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10/25から3ヶ月連続リリース

『ゴジラ』4Kブルーレイのこだわりが本気過ぎる。高画質化や特典映像の裏側を関係者に訊く

公開日 2023/10/21 07:00 編集部:松永達矢
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■パッケージ版マスターは「スタッフの理想を実現」する仕上がりに


───「さらに画質を追い込んで仕上げた」パッケージ用のリマスターについて、放送分からのブラッシュアップした具体を教えていただけますか?

加藤 放送時は主にゴミやスプライスの除去を中心として、その他にもある程度の揺れ止めや、フリッカーの除去などを行いました。ただ、最終的に見ると時間的に手間の掛かる部分が追い込み不足の箇所として出ます。

今回のソフトパッケージ版で得られた時間では、さらなる傷の修復と、窓ゴミ……画面の端についている撮影カメラ由来のゴミを除去しました。シネスコ作品には出がちで、撮影時に生じたゴミなのでフィルムに焼きつけられてしまっています。

左側がレストア前のカット。右側が4K UHDソフト用にレストアを施したもの/『三大怪獣 地球最大の決戦』 © 1964 TOHO CO., LTD.

───グレーディングについては放送時よりも表現の幅を広げる、みたいなことはされましたでしょうか?

山下 放送用マスター作業時は、時間的、予算的にそれなりに制約がある中での作業でしたので、クオリティもそれに準じたものでした。今回のパッケージマスター制作に当たっては、レストアの方でもプラスアルファの手が加わり、放送用と比較して見え方の違いが生じました。そのポイントをチェックした上で、放送用では詰めきれなかったグレーディングなどを、各々の担当作品でクオリティを上げて、完成させています。

───整音作業について放送用との違いはありますか?

森本 まず放送用の音は、レストア用に設けられているラウドネスのターゲットレベルに落とし込んでいるので、そのまま使うことはまずありません。ノイズ除去したのみのデータから、パッケージ用のレベルに作っていくということをやっています。今回のゴジラに限らず、放送用のマスターをベースとしたパッケージ作品を作る際には必ず上記の作業を行っています。

音ネガに記録されている音声は劇場用の音響になっています。今回は販売用なので、劇場用SPL 85dB環境ではなく、家庭用のSPL 79dB環境で同じミックスバランスを維持できるように調整しています。

───ありがとうございます。その他、放送用とパッケージで見え方が異なる点はありますでしょうか?

清水 放送波ですと2:3プルダウン(映画フィルムなど毎秒24コマで記録された映像を、テレビ放送などで用いられる映像信号に変換を行う)で60i/60pに変換した状態でオンエアされているとは思いますが、ソフトでは24pでちゃんと映画と同じ様に観られるというのは大きなポイントです。

■ディスクメディア初収録の映像が“てんこ盛り”。探索で見つかった貴重な映像も


───「シネスコ版 怪獣王ゴジラ 海外版」(HD画質)や、「チャンピオンまつり版」本編、スポニチクリエイツによる当時のニュース映像など、これまでのディスクに収められていない映像がこれでもか、と収録されますが、上記映像を収録するに至った経緯や、フィルムの捜索の逸話など教えてください。

小池 今回は従来のソフトに収録されなかった映像を可能な限りてんこ盛りで入れるということで、東宝の映像部門の方といろいろやり取りしている最中です。作業量が増える為、現場の方を泣かせてしまっていますが、今現在(取材日9月上旬)も作業を続けています。

東宝さんが保管・管理されている旧作映画のフィルム原版を4Kデジタルアーカイブする事業を数年前から始めているのですが、これまで倉庫の片隅で数十年の間、中身を顧みられることが無かったフィルムを4Kスキャンしてどんな映像が収められているのか初めて判明するというケースも多々ありました。こういった作業を長年に渡り地道に続けた結果、映像ソフトの新規特典として世に出せる日が遂に来たという感じです。準備した甲斐がありました……!

左側がレストア前のカット。右側が4K UHDソフト用にレストアを施したもの/『ゴジラ対ヘドラ』 © 1971 TOHO CO., LTD.

清水 『ゴジラ』に収録される「シネスコ版 怪獣王ゴジラ 海外版」(HD画質)は、日映で放送したものをそのまま収録しています。放送時も、日本で唯一残っているプリントをボロボロの状態で放送するか、ボロボロをお手本にして、あらたに復元をするかという議論があったのですが「1本しかない貴重なフィルムを本来の状態で見せましょう」ということで、そのままデジタル化して放送しました。今回の収録もそれに倣う形です。

小池 「シネスコ版 怪獣王ゴジラ 海外版」は日本語字幕スーパーと予告篇を残して画ネガと音ネガが行方不明なのです。現存しているプリントの状態は悪いですが、本作を完全な状態で目にする事が出来る唯一の素材として収録することとなりました。

第1作『ゴジラ』の公開40周年に当たる1994年に発売されたレーザーディスクBOXの映像特典としてシネスコ版の一部シーンが抜粋収録されていたのですが、全長版で映像ソフトに収録されるのは今回が初めてになります。

清水 おそらくその時の素材としたのもボロボロのプリントだと思います。物凄い傷ですとか、コマ飛びとかもあるので、そこも含めてフィルムの醍醐味を味わっていただければと(笑)。

小池 半世紀以上が経った当時のプリントだと思うので、よく今日までジャンクされずに残っていたな……と感慨深くなります。個人的ですが、引き続き散逸してしまった画ネガと音ネガについても捜索を続けています。劇場での公開以降に何らかのタイミングで外国へ渡ってしまっている可能性もありますよね。

次ページ特典作業は絶賛進行中! 収録内容もまだ増える?

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