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新設計ドライブ、完全自社設計チップを搭載

エソテリックの旗艦トラポ&DAC「Grandioso P1X/D1X」。その画期的な技術を開発担当者が語る

2019/08/16 鈴木 裕
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鈴木 VRDS-ATLASはコスト的にはどうなんですか?

加藤 飛びぬけて高いですね。

鈴木 下位の機種には載せられないですか?

加藤 鋼鉄にしてもアルミにしても切削加工品をやめて、金型化して鋳造品を使う、というようなことは漠然とは考えていますが、どうでしょう。

右が新しいGrandioso P1Xに搭載される「VRDS-ATLAS」。P1に搭載されていた「VRDS-NEO」(左)と比べ、一見して大きく頑強となっていることが分かるだろう。メカニズム単体質量で27%増え6.6kgに、ターンテーブルブリッジ質量としては10%増え1.8kgとなっている。さらに低重心かつワイド設計により、より進化した振動モード・コントロールが施されている

電流伝送にフォーカスするとDACも大きなサイズが必要

鈴木 そしてGrandiosoD1X、いよいよディスクリートですね。基板を見ているだけで興奮します。

加藤 電流伝送であるES LINKアナログとか、電流というところにフォーカスしてみると、やっぱりしっかりした電源部と、たっぷり電流を流せる太い道が必要で、じゃあDAC部も好きな大きさで作るといったい何が起こるのか? っていうのがスタートでした。世の中にディスクリートでやっているメーカーさんがいくつもあるので、しっかりやればできるんだろうなって(笑)。

鈴木 やってみてどうでしたか?

加藤 DACチップを作られてる方のご苦労っていうのは見えてきました。逆に、チップ屋さんは困ってるけど、僕らは大きく作れるので、やりやすいこともありました。

鈴木 基板の上にサークルがあって……。

町田 そうですね、最初は見た感じからいろんな名前を考えました。鳥が羽根を広げているようにも見えるのでフェニックスDACとか。でも最終的にはマスター・サウンドが大事、という我々の哲学を表す、シンプルな名前にしました。

Grandioso D1Xに搭載される「Master Sound Discrete DAC」。斬新なデザインが施されていることが分かるだろう。抵抗やロジックIC、パワーサプライなどの各コンポーネントも、1つのエレメントに対し、1回路ずつ奢り、まさに贅沢に電流を流せるものを目指している

高解像度化していくと明らかに違いが出てくる

鈴木 64bitの高解像度って、すごいですね。

加藤 FPGA(プログラムできるLSI)のおかげです。よくご批判を受けるのは、アナログのノイズフロアより下の話をいくらがんばったって、差は出ないでしょうと。でも出そうしてきちんとやっているのと、どうせ出ないんでしょう、と切り捨てるのと結果は違うように感じています。そもそもCDプレーヤーって16bitですけど、24bitとか32bitを作ってみたら、明らかに違いが見えたんですから。

町田 数字が一人歩きしてはいけないんですが、ぜひ音を聴いて判断してほしいです。

鈴木 中身はフルモデルチェンジと思いますが、外側のデザインを変えなかった理由は?

町田 すでに完成されたデザインなので、あえて変える必要はないと考えました。末永く使っていただくことがフラッグシップモデルでは特に重要だと考えています。

鈴木 とにかく早く試聴をしてみたいですね。ありがとうございました。

Grandioso D1Xの内部を開発陣と共に確認する鈴木氏。内部の構造、基板、配線など大幅に変更され、前モデルとは全く別物となっている。もちろんその他、細かい変更が加えられているのは、言うまでもない

次ページ対談を終えた鈴木氏はこう語る

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