完全自社設計DACによる新たな表現

演奏に込められた躍動感とエネルギー全てを引き出す − エソテリックが極めた最高峰DAC「Grandioso D1X」レビュー

山之内 正

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2019年09月05日
日本が誇る最高峰オーディオブランドとして、その地位を揺るぎないものとするエソテリック。同社のデジタルオーディオへの挑戦は、1987年にCDトランスポート「P-1」と共に発売されたDAコンバーター「D-1」から始まった。今回紹介する最高峰シリーズのDAコンバーター「Grandioso D1X」の注目は、初搭載となる完全自社設計のディスクリートDACだ。エソテリックが30年以上にわたり追求してきた、デジタルオーディオへの「解答」は、どのようなサウンドなのか?本記事ではその全貌を探る。

エソテリック モノラル筐体採用DA コンバーター「Grandioso D1X」¥3,500,000(ペア/税抜)

「エソテリックの音」を追求し、完全自社設計のディスクリートDACを新搭載

早い段階からセパレート型ディスクプレーヤーの開発に力を注いできたエソテリックは、メカトロニクスとデジタルオーディオの両分野で技術とノウハウを蓄積し、確実な成果を生み出してきた。近年では2013年に発売したGrandiosoシリーズがひときわ高い到達点を示したが、それから6年が経過した今春、シリーズを象徴する「P1/D1」のモデルチェンジに踏み切る。

今回の更新は、これまでで最大級の飛躍を狙っており、リファインというより完全な新製品と呼ぶ方がふさわしい。VRDSメカニズムを16年ぶりに新規設計した「P1X」も話題を呼んでいるが、ここではエソテリック渾身の作と呼ぶべきDAコンバーターのフラッグシップ「D1X」に注目して紹介したい。

D1Xの対となるSACD/CDトランスポート「Grandioso P1X」(写真右/価格3,500,000円・税抜)も登場

エソテリックは、単体DAコンバーターや一体型ディスクプレーヤーに旭化成エレクトロニクス(AKM)のDACを採用してきた。その歴史はすでに10年におよび、デバイスメーカーとオーディオメーカーのコラボレーションとしては異例とも言うべき成果を上げてきた。

AKM製DACの強みである32bit処理のメリットを活かしつつ、PCM信号のアップコンバート(RDOT)やDSD変換、ES-Linkなどエソテリック側も相次いで独自技術を投入し、両者の相乗効果で高評価を得てきた。

今その次のステップに進むため、エソテリックは思い切った決断を下す。DAC回路を全て自社で設計するというアプローチだ。海外のハイエンドメーカーでは複数の採用例があるが、国内メーカーではマランツが「SA-10/12」で取り組んだぐらいで、単体の、しかもモノラル構成のDAコンバーターでは例がない。「エソテリックの音」を妥協なく追い込むために、難題にあえて挑戦する道を選んだのである。

2基のFPGAと物量の投入。信号処理は64bitへ

開発に2年を要した「Master Sound Discrete DAC」は、その名が表す通り、2基のFPGAを核にしたディスクリート構成の大規模な回路として日の目を見ることになった。最初のFPGAはアップコンバートやDSD変換など前処理を受け持ち、2つめのFPGAにはΔΣ変調方式の独自アルゴリズムを組み込んで後段のDAC回路を制御する。

最大の注目点がエソテリック初の完全自社開発ディスクリートDACの搭載。基板そのものにはMELF抵抗やロジック素子など厳選パーツで構成された32組のエレメントを2つの円形形状に配置。デジタル信号処理の精度を徹底的に高めたという

この2つめのFPGAを中央に配した横長の基板が、DAC回路の心臓部だ。FPGAの両側にはMELF抵抗とロジック素子(フリップフロップ)を組み合わせた、8エレメントの半円形ディスクリートDAC回路が差動構成で計4回路並ぶ。

見た目にも巨大な基板。FPGA内部での信号処理は64bitに拡張

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