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折原一也がソニー新BDレコーダーを緊急取材! H.264エンコーダーの実力に迫る

公開日 2007/09/14 14:27
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一昨日、9月12日に発表されたソニーのBDレコーダー2007年冬モデル。発表を受け、今回はソニーの開発陣に特別取材を行い、画質デモを交えながら解説を受けることができた。

基本的な機能については既報のニュース記事(新機種全体/Xシリーズ/Lシリーズ/Tシリーズ)で多くの方がご存じかと思う。今回は特にクオリティと操作性について実機を使って確認した速報インプレッションを交えながら、筆者なりに解説を加えていきたい。

●24p出力、HDオーディオ対応など新世代の機能を全機種で備える

今回発売されたソニーの最新BDレコーダーは、「ハイビジョンの楽しみに合わせて選べるスタイル別ラインナップ」として、3シリーズで展開される。

「番組を楽しむ」シンプルな“Tシリーズ”BDZ-T50、BDZ-T70、ビデオカメラ連携を強化した「思い出を残す」“Lシリーズ”BDZ-L70、画質・音質を強化した「シアターを堪能する」“Xシリーズ”BDZ-X90と3つのライン、計4機種での展開となる。

BDZ-X90

BDZ-L70

Tシリーズ

AVファン注目の機能に着目して比較してみると、HDMIの映像1080p/24p出力「24p True Cinema」や、HDMI端子を使った次世代オーディオのビットストリーム出力「HDオーディオ対応HDMI音声出力」に全機種が対応と、BDプレーヤーとして新世代のフィーチャーは、全機種に惜しみなく取り入れられた。スペック面だけを見ると、現在発売されているBDプレーヤーのなかでも最高水準の機能を全機種が備えることになる。

T/L/Xの3シリーズ構成

各シリーズの機能一覧表

BDレコーダーとして見ても、もちろん2層50GBメディアの対応、4倍速BD-R対応と最新の仕様を満たす。BD-R LTHタイプへの対応については「検証中」とのことだが、恐らくは対応できるのではないだろうか。

●BDにHD画質で長時間記録対応!? MPEG-4 AVC録画の画質を緊急検証

エアチェックファンにとって、今回のBDレコーダーラインナップが搭載したMPEG-4 AVC/H.264「高精度ハイビジョンエンコーダー」の搭載だ。映像を従来のMPEG-2より圧縮効率の良いMPEG-4 AVC形式に変換することで、HD画質のままでの長時間録画を可能にする。

MPEG-4 AVC/H.264エンコーダーを搭載

各映像モードと録画時間

長時間録画ともなれば、DVDレコーダーがそうであった通り、画質の劣化が気になるのは当然だ。そこで今回は、気になる長時間モードで録画した際の画質チェックを行った。

今回の画質チェックは取材先での検証となっため、全てソニーの用意した環境でチェックを行っている。使用したレコーダーは最上位のBDZ-X90、モニターは最新のBRAVIA KDL-52X5000だ。

視聴したソースはソニー側で用意した映画「ハンニバル」を録画した1シーンで、原画のDRモード、SRモード(AVC 8Mbps、BD1層で約6時間)、LSRモード(AVC 6Mbps、BD1層で約8時間)の順に、それぞれ1度ずつ再生して比較している。

なお、今回の画質検証は取材時間に限りがあったため、繰り返し各モードの映像を再生して画質を確認する検証はできなかった。あくまでも各モード一度きりの視聴による、ファーストインプレッションであることを先に断っておきたい。

●SRモードはほぼ劣化を感じさせないレベル、LSRモードも実用範囲内!?

MPEG-4 AVCのSRモードで録画した映像は仕様上、1,440×1,080の解像度で記録されることになるが、今回視聴したところ十分高精細であると感じた。「AVCの映像はビットレートが落ちると甘くなる傾向があるので、その分は映像回路のDRCでクッキリさせるという考え方で処理しています」(ソニー株式会社 ビデオ事業部門 商品企画部 商品企画1課 係長の永井規浩氏)という取り組みも上手く働いているようで、8Mbpsというレートながら、明らかな劣化はほとんど見て取れない程の画質を実現している。視聴していて気になったのは、カメラがパンするシーンで輪郭の甘くなる瞬間がある程度だろうか。

LSRモードの映像は、さすがに全体に甘さが見えてくる。ただし、LSRモードの映像であっても、動きの少ないシーンではHDの高精細さがしっかりと残る。雨や煙のような圧縮が厳しい部分では細かなディティールは潰れてしまうが、全体としての破綻はない。LSRモードの6Mbpsと聞くとビットレートが苦しそうに思えるが、DVDレコーダーにあったEPモード(8時間記録の長時間モード)のような、スペック上あるだけで使い物にならない録画モードというわけでもなさそうだ。1層25GBのBDメディアに約8時間という録画時間を考えれば、実際に番組録画に活用できるケースもあるだろう。

なお、デジタル放送で採用しているAAC 5.1ch音声をドルビーデジタル5.1chに変換することも、従来にはない特徴である。

●MPEG-4 AVCはドラマ、アニメ、スポーツなどで活用したい

今回MPEG-4 AVCの画質は、十分実用性のあるものと判断した。ただし個人的には、WOWOWの映画をアーカイブする際には際には画質最優先で従来通りDRモードで録画するつもりだ。

MPEG4 AVCを使った長時間録画を活用したいと考えるのは、地上デジタル放送のドラマの保存のアーカイブだ。これは筆者個人の考えだが、ドラマは画質面でもある程度妥協できることと、1クール全11話と時間が長いこともあって、1層25GBを3〜4枚使うことに割高感があったためだ。

ドラマ保存に、2層50GBに約12時間記録できるSRモード(8Mbps)を使えば、ドラマ1クールがディスク1枚で収められ、コレクションの整理もしやすくなると期待している。同様の理由でアニメファンにとってもMPEG-4 AVCは魅力的に感じるはずだ。

また、サッカーや野球など、スポーツを中心に録画するファンにとっても、複数の試合をまとめて保存できる長時間録画の恩恵を受けられるだろう。

BDZ-X90の前面パネルを開けた状態

BDZ-X90のディスクトレイを開けたところ

パネルを開けると、前面右に基本操作ボタンを備える


前面パネルの上部のBDロゴを配置

BDZ-X90の背面。アナログ端子は金メッキが施されている

●最上位機のBDZ-X90はソースに応じて最適化する「DRC-MFv2.5」搭載

最上位機のBDZ-X90は、高画質機能として同社のBRAVIA上位機に搭載されている映像処理回路「DRC-MFv2.5」と8bitの色階調を12bitに変換して映像出力するDeep Colorに対応している。

「DRC-MFv2.5」に関しては、X90ではアップスケールはデコーダー処理で行っているため、DRCは1080iにアップスケールした映像から1080pへのI/P変換処理を担当している。その際、「HDクリエーション」と呼ばれる機能によって、解像感などを上げていく処理を施している。

DRC-MFv2.5を搭載

「くっきり」「すっきり」各4段階で調整できる(1はオフ)

実際に地上デジタル放送を録画した番組から「くっきり」「すっきり」各4段階の調整の効果を確認したが、うまく設定値を調整することで、自然な解像感とS/Nの両立を得ることができそうだ。

ちなみにDRCの機能はBRAVIAと重複するものではあるものの、同社の説明によると「テレビとは画作りを変えています。レコーダーではソースが何であるかという種類、画像サイズ、MPEG2、AVCといったコーデック、ビットレートも分かりますので、自動で内部設定値を変えたりといった対応をしています」と、レコーダーならではの作り込みがなされることにも注目したい。

●8bit階調から12bitに拡張するDeep Color出力

Deep Color出力は、テレビ側にもHDMIを使ったDeep Color入力に対応している機能も増え、色階調を滑らかにするための注目機能の一つだ。

8ビット映像を12ビット化して出力するDeep Colorに対応

様々な画質向上技術を搭載

今回の取材ではデモ用の静止画のグラデーション映像で確認したが、ホワイトからブラックへのグラデーションの中間にあるような、階調の筋が見えなくなる階調の滑らかさは確認できた。これは単純に色階調を補間できるのはもちろん、「8bitの映像を12bitにそのまま変換すると画が甘くなる。このため平坦な部分にはフィルターをかけずに12bit化するなどといった、適応的な処理を行っています」(永井氏)とのことで、実際の映像の効果も期待できる。

BDZ-X90にDeep Color出力、DRC-MFv2.5の回路を搭載したことは、モニターとして使用するテレビを問わず、同機能のメリットを享受できるようになることも特筆したい。BDの高画質化はもちろん、デジタル放送のライブ映像についても使用できるため、テレビ内蔵チューナーではなく本機のチューナーを使うことで、画質を向上させる活用法も考えられる。

●新世代のBDレコーダーとして死角のないモデル

今回は注目の画質を関係に取材を行ったが、他にもAVCHDカムからの映像取り込みやテレビBRAVIAとのリンク機能など新しい機能が追加されている。


番組表も7チャンネル表示に対応した
デジタルレコーダーとしての基本的な機能は繰り返しを自動で追従する「番組名予約」、CMを自動検出してチャプターを打ち編集を容易にする「おまかせチャプター」、スポーツなどを短時間で視聴する「ダイジェスト再生」を始めとする完成度の高い機能を受け継いでいる。

新世代のBDレコーダーとして、新機能はもちろん、画質、操作性すべての面で死角のないモデルが登場した。スタンダード機のBDZ-T50は店頭価格では10万円に近いプライスとなることも容易に予想でき、もはやAVファンがDVDにとどまる理由はなくなったと言って良いだろう。

(折原一也)

執筆者プロフィール
埼玉県出身。コンピューター系出版社編集職を経た後、フリーライターとして雑誌・ムック等に寄稿し、現在はデジタル家電をはじめとするAVに活動フィールドを移す。PCテクノロジーをベースとしたデジタル機器に精通し、AV/PCを問わず実用性を追求しながら両者を使い分ける実践派。

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