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「SC-HR2000」スペシャル対談

クリプトン渡邉氏×生形三郎、スピーカーの真価を引き出す「バイワイヤリング接続」の魅力

公開日 2020/02/05 06:30 聞き手:生形 三郎
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国内屈指のスピーカーブランドであり、「密閉型」と「2ウェイ」の思想を貫いてきたクリプトンだからこそ開発できた、バイワイヤリング接続が可能なスピーカーケーブル「SC-HR2000」。ピュアオーディオファンに改めてバイワイヤリング接続による音質的なメリットを伝え、スピーカーの真価を引き出せる方法を普及させるアイテムとして注目度を高めている。

今回、開発を手掛ける渡邉氏に、SC-HR2000の誕生経緯をはじめ、同社の最新スピーカー「KX-5PX」と「KX-3Spirit」との組み合わせによる試聴インプレッション、そしてバイワイヤリング接続だからこそ得られる効果について語ってもらった。


クリプトンのスピーカーからオーディオアクセサリーの開発までを一手に担う渡邉氏。数々の製品開発で培ってきたノウハウが息づいたSC-HR2000の開発秘話を語る

バイワイヤリング接続に対応したスピーカーケーブル「SC-HR2000」。高音質化を図れるだけでなく、手軽にバイワイヤリング接続が可能な点においても、ピュアオーディオファンから注目を集める

“逆起電力”の悪影響を解消するバイワイヤリング接続

生形氏:バイワイヤリング接続は、スピーカー再生のクオリティアップを狙う手法のひとつです。通説として、ウーファーが動く際に発電する電力がトゥイーター側に流れることによって起きてしまう再生音質の劣化を抑える、というメリットが知られていますね。そして、実際の試聴感としても、大きな改善効果を体感できます。まず、この効果に関して、スピーカー開発に一途に携わってきた渡邉さんから、具体的な理論を交えて詳しくお聞かせ頂けますか?

渡邉氏:スピーカーは、100年前から同じ仕組みであり、ボイスコイルに電流を流すとユニットに振幅が起こり、空気に放射することで音が発生します。スピーカーのボイスコイルは、発音機とジェネレーターの役目が一緒になってしまっているため、ボイスコイルのマグネットサーキットの磁界が、音を出すと同時に発電もしてしまいます。

2ウェイ・スピーカーで、トゥイーターとウーファーがネットワークを介して直結している状態では、ウーファー側で発電した信号がトゥイーター側に干渉し、モジュレーションをおこしてしまうことで、音に悪影響を与えてしまうのです。バイワイヤリング接続は、この逆起電力を一度アンプ側に戻し、ショートさせることで、音への悪影響を防げるのが最大のメリットです。

生形氏:バイワイヤリング接続における音質改善のポイントは、スピーカーケーブルを二股にしてその道のりの長さ自体によって逆起電力の影響を遠ざける効果よりも、逆起電力をいったんアンプ側に戻してショートさせる効果が大きいという事ですね。では、渡邉さんのご認識としては、その逆起電力による音質への悪影響は具体的にどれほどのものになるとお考えですか?

渡邉氏:音楽エネルギーにはウェイティングカーブがあり、音楽の周波数ごとに持っているエネルギーが異なります。それを平均化していくと、トゥイーターに掛かるエネルギーは約30%以下。つまり約70〜80%のエネルギーがウーファーに掛かっていることになります。音楽エネルギーが多く含まれているウーファー側で逆起電力が発生すれば、その分だけトゥイーター側に干渉してしまうため、大きく変調を起こしてしまいます。

ウーファー側のボイスコイルから発生した逆起電力は、シングルワイヤリング接続だとトゥイーター側にも信号が入り、モジュレーションを起こしてしまう。この現象によって、トゥイーターの高域再現において正確性を失ってしまう

生形氏:トゥイーターとウーファーのクロスオーバー周波数が低いほど、その逆起電力による音への影響が大きくなってしまいますね。一般的な2ウェイ・スピーカーのクロスオーバー周波数が2〜3kHzと考えたとき、ウーファー側のエネルギーが全体の8割にも及ぶとなると、トゥイーター側に与える音質の悪影響は、かなり大きなものになると言えます。

渡邉氏:逆起電力を打ち消すために、スピーカーのL/Rでアンプが独立しているとベストですが、アンプが独立していなくてもバイワイヤリング接続することで、トゥイーターとウーファーに行く信号を分離させられ、ウーファー側で発生した逆起電力を分離した状態でアンプ側に戻して打ち消せるので、効果は大きいです。近年のアンプなら、アンプ側で逆起電力を打ち消せるほどの出力を持っているので、その点から見てもバイワイヤリング接続で十分な効果が得られます。

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