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『動くオーディオルーム』の実現へ

マツダの理想は“常識”ではないカーオーディオ。なぜそこまで音にこだわるのか?

2019/11/30 構成:編集部 押野 由宇
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ドライビングポジションやヒューマン・マシン・インターフェイス(HMI)、運転視界、オーディオサウンドに最新の知見と技術を導入。これまで以上に人間に寄り添った自然な運転感覚、上質な気持ちよさを感じられるクルマへと磨き上げました。初めて乗った瞬間から、そしてどんなシーンでもあっても、乗る人すべてがクルマの楽しさと心地よい落ち着きに包まれる歓びを届けしたいと考えています。

MAZDA3では、新世代商品の第一弾として、まずオーディオの『理想』を描くことになりました。それが大きな転換点です。再生音量は時と場合によりけり、お客さまの音楽の好みも人それぞれです。となると、音量の大小にかかわらず広い周波数帯をしっかり聴かせられるポテンシャルと、音源に入っている情報を正しく再生できる『原音再生』が必要ではないか。それを、『理想のカーオーディオ』として実現しようという考えに至ったのです。

音響の基本に立ち返り、ゼロベースでクルマの音響性能の最適化を探る、絶好の機会にもなりました。こうして、マツダ独自のスピーカーレイアウトコンセプトによる、「MAZDA HARMONIC ACOUSTICS」が生まれたのです。

MAZDA HARMONIC ACOUSTICSのスピーカーレイアウト

Q.従来のカーオーディオとの違いは?

A.『原音再生』は当たり前。クルマでも音楽はきちんと聴こえている、と思われるかも知れません。でも実際は異なります。この課題を、低音域と中高音域に分けて解決しました。

低音域は音量との関係、いわゆる「ダイナミックレンジ」が課題でした。小音量で低音が埋もれてしまう原因はロードノイズなどによるもので、これは静粛性を担当する車両開発本部のNVH性能開発部が解決してくれました。

低周波領域でダイナミックレンジを改善

一方、大音量でも物足りないと感じる原因については、車室内の音響特性を解析しました。すると、フロントドアは『低音域の特定の周波数範囲が鳴りにくい場所』であることが判明。これまでの『常識』が覆された瞬間でした。それならばよく鳴る場所にと、低音域のスピーカーをより前方の、カウルサイドに移動させることにしました。また、ドア部の大きな穴が無くなったことにより、NVH改善にも貢献しました。

低音域のスピーカー位置を移設するという大胆な設計が行われた

中高音域では、音源の情報を正しく再生できるよう、スピーカー位置をインパネの上からフロントドア上部に変更しています。「これまではフロントガラスに音を当てて、反射音を主に聴かせていました。ただし、すべての音が均一に反射されるわけではありません。

また、この反射音は、ホールなどのゆったりとした弱い反響・残響と異なり、ごく僅かに遅れる強い音。これを人間は『一つの音』のように捕らえるのですが、厳密にはスピーカーから発する直接音と混ざることで濁って聴こえている状態です。そして人間は、中高音域の聴こえてくる方向を感じやすい特性があります。現在は多くがステレオ音源ですが、反射音では左右のバランスも曖昧になってしまいます」。

「MAZDA HARMONIC ACOUSTICS」ではスピーカーレイアウトの変更により、直接音を主に聴いていただけるようになりました。音響の基本からゼロベースで追求したからこそ、結実できたと考えています。

中高音域のスピーカーも移設している

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