【一条真人の体当たり実験室】ウォークマン「NW-A820」Bluetooth機能の可能性を探る

2008年03月13日

「NW-A820」シリーズの目立った進化はBluetooth機能の搭載
あいかわらず世界的にiPodの強いポータブルオーディオ市場だが、新世代ウォークマン「NW-A820」シリーズ(製品データベース)は無線通信規格「Bluetooth」という新しい武器を搭載し、新しい価値を創造しようとしているようだ。今回はこのBluetoothの実用性を検証してみた。

この新型ウォークマンに搭載されるBluetoothは、高速な通信が可能な「Bluetooth2.0+EDR」に対応している。Bluetooth2.0の通信速度は最大約3Mbpsであり、オーディオのデータ程度であれば、余裕を持って転送できるのではないかと推測できる。しかし、カタログスペックだけではあてにならないのも事実だ。

使用したのは8GBメモリーを搭載した「NW-A828」のホワイトモデル。今回のテストでは、Bluetooth対応ヘッドホンとして「DR-BT25NX」、Bluetooth対応スピーカーとして「SRS-BT100」を使ってみた。

このBluetoothヘッドホン「DR-BT25NX」は、マイク機能も搭載しており、Bluetooth対応携帯電話と組み合わせれば、通話にも使えるという汎用性の高さを備えている。

本体ユニットにマイクが搭載されているほか、コントロールボタンも搭載している

スピーカーの「SRS-BT100」は、Bluetooth接続だけでなくステレオミニジャックも1つ持っているので、アナログオーディオデバイスとの接続も可能だ。

意外に大きなスピーカー。ウォークマンと比較すると、その大きさがわかる

はじめにペアリング設定が必要

Bluetoothの機器を使うには、1対の機器をペアとして登録する「ペアリング」設定をする必要がある。この作業はおもにウォークマン側で行う必要があり、ホームメニューのBluetoohから実行できる。またペアリング設定時は、接続したいBluetooth機器をペアリング可能な状態にして、1m以内程度のところに置いて、作業する必要がある。

このヘッドホンユニットの場合、電源が切れている状態から7秒以上POWERボタンを押し続け、赤と青の2つのインジケーターが点滅した状態になるとペアリング待機になる。ちなみに、POWERボタンの3秒押しで電源オンになる。

このヘッドホンは状態を示すインジケーターが本体の赤と青のランプしかないので、電源オンから、充電状況、ペアリング待機まで、この2つのランプの点灯・点滅パターンで状態を知らせてくれる。ちなみに電源オン時にPOWERボタンを押すと、赤ランプの点滅回数で充電状況を3段階(3回点滅がフル)に知らせてくれる。

ヘッドホン本体ユニット。インジケータランプはMICとSONYロゴの間の左右にある。左は赤で電源状態を、右は青で通信状態を示す。上部のスティックで再生コントロール、ボリューム調節などが可能だ

ウォークマン側でのペアリング操作は、ホームメニューからBluetooth設定を呼び出し、そのなかの「ペアリング」で実行することができる。

Bluetoothメニューからペアリングを実行

発見した機器が表示される


パスキーを入力。初期設定では0000を入力すればいい

ペアリングが設定されると、機器リストに表示される
再生だけでなくコントロールも可能

Bluetooth機器は、対応するプロファイルにより、通信で利用できる機能が決まる。当然、通信をする2つの機器の両方が対応する機能しか使うことはできない。

「DR-BT25NX」は以下のようなプロファイルに対応しており、音楽データを転送するだけでなく、ウォークマンの基本的な再生コントロールが可能になっている。ウォークマン側もAVRCPプロファイルに対応しているからだ。

-----------------------------------------------------------
 A2DP:オーディオコンテンツの転送
 AVRCP:再生、停止、ボリューム調整などのAV機器のコントロール
 HSP:通話/携帯電話操作
 HFP:ハンズフリーの通話/携帯電話操作
-------------------------------------------------------------

スピーカー「SRS-BT100」のペアリング

スピーカー「SRS-BT100」のペアリングも、スピーカー側をペアリング待機状態にして、ウォークマン側で同様に操作することで設定できる。スピーカーでは電源オン時に、「ID SET」ボタンを7秒以上押していると、ペアリング状態になり、前面の青ランプが点滅する。その状態にしてから、ウォークマン側で設定すればいい。

本体上部には電源、ペアリング、ボリューム調節のためのボタンがある

Bluetooth機器の切り替え

Bluetoothでは規格上、8台までのデバイスをペアリング登録できるが、一度にデータを転送できるのは1つのユニット(1対とも言える)に限られる。ポータブルオーディオの場合も同様で、複数のBluetooth機器を登録することはできるが、一度に音を出せるのは1つのデバイスに限られる。

この対象デバイスはウォークマンのBluetoothメニューで「Bluetooth機器」リストを表示させ、選択して切り替えることができる。外ではヘッドホン、スピーカーのある室内ではスピーカーに切り替えるというような使い方が手軽にできる。この使い分けは、今までのポータブルオーディオにない感覚で面白い。

選択されているデバイスにBluetoothアイコンが表示される

音質は?

Bluetoothの利便性はわかっても、やはり気になるのは音質だろう。今回は付属のヘッドホンとBluetoothヘッドホン「DR-BT25NX」で聴き比べをしてみた。この付属ヘッドホンとBluetoothヘッドホンはユニット自体が異なるので、当然再生音は全く違うものになる。このため比較対象としては適切ではないが、あえて比較を行ってみた。すると、付属のヘッドホンよりもBluetoothヘッドホンのほうが音が明瞭に聞こえる。小さな音もはっきりと精細に表現されていて、低音もより響く。少なくともBluetooth接続が音質の面で大きなマイナス要因にはならないことは確認できた。

通信距離は?

もう1つ気になるファクターが通信可能距離だ。カタログスペックでは見通し10メートルということになっているが、実際にはどうだろう。

ヘッドホンで試してみたところ、見通し10メートル程度であれば、たしかに問題ない。この製品の使い方として、ウォークマン本体をカバンに入れたまま、Bluetoothヘッドホンで試聴するという使い方がもっとも一般的だろう。試しに本体をデイバッグに入れて、1メートル程度離れたところに置いてみたが、これも問題なかった。

さらに、デイバッグに入れたまま隣の部屋に置いてドアを閉めてみたが、直線距離2メートル程度では問題なかった。そこで、さらに隣の部屋でもう1枚のドアを隔て3メートル程度離れてみたところ、さすがに電波が届かず、しばしば音が途絶えるようになった。しかし、当然これはBluetoothの想定用途を越えているだろう。

なおBluetooth接続では、通信不能になるとノイズが出るわけではなく、突然無音になって音が途絶える。

Bluetoothポータブルオーディオの可能性

今回はヘッドホンとスピーカーで試してみたが、ポータブルオーディオにBluetoothを搭載することのメリットは、単に無線でワイヤレス通信できることだけでなく、TPOで出力デバイスを選択できることにあると言っていい。ヘッドホンで音を聴くだけなら、わざわざ規格化する必要はなく、メーカーの独自方式でも実現できてしまう。しかし、それが統一規格であれば、さまざまな対応デバイスとの接続性がそこに生まれる。

ポータブルオーディオの場合であれば、TPOでさまざまな出力デバイスを選択できる。家の中ではスピーカー、外ではヘッドホン、自動車のなかではカーオーディオ、会社ではスピーカーという感じだ。それらの出力デバイスを手軽に切り替え、必要に応じて簡単に使い分けることができるのがBluetooth搭載オーディオの魅力と言えるだろう。Bluetooth搭載のポータブルオーディオには大きな可能性があると思う。

音質的にも問題なく、接続操作も一般人がごく普通に扱えるウォークマン「NW-A820」シリーズは、Bluetoothをごく身近なものにしてくれた。この製品が今後、市場にどう受け入れられるかに注目したい。

(一条真人)

執筆者プロフィール
デジタルAV関連、コンピュータ関連などをおもに執筆するライター。PC開発を経て、パソコン雑誌「ハッカー」編集長、「PCプラスワン」編集長を経てフリーランスに。All Aboutの「DVD ・HDDレコーダー」ガイドも務める。趣味はジョギング、水泳、自転車、映画鑑賞など。

関連記事