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サウンドマネージャーがその音作りを語る

“上級機超えの進化”の要はカスタムパーツ − デノンHi-Fi入門機「800NE」を音質担当が解き明かす

2018/11/02 編集部:小澤貴信
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ーー カスタムパーツについては、具体的に「このようにしてほしい」といった要望を出しながらメーカーにオーダーするというかたちなのでしょうか。

山内氏 そうですね。だたし、試聴と試作を繰り返して仕様を追い込んでいくので、最終的なパーツが完成するのに、長いものだと半年以上かかる場合もあります。

ーー パーツひとつに半年ですか・・・。

山内氏 「このように修正してほしい」と要望を出しても、必ずしもその通りにならない場合もあり、結果として何度もトライを繰り返すことになります。ただ、私はこうした方法をサウンドマネージャーになる前、設計を手がけていた頃からとっていまして、妥協しないでパーツを作りこむことが後で必ず活きてくることを分かっています。

フラグシップ「SX1」から継承されたパーツも多数搭載。写真はカスタムコンデンサー

また、私の場合はカスタムパーツを特定のモデル専用で起こすというよりは、他の新しいラインナップや次世代モデルなどを視野に入れながら開発しています。800NEについても、それ自体では新しいパーツはそれほど作っていませんが、2500NEや1600NEで開発したカスタムパーツは数多く投入しています。

PMA-800NE

このようにカスタムパーツは、その製品だけでなく次のモデルにも繋がっていくことなのです。ですから製品それ自体をチューニングするのと同じくらいの比重で、カスタムパーツの開発に力をかけている、そう言っていいところがありますね。

サウンドマネージャーが一貫して追及する「ビビット」と「スペーシャス」

ーー デノンのHi-Fiコンポーネントにおけるサウンドコンセプトについても改めてお伺いしたいです。山内さんはサウンドマネージャーに就任して以来、「ビビッド」と「スペーシャス」というコンセプトを一貫して掲げてきました。その点は800NEでも同様かと思いますが、改めてその詳細について教えていただけないでしょうか。

山内氏 そもそもなぜこうしたコンセプトを掲げたのかということなのですが、サウンドマネージャーが交代したときに、当然ながらサウンドチューニングの上での優先度は変わってきました。社内において、そのことについてやはり明確に説明しなくてはいけないということになったのです。率直に言って私自身は少しずつ伝わっていけばよいと、言葉で音質を定義するということはあまり考えていませんでした。


ーー しかし、実際には音の方向性が変わったと感じる方は多かったと思います。私自身、サウンドの傾向は大きく変わったと感じました。

山内氏 そういった反応に対してわかりやすい言葉で説明する必要があったのです。いろいろな言葉を並べると本質がぼやけてしまう中で、最終的には「スペーシャス」と「ビビット」という言葉に、私にとってのサウンドコンセプトすべて集約できると考えるに至りました。

ビビットという言葉は多様な意味を含んいます。先ほどお話ししたトランジェントやスピード感、フレッシュさ、スケール感、透明感・・・そういったものが全て含まれています。スペーシャスは言葉の通りですが、サウンドステージやステレオイメージ、空間情報を意味しています。冒頭で申した私の考えるハイエンドサウンドには、この2つが必須なのです。

ビビットとスペーシャスがなぜ重要なのかは、その反対の音を聴けば誰もが納得するのではないでしょうか。究極を言えば音楽の持つダイナミズム、臨場感を再現するために、ビビットとスペーシャスが必要だということです。生音により近い音を再生するために欠かせないものとして、この2つのキーワードを掲げたということですね。

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