HOME > インタビュー > 【特別インタビュー】コード創業者/CEO ジョン・フランクス氏。DAVEをさらに“飛躍”させるプロダクトも開発中

Super Scalerと電源を準備

【特別インタビュー】コード創業者/CEO ジョン・フランクス氏。DAVEをさらに“飛躍”させるプロダクトも開発中

2023/02/10 インタビュー:土方久明 構成:ファイルウェブオーディオ編集部
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
CHORD electronics(以下コード)は、1989年にイギリスで創業したハイエンド・オーディオブランド。「DAVE」「Qutest」を代表とするDAコンバーターの高い技術力はもちろん、ULTIMAシリーズのプリ/パワーアンプの独創的な技術にも評価が高い。

同社の創業者/CEOであるJohn Franks(ジョン・フランクス)氏がこの1月に来日。改めて「DAVE」の音の魅力に取りつかれたオーディオ評論家の土方久明氏が、コードのいま、そして今後のラインナップについて伺った。

コードの創業者でありCEOのジョン・フランクス氏が来日。特別インタビューに答えてくれた

COVID-19の期間は「デザイン作業に集中」した奇妙で静かな時間



ーーCOVID-19は、世界中に大きな衝撃を与えました。こうして直接お会いできるようになるまで長い時間がかかりました。COVID-19の期間中、イギリスはどのような状況でしたか? また、ジョンさんはその期間をどのように過ごされていましたか?

土方久明氏がインタビューを敢行

ジョン・フランクス 最初は本当に恐ろしかったです。イギリスでは多くの人が亡くなっていて、世界が止まっているような感じでした。2020年2月には、世界が思った以上に深刻な事態になっていることに気づき、妻と娘を安全な国へ送り出しました。私は、コード社でマーケティングとグラフィックを担当している24歳の息子と一緒に、自宅で孤立して暮らしていました。それはとても奇妙で、しかし非常に集中した静かな時間でした。この期間、私はデザイン作業に没頭しており、その奇妙な時間をとても楽しんでいました。

ーーこの数年間の間に、ヘッドホンアンプ「ANNI」など、いくつかのプロダクトが発表されましたね。コロナ以降の活動について教えてください。

ジョン・フランクス 2021年には小型のヘッドホンアンプ「ANNI」を発表しました。ULTIMAシリーズの技術を投入しながら小型サイズを追求した挑戦的なプロダクトで、驚くほどのパワーとコントロールを実現しました。

ヘッドホンアンプ「ANNI」。アンバランス6.35mmと3.5mmのヘッドホン出力のほか、RCA出力も搭載しスピーカー駆動にも使用できる

その次に、「SUZI」と呼ばれるプロダクトを作りました。今年後半に発売される予定です。これは “レゴ” をイメージしてもらうとわかりやすいのですが、Hugo2や2goのように組み合わせて使用するユニットです。「SUZI Pre」にはフォノイコライザーも内蔵しており、ストリーミングのユニットなどを装着できるものになる予定です。

そしてその後、ミュンヘン・ハイエンドでも発表した「ULTIMA PRE3」に取り掛かりました。最新のシリコンパーツは素晴らしい改良がなされているので、最新のパーツを使ったプリアンプを開発したいと考えたのです。

ミュンヘン・ハイエンドでのコードのブース。「ULTIMA PRE3」が発表され、ULTIMAシリーズのプリ/パワーアンプがすべて出揃った

DAVEをさらに“飛躍”させる新プロダクトを開発中!



ーーDAVEは日本で大ヒットを記録しました。僕もここ数年、多くのDAコンバーターを聴いてきましたが、DAVEは今でも最高の音質を実現するプロダクトの一つと確信しています。発売から7年経ちましたが、DAVEの “次” を期待する声も多く聞こえてきます。何かプランはありますか?

土方氏もそのサウンドに惚れ込んだDAコンバーターDAVEとHugo M Scaler

ジョン・フランクス 私は、DAVEが今でも世界最高性能のDACであると固く信じています。しかし、デジタル・コンサルタントであるロブ・ワッツはさらに先のことを考えているようです。COVID-19の隔離期間中も、彼は自宅の研究室で設計に明け暮れていました。

それは「Super Scaler」です。これはDAVEと同じCHORALレンジの製品です。「DAVE Scaler」という名前も考えましたが、さまざまな議論の末、「Super Scaler」という名前になりました。Hugo M Scalerのようなものですね。それから、さらに別筐体のパワーサプライも考えています。システム全体で3筐体と巨大にはなりますが、DAVEのテクノロジーを飛躍的に高めるものとなっています。

ーーそれはとても楽しみです! いつ頃発売になるのでしょうか?

ジョン・フランクス 色々準備中ですが、おそらく今年中にはお見せできるものがあるのではないかと思います。

ーー半導体などのパーツ不足なども世界的に話題になりましたが、その影響も大きかったのではないでしょうか?

ジョン・フランクス 新しいトポロジーやアイデアが生まれた時、それを他の製品に転用していくことはよくあります。あるプロダクトが発売されてから2年後に他の製品に応用していく、というようなことですが、昨今では半導体の安定した入手が非常に難しくなってしまい、そういった応用がやりにくくなっています。また、アメリカと中国の政治的な緊張関係によって、電源やアンプなどに使用する最新のチップが入手しにくくなっています。早くこの問題は解決してほしいと願っています。

ーー改めてULTIMAシリーズについて教えてください。プリとパワーアンプのラインナップが揃いましたが、ULTIMAシリーズの位置づけや目指す音の方向性はなんですか?

ジョン・フランクス コードのプロダクトは全て、「アーティストが意図した音楽を忠実に再現すること」を意図しています。どのようなスピーカーであっても、私たちのエレクトロニクスは完璧にドライバーをコントロールし、音楽を忠実に再現することができます。

パワーアンプ「ULTIMA 5」。高速アンプテクノロジー「デュアル・フィードフォワード・エラー補正技術」、独自のスイッチング電源により300Wという高い出力を実現している

ーーとある日本のハイエンドオーディオファイルの自宅でULTIMA 5の音を聴きましたが、その駆動力があまりに素晴らしくて感動しました。なぜこれほどの駆動力を実現しているのか、その理由を教えてください。

ジョン・フランクス 電源の重要性もありますが、もうひとつULTIMAテクノロジーの重要な点をお話ししましょう。スピーカーはアンプから信号を受け取るだけではなく、それを保持してアンプ側に戻してきます。そのスピーカーから戻ってくる歪みが出力に影響を与えてしまうのです。ULTIMAでは信号の入出力をモニタリングして、最適な状態になるよう補正を加えているのです。

ポータブルオーディオ機器についてのコードのこだわり



ーーポータブルオーディオ機器についてお聞きします。ポータブルオーディオとハイファイオーディオは、開発チームを分けているのでしょうか。

ジョン・フランクス いいえ、わかれてはいません。ロブを含むデザインコンサルティングチームが密接に連携し、一緒になって技術を進化させています。

ーー日本のポータブルオーディオファンの間では、4.4mmのバランス端子を搭載する機器の人気が高まっています。コードもそういったプロダクトの予定はあるのでしょうか?

ジョン・フランクス 確かに多くのユーザーからそういった要望を受けることはありますが、現段階では考えていません。汎用的なDACチップを設計に使用する場合、同じシリコン基板上にデジタルとアナログが混在しており、歪みが発生する可能性があります。また、バランス回路を作るためには、部品の数が倍になり歪みも倍になってしまいます。我々の独自のDAコンバーターはシングルエンドでも安定したグラウンドを基準にしているため、4.4mmのバランス端子は必要ないと考えているのです。

ーーなるほど。コードのDAコンバーターにはバランス回路は必要ないという判断なのですね。

ジョン・フランクス ロブは本当に素晴らしい専門家でありDACデザイナーです。世界中を探しても、汎用のDACチップを使わずにDAコンバーターを正しく設計できるエンジニアはそう多くないでしょう。ロブはまさにその一人です。

ーーロブさんの今後の活動にも引き続き注目していきます。

ジョン・フランクス 実はこれ以外にも、アナログ関連など準備を進めているプロダクトもあるんですよ。

ーーさらにプランがあるのですか! ますます楽しみです。貴重なお話をありがとうございました。

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE