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「Pro IEMシリーズ」開発の裏側

参入3年目、これから「Fenderのイヤホン」が向かう場所とは?

公開日 2018/11/16 07:00 インタビュー/構成:佐々木喜洋
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マー氏 Thirteen 6は、少し毛色の変わったビースト(怪物)と言いましょうか。例えばスマホで軽く聴き流すとその真価は分からないかもしれませんが、バランスケーブルに付け替えて高性能なDAPなどを使ってパワーを上げると、まるでランボルギーニのスポーツカーのような、高性能な正体を現します。必ずしも能率が低いわけではありませんが、良さを引き出すには駆動力が必要なので、最高の機材を揃えたオーディオファイルにお勧めしたいところです。

ーー なるほど、ありがとうございます。最上位モデルのThirteen 6について、もう少し詳しく教えてください。今回φ13mmと大きな振動板のドライバーを採用していますが、その理由はなぜでしょうか?

マー氏 NineとNine 1ではFXAシリーズのダイナミックドライバーを使っていて、これは今でも優れていると考えています。Pro IEMシリーズではさらに、他にはないスーパースポーツカーのような製品を作りたいと思い、新たなダイナミックドライバーを開発しました。

最上位モデル「Thirteen 6」は、“スーパースポーツカー”のような存在を目指して開発したという

今回開発したHDD(HIGH DENSITY DYNAMIC)ドライバーでは、マグネシウム-チタン合金の振動板を採用しているのですが、マグネシウム-チタン合金というのは非常に硬くて変形しにくく、また密度が高いので非常に反応が速いです。つまり、より正確に鳴らせるようになっています。

またダイナミックドライバーでありながら、BAドライバーのように鳴らすことができます。実はここが一つのキーポイントです。

ーー 「ダイナミックながらBAドライバーのように鳴らす」というのは、どういうことですか?

マー氏 我々はAurisonics時代から、ダイナミックドライバーとBAドライバーのハイブリッド方式に着目してきましたが、それにはダイナミック方式とBAドライバー方式を自然に融合させる工夫が重要になります。

独自のHDBA(HYBRID DYNAMIC BALANCED ARMATURE)ドライバーも、ダイナミックドライバーの特性に合うようにキツさを抑えた設計がなされています。BA型のように鳴るダイナミック型のHDDドライバーと、ダイナミックドライバーと組み合わせて違和感ないHDBAドライバーを組み合わせることで、理想のハイブリッド構成が実現できたわけです。もちろんこれには技術だけではなく、目標とする音を実現できるような設計理念が必要です。

ーー HDBAドライバーについては中域と高域に加えて、“超高域”に採用していると説明されていますが、高域と超高域の違いは何でしょう?

マー氏 サウンドの全体バランスを考えた際、HDDドライバーの低域再生力が強いのでそれと釣り合わせるため、高域のさらに上を担当する、超高域BAドライバーが必要だと判断しました。

ーー 続いてポート(ベント)について伺いたいと思います。元々FXAシリーズでは「Grooveチューンドポート」と称していましたが、新しい「APEポート」とはどこが違うのでしょうか?

マー氏 FXAシリーズでは背面に一つのポートしかありませんでしたが、Pro IEMシリーズでは背面のポートに加えて、その反対側に新たにAPEポートが設けられています。これはマイクのポップガードに使われる技術を応用したもので、耳内の圧力を均等化(イコライズ)しつつ、低音のロスを最小限に抑えています。


新たに採用した「APEポート」はイヤホン内側に装備
これによって低域がより引き締まって、音場の広がりが良く、ダイナミックドライバーをより効率的に動かすことができるようになりました。

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