パラマウントのHD DVD陣営入りで変わる次世代光ディスクの勢力図

2007年08月22日

昨日のニュースでお伝えしたように、米パラマウント・ピクチャーズとドリームワークス・アニメーションSKGは、世界市場でHD DVD陣営を排他的に支持すると発表。今後、HD DVDソフトのみをリリースし、BDへのタイトル供給を行わないという方針を明らかにした。

今回の決定に伴い、国内法人のパラマウント ホーム エンタテイメント ジャパンでは、発売を告知していた『トップガン』などBDソフトの発売中止を決定。波紋はすでに広がっている。

次世代光ディスクの市場規模は、北米が圧倒的に大きい。その北米市場では、こちらのニュースでお伝えしたとおり、2007年上半期はBDとHD DVDの売り上げ枚数が2対1と、BDがHD DVDを大きく引き離している状況だ。

米Video Business誌の2006年の米パッケージソフトの売上高シェア(下表参照)を見ると、BD陣営がシェア41.7%だったのに対し、これまで単独でHD DVDを支持していたユニバーサルのシェアは11.3%。両規格でソフトを販売するワーナーの18.1%を考慮に入れなければ、その差は約4倍弱となる。この比率は2007年上半期の数字でもほとんど変わらない。上半期のBDとHD DVDの販売比率が2対1だったという結果だけをみれば、BDの圧勝と言うほかないが、これまで単独支持がユニバーサルだけだったことを考えれば、HD DVDが意外に健闘していると捉えることもできる。さらに今回、パラマウントがHD DVD陣営入りしたことで、シェアはBDが41.7%に対してHD DVDが21.0%と、約2倍程度まで縮まることになる。

2006年のパッケージソフト売上高シェア(米Video Business誌調べ)
規格 映画会社 販売売上高シェア *1 シェア合計
BD ソニー・ピクチャーズ 12.6% 41.7%
ウォルト・ディズニー スタジオ 15.4%
20世紀FOX 13.7%
HD DVD ユニバーサル 11.3% 21.0%
パラマウント 9.7%
BD/HD DVD ワーナー・ブラザーズ 18.1% 18.1%


映画産業は大きなヒット作が登場するとシェアが大きく変動し、浮き沈みが激しい。将来のパッケージソフトの売り上げは、直近の映画興行収入シェアとある程度の比例関係にあるはずだが、下表の2007年上半期の米映画興行収入シェアを見ると、また違う結果が浮かび上がってくる。BD陣営が39.0%に対し、「トランスフォーマー」などヒット作が続いたパラマウントが加わったHD DVD陣営は29.4%。比率は約4対3となり、さらに差が縮まるのだ。

2007年上半期の映画興行収入シェア(米BOX OFFICE MOJO調べ)
規格 映画会社 全米興行収入シェア *1 シェア合計
BD ソニー・ピクチャーズ/コロンビア 14.0% 39.0%
ウォルト・ディズニー スタジオ 14.1%
20世紀FOX 10.9%
HD DVD ユニバーサル 11.3% 29.4%
パラマウント 18.1%
BD/HD DVD ワーナー・ブラザーズ 14.8% 14.8%


とはいえ、前述の通り、現段階ではBDの売り上げに勢いがあることは確か。パラマウントにとっては、BDへのタイトル供給を取りやめることで、次世代ディスクの売上高は大きく落ち込むことになる。HD DVD陣営入りの背景には、何らかの金銭的支援があったと考えるのが妥当だろう。米New York Timesは、東芝がパラマウントとドリームワークスに対し、1億5,000万ドルのインセンティブを支払うと報じている(記事はこちら)。インセンティブは現金とプロモーション用の報酬のコンビネーションとして支払われるという。また、今回のHD DVDへの独占供給が18ヶ月の期間限定であることもあわせて報じられている。

東芝アメリカ社は、北米でもっとも商戦が加熱する、11月下旬のサンクスギビングからクリスマスまでの、いわゆる「ホリデーシーズン」に向け、第3世代のHD DVDプレーヤー3機種を発売することをすでに表明している(関連ニュース)。北米では価格の安さがハード購買の大きなポイントになるが、エントリーモデルで299.99ドルを実現した今回のラインナップは、北米の一般消費者にとっても魅力的に映るはずだ。なお、ソニーが北米で発売しているBDプレーヤー「BDP-S300」(関連ニュース)の価格は499ドルで、その差は約200ドルとなっている。


東芝が北米で発売する299.99ドルのHD DVDプレーヤー「HD-A3」
北米での年間売り上げに占めるホリデーシーズンの割合は、日本の年末商戦とは比較にならない。「AVメーカーはホリデーシーズンのために1年間準備をする」という話もあるほどだ。この商戦での勝敗が、今後の規格争いの大きな鍵を握ることになるのだが、この時期に合わせ、北米での人気が高い「シュレック3」やヒット作「トランスフォーマー」を独占供給し、市場の主導権を握る戦略だろう。また中期的には、New York Timesが報道した「18ヶ月」という契約期間が事実ならば、この期間をどれだけ有効に活用できるかも、東芝にとっての大きな課題となる。

一時は「フォーマット争いは終わった」とBD陣営が“終結宣言”をしたBDとHD DVDの争いだが、今回のパラマウントの決断で、また混沌とした状況に戻ったことになる。ただし、東芝としても、一部で逆ザヤが発生していると指摘されている低価格プレーヤーのコスト構造や、今回のパラマウントへの資金供出により、多大なコスト負担を強いられていることも確か。フォーマット争いはいよいよ本格的な消耗戦の様相を呈してきた。

(Phile-web編集部・風間雄介)

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