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KEF Music Laboratoryの音響監修も担当

「完全な点音源」で原音再生を可能に − KEFの技術トップがUni-Qドライバーや最新スピーカーを語る

公開日 2019/08/05 14:53 編集部:小澤貴信
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第12世代ではエアフローを改善。さらなる高音質化を実現した

ブラウン氏 さて、第12世代のUni-Qドライバーでは何が進化したかですが、Uni-Qはその構造上、トゥイーターとミッドレンジの間に“隙間”が必要となります。従来のUni-Qでは、この隙間に高域の音波が逃げて、ボトルの口を吹くときのような共鳴が起こり、音色に影響を与えてしまうという課題がありました。

最新の第12世代Uni-Qドライバーを初搭載した新Rシリーズ

第12世代では、この隙間がどのような影響を与えているのかを詳細に解析し、その結果を踏まえて制振材料を配置することで、共鳴を排除することに成功しました。この変更による効果は測定値としては微量ですが、聴感ではかなり大きなものと言えます。

ミッドレンジ部についても、磁気回路を新規開発して歪をさらに最小化させたり、上位モデル「Reference」から継承したコーンネック・デカップラーを用いることで、スムースなレスポンスを実現させたりといった改良を加えています。また、Uni-Qの周囲にはZ-flexではなく、こちらもReferenceで開発されたシャドウフレアを用いています。これにより、ウェーブガイドの効果を高め、キャビネットによる回折の影響を最小限に抑えています。

ーー KEFはユニットを自社で開発できる数少ないスピーカーメーカーだと思います。スピーカーを開発する上で、ユニットを自社開発できることはやはり大きな強みでしょうか。

ブラウン氏 もちろんその通りです。KEFのスピーカーは全てを手塩にかけて開発・製造することができるのです。長年にわたる研究の成果が、隅々にわたるまで生かされています。

ブラウン氏はUni-Qドライバーについて、改めて詳細を説明してくれた

ーー KEFのスピーカーというと、やはりUni-Qドライバーがまずその特徴として挙げられますが、Uni-Q以外で、ブラウンさんが考えるKEFの特徴的な技術とはどのようなものでしょうか。

ブラウン氏 強いてひとつを挙げるなら、キャビネットですね。原音再生のためには、キャビネットの影響によるカラーレーションを徹底して排除する必要があります。そのために、キャビネットを堅牢にするだけでなく、ブレーシングや制振材を活用して不要振動を効果的に減衰させています。ここでもコンピューター・シミュレーションを活用しています。

ーー KEFは近年、LS50 WirelessやLSXに代表されるような、エレクトロニクスを一体化したアクティブスピーカーを手がけています。これらのモデルではDSPを活用してタイムアラインメントや位相制御を行っているとのことですが、今後こうしたアプローチはハイエンドモデルにも広げていくのでしょうか。

ブラウン氏 現時点で詳しく話すことができませんが、そのようなアプローチももちろん検討しています。

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