業環境の劇的かつ急速な変化」を強調。韓台中企業などとの競争が、デジタルAV機器だけでなく二次電池や太陽電池などにも広がっているとし、グループのビジョン「エレクトロニクス No.1の『環境革新企業』」を実現するため、完全子会社による意志決定の迅速化とシナジーの最大化、また大胆な資源のシフトによる成長事業加速などが不可欠と判断した、と説明している。

完全子会社化に向けたスケジュール

両者の完全子会社後、2012年1月を目処に事業体制を再編。「コンシューマ」「デバイス」「ソリューション」の3事業分野に、現在の3社の事業・販売部門を統合・再編し、それぞれの事業特性に最適なビジネスモデルを構築する。また、本社機能も3社の組織を統合し、スリム化することで戦略機能を強化するという。

本日夜、本件に関する説明会が開催され、パナソニックの大坪社長、パナソニック電工の長榮社長、三洋電機の佐野社長が出席した。

大坪社長は完全子会社化を決断した背景について「変化のスピードが日々加速している」ことを挙げた。「戦略実行のスピードアップと総合力発揮が不可欠。意志決定の迅速化とグループシナジーの最大化が必要で、これによって真に一体となった、新たなパナソニックグループを作る」という。

また大坪氏は質疑応答の中で、「グローバルの市場やライバル企業を見ると、このスピード感では、とてもではないが勝てないと感じた」とも述べ、「たとえて言うと、アジアのコンペティターが100m競争のスピード感で事業拡大をしている一方、我々は中距離走のスピード感覚でやっているような印象を受けた」とし、迅速な意志決定の重要さを強調した。

なお大坪氏によると、「今回必要となる資金は最大8,000億円程度だが、内部に500億円の純利益が残る。また2012年に向け、統合のシナジーが生まれてくる。これによって600億円の営業利益増が見込め、純利益は300億円程度になるだろう。まだ粗い計算だが、最低でも800億円分の純利益増になる。どの面からみても合理的な決断、判断だ」と完全子会社化の意義をアピールした。

三洋電機の佐野社長は、「事業環境が想定以上に急速に変化している。韓台中のメーカーに打ち勝つにはスピードアップと総合力の発揮が欠かせず、三洋電機の強い事業をより強化できる体制を確立することが不可欠と判断した」と、TOBに賛同した背景を説明。

また佐野氏は「パナソニックグループの企業価値向上に直結する決定だ。ソーラーなど強い部分を活かしながら、グループ全体の収益向上に大きく貢献できるだろう」とも語った。

さらにパナソニック電工の長榮氏は「今回の決断により、パナソニック電工の社員が、真のパナソニックグループ社員となる。製販技のバリューチェーンを加速させることが可能となる」と、決断の背景について説明した。

発表会で行われた主な質疑応答を、以下に紹介する。なお、回答者は特に注記が無い限り大坪氏となる。

Q:ブランドについて。将来的に「Panasonic」へ原則的に統一する理由は。
A:当初から、将来的にPANASONICに統一すると一貫して申し上げてきた。三洋電機の実際の事業、市場をつぶさに見ると、一部の商品ではSANYOブランドが強いことがあるのも事実。強い地域、強い商品は当面SANYOブランドで展開する。

Q:なぜPanasonicブランドに統一する理由があるのか。
A:ブランド価値というのは非常に重要。今後は「家まるごと」、「ビルまるごと」のソリューションをトータルで提供する。いわゆる「まるごとビジネス」を基本に置くので、このためにはブランドを統一することが極めてわかりやすい。

Q:佐野社長に聞きたい。SANYOブランドへの思いを語って欲しい。
A:<佐野氏>これまで当社では、構造改革やリソースシフトを行ってきた。TOBの後でも、二次電池やソーラーは基本的には三洋電機を一つのコアにして、グループ全体のシナジーを発揮する視点で再編すると認識している。

一方でコンシューマー、白物、デジタル家電では、できるだけ早くワンブランド化するのがグループ全体の利益になるだろうと考えている。

60年以上続いたブランドが無くなっていくのは寂しい思いも当然あるが、プロダクトブランドとして親しんで、重用していただけるものがあれば、パナソニックブランドであっても、これからも親しんでもらえるのではないか。

Q:50%超の持株比率ではダメな理由を詳しく教えて欲しい。
A:これまで50%超の株式を持ってやってきたが、3社の独立性を意識しながらコラボするのは、スピードという意味で致命的な遅れが出ることを、実感として感じた。会議の場などで、お互いを尊重しすぎる場面も、やむを得ないことだが見られた。100%のシナジー効果を発揮するためには、この方法がベストだと考えた。

3社には色々な事業があるが、100%子会社化することで、堅く見ても営業利益が800億円程度積み上がる。詳細についてはこれから改めて詰めていく。

Q:株数についてもっと詳しく教えて欲しい。
A:できるだけ内部資金で賄いたいが、だいたい3,000億円くらいの追加資金が必要になる。財務の健全性を図る観点からエクイティファイナンスも検討している。

Q:3事業分野に改変する際、どういった形態になるのか。
A:基本的には、それぞれの強い事業に寄せるということだ。実際にはパナソニック、パナソニック電工、三洋を並べて、これからの方向性にベストと考えられる施策を決めていく。

Q:シナジー効果について、600億円の営業利益増という説明があったが、これは統合に関わる費用も含んだ数字か。
A:リストラ費用なども計上した上での数値だ。

Q:リチウムイオン電池、EV用電池はそろそろ商品化のタイミングだと思う。これらの、パナソニックと三洋のあいだの棲み分けを教えて欲しい。
A:具体的な事業の再編については、今後ワーキンググループを起こして検討していくが、自動車用電池については、三洋もパナソニックも一体となってリチウムイオン電池を強化する。自動車メーカー様に、より良いものを供給していく、その備えを作っていくということだ。

Q:今後の3社間のR&Dの体制はどうなるのか。
A:「グループとして最強のR&D体制の在り方」を念頭に、3社の強みを最大化できる体制を考えていきたい。

Q:今後のパナソニック専門店の役割を教えて欲しい。
A:最適な商品供給の在り方を検討し、ユーザーに「最適な答えを出した」と言われるかたちを作っていきたい。

Q:パナソニックは「2018年にエレクトロニクス世界No.1」という目標を掲げているが、今回の決断はどう影響するか。
A:今後の成長は海外のウェイトを増やしていきたい。三洋電機は海外でたくさんの事業を展開している。パナソニックとは展開のやり方も違う。パナソニック電工は国内のウェイトが高いが、そこでは非常に強い。こういう3社の組み合わせで相乗効果を発揮すれば、3社の強みが活かせるのではないか。

Q:もう少し早くこの決断を実現することはできなかったのか。
A:決断は早くできても、実現には裏付けがいる。資金力などがある今がベストだ。

Q:三洋電機の商品にも、ユーザーから厚い支持を受けているものがある。これらから撤退することが、本当にユーザーの利益に資することになるのか。
A:ステークホルダーに高い満足を得てもらうことが必要。愛着を強くもって頂いている商品、地域があるのも事実だが、パナソニックブランドになっても、これまでの三洋グループを支持していただいていた方々に満足してもらえるよう運営していきたい。

Q:リストラという言葉が出たが、人員削減は行うのか。
A:経営を続けていくことが我々の最大の責任だ。3社を統合することを再構築、リストラと言っているだけであり、リストライコール人員削減という考えは全く念頭にない。

Q:大坪社長は「ディスシナジーはいけない、1+1が1.5になってはいけない」という考えを前から強調されているが、今回の完全子会社化によりディスシナジーが起きないと考えているのか、それとも防ぐシナリオがあるのか。
A:これから3社のリソースを並べて検討していくわけだが、その中でディスシナジーが起きる分野が出ることも事実。そういったものを最小化する、切り離すことを考えていきたい。

Q:三洋電機やパナソニック電工の社員の中には「納得できない」という声もあると思う。両社長に、完全子会社化に賛同する決断した今の心境を聞きたい。
A:長榮社長:本日、全員にSAT放送で語りかけた。これからは親も子もない、みんなパナソニックなんだということを強調した。
佐野社長:2012年にも、三洋電機は法人として残ると社員には申し上げた。今後はグローバルに戦える体制を作っていく。
大坪社長:3社がワクワクする、成長できる、という姿を描き出すことが重要。これを幹部全員で意識して進めている。

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE