HOME > インタビュー > “上級機超えの進化”の要はカスタムパーツ − デノンHi-Fi入門機「800NE」を音質担当が解き明かす

サウンドマネージャーがその音作りを語る

“上級機超えの進化”の要はカスタムパーツ − デノンHi-Fi入門機「800NE」を音質担当が解き明かす

2018/11/02 編集部:小澤貴信
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
ニュートラルな音を追求すれば、あらゆる音楽ジャンルに対応できる

ーー 山内さんは試聴会やイベントなどで、いわゆるテクノや電子音楽といった文脈の音楽も積極的にデモで用いられている印象です。山内さんは普段プライベートでもこうした音楽を聴かれるのでしょうか。

山内氏 電子音楽やテクノ、ハウス系、ミニマルやアンビエントといったジャンルもよく聴きます。クラシックでも現代に近いものが多いでしょうか。ただ、音楽を楽しむ上で重視しているのは、スリルみたいなところだと思っています。展開の面白さや、演奏の緊張感や感情、圧巻のサウンドスケープとかいう部分ですね。

DCD-800NE

ーー 音楽の話を伺ったところで聞いてみたかったのが、特にエントリー向けのオーディオ製品をチューニングする上で、「れこはロック向き」「これはクラシック向き」といったようなジャンルを意識したチューニングというのは行われたりするのかということです。

山内氏 そこは率直に言って全くないですね。

ーー 基本的にどのようなジャンルでも、ビビットでありスペーシャスであれば素晴らしいサウンドが実現できるということでしょうか。

山内氏 その通りです。具体的な例を挙げるとすると、クラシックと打ち込み系や電子音系を比べるとそこには共通点があります。現れ方が少し異なりはするのですが、クラシックならコンサートホールの空気感や楽器の配置というものが、電子音系であれば音源の点在の仕方やパンニングの動きという要素に置き換えられます。

ですから、クラシックにおいて空気感や楽器の配置が上手く再生できれば、打ち込みや電子音系の音楽も上手く再生できる。このように相関があると考えています。また、ロックやジャズで言えばレスポンスや立ち上がりが重要になりますが、それはもちろんクラシックでも電子音楽でも重要なものです。

開発過程ではジャンルによってある部分が強調されてしまうということがあるのですが、最終的には全ての音楽ソースを再生するためにニュートラルな音にしないといけません。しかも、曖昧にして無難に全部こなすというものではなく、エッセンスがどれもちゃんと出てくるようにしなければいけません。そうしたレベルに持って行けるように常に心がけています。

DNP-800NE

ーー 800NEシリーズの話に戻れば、こうしたニュートラルかつエッセンスを引き出すということは、これらの製品でも実現できたということでしょうか。

山内氏 もちろんコスト的な限界はありますが、高いレベルでそうした要素を実現できたと考えています。

ーー 800NEシリーズについては、どのくらいのサイズのスピーカーを組み合わせることを想定していますでしょうか。プリメインアンプのPMA-800NEはかなり大きなサイズのスピーカーも鳴らせてしまう印象です。

山内氏 開発時にはDALIやB&Wのコンパクトスピーカーなども組み合わせて確認しながら、音質チューニングを行っています。ただ、アンプの話でいえば、個人的にはドライブ能力をひたすら追求するという感じではないですね。仕上げていくうちに、少しずつ付帯音がなくなってより自然な表現力を備えていき、ドライブ能力も獲得されていくというイメージです。ニュートラルであること、ビビットやスペーシャスを追求していくと、自然と駆動力も備わっていきます。

ーー 800NEシリーズの価格帯で、NEシリーズとしてのサウンドを楽しめるのは、ユーザーにとっても大変素晴らしいことだと思います。

山内氏 実際に聴いていただいた方の中でも、「このクラスでこういう音はない」「細かい部分がどうのというより、音の出方がちがう」といった評価をいただいています。そのような評価をいただけたことは非常にありがたいです。

ーー オーディオファンのみなさんにも、このような800NEのサウンドをぜひ店頭などで確かめていただきたいですね。本日はありがとうございました。

前へ 1 2 3

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE