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PR日本市場向けヘッドホン「EMPYREAN JAPONIA」とイヤホン「ASTRU」の技術詳細も語る

「ヘッドホンは、アートを楽しむ文化の一部」。Meze AudioのCEOが語る、フラグシップヘッドホン「ARTA」の狙い

公開日 2026/10/05 06:30 編集部:筑井真奈
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独創的な造形と、深く厚みのある音質で、ヘッドホンブランドとして今や世界的な評価を得ているルーマニア・Meze Audio(メゼ・オーディオ)。

同ブランドの創業者であるアントニオ・メゼ氏が、7月に開催された「夏のヘッドフォン祭 mini 2026」にあわせて来日。平面磁界ヘッドホンの新たなフラグシップモデルとなる「ARTA」、日本市場の声から誕生した「EMPYREAN JAPONIA」、チタンハウジングを活用したイヤホン「ASTRU」の狙いを語っていただいた。

Meze Audioの創業者でありCEOのアントニオ・メゼ氏 

ヘッドホン専業ブランドとして誕生

Meze Audioは、2011年にルーマニアのバイア・マレという街で創業された。当初からヘッドホン/イヤホンに特化したブランドで、最初のプロダクトは2015年に発売された「99 Classics」という密閉型ダイナミックヘッドホン。その後も旺盛な製品開発を重ね、高いドライバーの開発技術と、レザーやウッドといった自然由来の素材を活用したデザイン性の高さで、この10年の間に急成長を遂げた。

価格帯も2万円台の「99 Neo」から、今年登場するフラグシップ・モデル「ARTA」(100万円クラス)と幅広い。主力はヘッドホンだが、近年イヤホン製品にも力を入れており、白い筐体の仕上げも美しいダイナミック型イヤホン「ALBA」は世界的に評価が高い。製造はルーマニアの自社工場、もしくは協力工場にて行われている。

海外のオーディオショウでも大型ブースを展開する 

アントニオ氏によると、現在のMeze Audioのスタッフは約70名。組立や品質管理、出荷を担当するスタッフに加え、R&D、音響エンジニアリング、デザイン、セールス、マーケティング、ITなどの専門部門を抱えている。

アントニオ氏は、「会社をひとつの“organism(生命体)”のように考えています」と自信を込める。「開発だけではなく、コミュニケーション、オペレーション、セールス、カスタマーやビジネスパートナーとの関係まで、すべてを持続可能なものにしていかなければなりません」と、ブランドを成長させていくためには、組織としての継続性が重要だと訴える。

金属鋳造や特殊素材など専門設備を必要とする工程は外部の協力工場を活用する一方で、CNC加工の一部は自社でも行っている。ヘッドホンのフレームなど、デザイン的なこだわりを要求されるパーツは自社内で精度の高いものづくりを追求。また社内には塗装設備があり、リミテッドエディションを専門に手掛ける職人チームまで存在するそうだ。

またイヤホンに関しても2年半ほど前からイヤホンの専門開発チームを設立。以前はヘッドホンとイヤホンは同じ開発チームで進めていたそうだが、独立したチームを設けることで、本格的なイヤホン開発を加速しているという。

その成果のひとつが2024年発売の「ALBA」であり、さらに上位モデルとなるのがチタン削り出しの筐体を活用した「ASTRU」である。

イヤホンについても独立した開発チームを設け、開発を加速している。写真は最新モデルとなる「ASTRU」(154,000円/税込)

フラグシップモデルで追求したドライバー技術

まずはフラグシップ・ヘッドホンとなる「ARTA」のこだわりについてアントニオ氏に教えていただいた。「ARTA」とは、ルーマニア語でART=芸術を意味するそうで、Meze Audioとして最高峰の性能、そして音楽再生の芸術の頂点を目指したヘッドホンとなっている。

Meze Audio フラグシップ・ヘッドホン「ARTA」(1,100,000円/税込)

「私たちはこの6年間、毎日のようにこの最高峰ヘッドホンの開発に取り組んできました。ですから、ウィーン・ハイエンドでみなさまにお披露目することができて、本当に嬉しかったです」とアントニオ氏は振り返る。ショウで大きな評判を呼び、7月の日本、8月の香港のオーディオショウでも“クオリティを求める”ヘッドホンファンから大きな喝采を浴びた。

ARTAのこだわりの一つが、複雑な形状をした金属のフレームである。デザインのインスピレーションとなったのは「骨格」、とりわけ鳥の骨だそうで、「有機的でありながら構造体として成立する骨格の美しさを、金属によって表現しようとしました」とデザインの狙いを解説。「芸術的な製品だからこそ、普通ではない、表現力のあるものを作りたい」と、あえて難しい製造方法にチャレンジしたのだという。

鳥の骨からインスパイアを受けたというメタルフレーム

もうひとつ重要な点が、新たに採用された「MZ5 HΩドライバー」である。「POET」や「EMPYREAN II」と同様に、ウクライナのドライバーメーカー・Rinaro社と共同開発したドライバーで、独自のIsodynamic Hybrid Array技術が活用されている。

ウクライナのRinaro社と共同開発した最新ドライバー「MZ5 HΩドライバー」

「こちらのドライバーの基板を見てください。非常に細く長いパターンとなっており、以前のものより2.8倍の長さがあります。このドライバーは、私たちが開発してきたなかでも最もインピーダンスの高いものです。一般的に平面磁界型のドライバーは高電流・低電圧で動かすことが多いですが、今回は逆のアプローチ、つまり“高電圧・小電流”で駆動するものとなります。その結果、さまざまな周波数の音楽信号が流れてきても、より安定かつスムーズなドライバーの動きを実現することができました」

また小電流化は熱分布の面でもメリットがあり、長時間再生した際にも振動板の挙動を安定させることができるという。

「Acoustic Blade」で背面の音響エネルギーを制御

さらに注目したいのが、新たなコルゲーション(振動板の凹凸構造)と「Acoustic Blade」だ。ドライバー背面に設けられたブレードは、振動板後方へ放射された音響エネルギーを拡散し、振動板へ不要な反射が戻ることを抑制する役割を担う。ブレードの角度や配列は複数のパターンを試したうえで決定され、空気の流れまで含めて調整されているという。

ブレードは音質/美観の両面から、1本1本細かく角度を調整している

高い技術を背景にしながらも、アントニオ氏があくまで目指すのは、「ただ音楽だけが存在する状態」だと訴える。優れたハイエンドオーディオシステムを整えたリスニングルームのように、解像度や明瞭さを持ちながら、ドライで分析的になりすぎない。音楽との親密な距離感を重視する。

「技術や素材についていくらでも説明できます。しかし最終的に重要なのは体験です。製品は“説明される”ものではなく、“体験される”ものなのです」

ヘッドバンドの頭頂部には「ARTA」の文字が描かれる 

ARTAには音質の異なる2種類のイヤーパッドが付属する。一方はよりウォームでインパクトのある方向、もう一方は解像感と精密さを高めた、よりニュートラルな方向に設定される。それぞれを独立した完成形として成立させるまでチューニングを追い込んでいったという。

写真ではわかりにくいが2種類のイヤーパッドを同梱。「Duo Angled」は音楽のディテールをより深く感じられ、「Slim Alcantara」はリラックスして音楽の親密さを感じたい時などにおすすめ

アントニオ氏は、ARTAの能力を最大に引き出すには「適切なヘッドホンアンプとの組み合わせが重要になります」語る。そのため、付属ケーブルもポータブル用途を主眼とした4.4mmではなく、6.3mmとXLRを用意している。

デスクトップの本格的なヘッドホンアンプで駆動することを想定した、フラグシップ・ヘッドホンとなっているのだ。

日本のファンの声から生まれた「EMPYREAN JAPONIA」

日本市場との関係を象徴するモデルとして誕生したのが、「EMPYREAN JAPONIA」だ。きっかけは、初代「EMPYREAN」の生産終了だったそうで、「EMPYREAN II」へ世代交代した後も、日本のユーザーから「初代のサウンドが欲しい」という声が数多く寄せられたという。

日本向けとしてチューニングされた「EMPYREAN JAPONIA」(550,000円/税込)

そこで日本側からMeze Audioへ、初代EMPYREANの音楽性を現代の技術で蘇らせるというアイデアが持ち込まれた。基本となるCNCフレームや伝統的な銅色のグリルデザインを採用し、ドライバーのチューニングも初代の方向性を尊重。こちらもレザーとアルカンターラ、2種類のイヤーパッドも用意される。

ただし、単純な初代モデルの復刻ではなく、ELITEやEMPYREAN IIなどの開発を通して得られた機構面の改良が取り入れられている。広帯域、高解像度といった技術的進化を背景に持ちながら、より「音楽を楽しく聴く」方向へ舵を切ったヘッドホンになる。

ちなみに、Meze Audioにとって、特定の国のためにチューニングしたモデルはこれが初めてだということ。それだけ日本市場はMeze Audioにとって特別な存在であると言えるだろう。

ジョイント部に「JAPONIA」の文字

アントニオ氏は日本について、「単に製品を販売する市場ではなく、私たちが学ぶ場所でもあります」と敬意を表す。長いHi-Fi文化を持ち、製品品質に対する要求が極めて高い日本は、Meze Audioにとってひとつのベンチマークになっているという。

シンプルさで頂点を目指すハイエンドイヤホン「ASTRU」

そして、Meze Audioの新しい挑戦を象徴するのがハイエンドイヤホン「ASTRU」だ。 ASTRUはルーマニア語で「星」を意味する。

シングル・ダイナミックドライバーを追求したイヤホン「ASTRU」(154,000円/税込)

最大の特徴は、ハイエンドモデルでありながらシングル・ダイナミックドライバーという極めてシンプルな構成を選んだことにある。マルチドライバー型イヤホンが珍しくない現在、Meze Audioはあえてシングルドライバー構成にこだわった。

アントニオ氏は、その思想を「perfection through simplicity(シンプルさによって完成度を極める)」と表現する。ひとつのダイナミックドライバーを高精度に作り込むことで、高い分離性能と、ダイナミック型ならではのオーガニックでフィジカルな音を両立させることが狙いだ。

構成をシンプルにすることは信頼性にもつながる。複数のドライバーを搭載すれば、それだけ長期間使用した際に故障する可能性のある要素も増える。Meze Audioはユーザーサポートから得たフィードバックも踏まえ、シングル・ダイナミックという考え方を積極的に評価している。

シングルドライバーだからこそ、その一基には徹底的に手が掛けられている。振動板のドーム部には、PVD(Physical Vapor Deposition/物理蒸着)によって80層もの金を積層。この工程だけで約48時間を必要とする。

80層を精密に形成することで、硬すぎず柔らかすぎない、理想的な剛性へドームの成形を追い込んでいる。小口径ドライバーでは特に製造精度が重要であり、Meze Audioは用途に合わせた独自の振動板設計を選択した。

ハウジングはチタンのブロックからCNC加工によって削り出されている。チタンを選んだ理由としてアントニオ氏は「サイズと重量のバランスに優れることに加え、人体との親和性が高い」点を挙げる。

さらにシングルドライバー構成によって筐体そのものをコンパクトにできることも重要だ。多数のドライバーを収めるために筐体が大型化すると、音が良くても長時間装着した際の痛みにつながりかねない。ASTRUでは音質と同時にエルゴノミクスを重視し、長時間音楽を楽しめるサイズを追求している。

また二重のワックスガードが設置されていることも特徴だ。「メルセデス・ベンツのマークに似たこの部分がガードとなっています」とアントニオ氏。耳に入れるイヤホンは、汚れが音響フィルターへ入り込み、音量バランスや音質が変化してしまうこともある。二重のガードを設置することで、汚れやホコリがたまりにくいだけでなく、清掃しやすい構造に仕上げているという。

二重のワックスガードで長期間にわたる特性の安定も狙っている

背面の音響ポートについても、単なるデザイン上の穴ではなく、ドライバー内部の圧力と低域特性を調整するための音響設計の一部で、およそ200Hz周辺から下の特性のコントロールに活用されているという。

「必要なものを、可能な限り高い品質で作る」。ASTRUは、現在のイヤホン市場に対するMeze Audioなりの回答と言って良いだろう。

「ヘッドホン」ではなく、音楽を聴くための道具を作る

「ARTA」「EMPYREAN JAPONIA」「ASTRU」、一見すると、それぞれ方向性の異なる3製品であるが、いずれにもMeze Audioの揺るぎない開発思想と誇りが見て取れる。

ARTAは、6年にわたる開発によってデザインと音響技術の双方を新しい領域へ押し進めたフラグシップ。EMPYREAN JAPONIAは、日本のリスナーが愛した初代EMPYREANの音楽性を、現在の技術で再解釈した特別なモデル。そしてASTRUは、複雑化するハイエンドイヤホン市場に「シンプルさ」という価値を改めて提示する。

しかし根底に流れている考え方は共通している。アントニオ氏は、ハイエンドヘッドホンについて「単に機能を提供する製品ではなく、アートを楽しむ文化の一部」と語る。そして、ヘッドホンが人の心を動かさないのであれば、特にハイエンド製品を作る意味はない、とも話している。

創業者の感性からスタートし、70名近い専門家を抱えるメーカーへと成長した現在も、その中心にあるのは「音楽によって人を動かす」という極めてシンプルな考え方なのだ。

(提供:完実電気)

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