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<山本敦のAV進化論 第147回>

ソニーのコミュニケーションロボット『Xperia Hello!』は「スマートスピーカーの先を目指した」

公開日 2017/10/31 10:00 山本 敦
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倉田氏は将来、Hello!が「ユーザーとの関わりを記憶する」こともできるようにしたいとコメントしている。現在は発売時にユーザーが「設定」アプリから登録したプロフィール情報をもとに、家族を識別したり、それぞれに最適な情報を知らせてくれる仕様だが、今後はアップデートによってそれぞれのユーザーと話した内容をHello!が記憶として蓄積し、続きの応答を返すような学習型のコミュニケーションに対応することも視野に入っているという。

ユーザーにとっての「これ」や「あれ」が何かを操作履歴のパターンから類推したり、ユーザーモデルをより正確に構築しながら次の一手が読めるようになれば「技術的には可能」と、倉田氏の言葉から自信が伝わってきた。

Hello!には大きな「伸びしろ」も確保されているようだ。発売時点ではまず「コミュニケーションロボット」としての立ち位置を明確にするため、あえて機能を絞り込んでいると、倉田氏、城井氏は繰り返し語っていた。例えばメッセージはLINE、ビデオ通話はスカイプという立て付けも、それぞれに現在最も多くのユーザーに親しまれているアプリサービスであるという理由から選ばれただけなので、今後はユーザーからのフィードバックを受けてサービスを変更したり、建て増しすることも十分に可能できるようだ。

ソニー製、あるいは他社の家電機器をHello!で動かしたり、インターネット経由で提供されるサービスにアクセスして、Hello!と会話しながらショッピングも楽しめるようになれば嬉しいが、ソニーモバイルから公式に伝えられているものはまだない。ただ、今回お二人にインタビューした際の反応から察する限りでは、今後色々な機器連携にも発展していく可能性は十分にありそうだと勝手な期待を抱いてしまった。

実際に昨年のIFA2016では、Xperia Agentの時代にネスレのスマホにつながるコーヒーマシン「バリスタi」との連携もプロトタイプのデモとして披露していた。またソニーのグループ会社であるヴィジョンアーツとの共同開発による「受付サービス」の実働試験は、2018年にはソニー内のオフィスにもフィールドを広げながら実施されるそうだ。ソニー・ライフケアとの協業により、高齢者のためのコミュニケーションツールとしてHello!を活用する実証実験も2018年に始まる。これらの実験の結果を踏まえて、Hello!を企業のニーズに合わせて機能をカスタマイズしたうえで提供するビジネスモデルも開拓したいと倉田氏が語っている。

Xperia Hello!は様々なシーンで活用できるが、そのニーズも含めて検証・開拓が進められているという

スマートスピーカーよりもっと先を目指したデバイス

Hello!はソニーストアでの販売価格が149,880円(税別)と、なかなか高価なデバイスである。中の技術を知るとバリュープライスであることはわかるのだが、メインターゲットとしているファミリー層の家計を握るお母さんを説得するのは特にひと苦労だろう。

だがもし将来、例えばHello!の「声」などをユーザーの好みに合わせて「カスタマイズ」できれば話は変わってきそうだ。Hello!には生声と、東芝の音声合成ミドルウェア「ToSpeak」を組み合わせたハイブリッド型の音声発話エンジンが搭載されている。日本語による音声発話は抑揚がとても滑らかで聞きやすい。

こちらは前回「バーチャルアナウンサー・沢村碧」を取材した時に紹介してもらった「中間言語」の記述など、生声と音声合成をシームレスに組み合わせるためにソニーモバイルが蓄積してきたノウハウの賜物だ。城井氏も、生成された応答コマンドを「どう自然に読ませるか」については長い時間をかけて練り上げてきたと語っている。

もし人気の声優を“声の主”に起用したオリジナル版が発売されたら、声優やキャラクターのファンを中心に大きな話題を呼びそうだ。またはカラーバリエーションであったり、ジェスチャーや方言などがカスタマイズできるだけでも、相棒としてのロボットにますます愛着がわいてくるだろう。

「まずはHello!がどんなデバイスで、何に使えるのか、世界観の方からプレーンにお伝えすることが大切と考えてスタンダードなかたちでまとめました。でも当然、カスタマイズに対するお客様からの要望は出てくるだろうと予想していますし、私たち開発する側もどんな要素があるのかは常に模索してきました。今後どれをカスタマイズできる項目としてオープンにするべきなのか、反響を見ながら検討していきたいと思います」(城井氏)。

Xperia Hello!が家族の一員となるよう、開発者としても願っていると2人は語る

「Hello!は応答を返す際にユーザーのプロフィール情報も参照しています。これだけでもカスタマイズの第一歩を踏み出していると考えることもできると思います。お客様のもとで一緒に生活していると、“うちの子がかわいい”という愛着が生まれるだろうし、開発者である私たちもそうなって欲しいと思っています。条件や育て方でHello!の成長が変わっていくようなイメージも持っています。長く付き合うほどにキャラクター性が生まれてきて、その理由がユーザーにもわかれば、家族の一員としてますます魅力的になるはずです。Xperia Hello!はスマートスピーカーよりもっと先端の製品を目指して開発したデバイスです」(倉田氏)。

先ほども述べたが、倉田氏のコメントからは、Hello!にはまだ沢山の伸びしろが残されていることが見え隠れする。ソニーが独自に取り組んでいる「ソニーエージェントテクノロジー」や、音声合成、センサーの技術の深淵の一端に、Hello!を通じて触れることができ、これから「ソニーらしさ」をスパイスに効かせたスマートプロダクトが次々と生まれる期待が膨らんできた。

Xperia Hello!は発売当初、家電量販店やソニーストア、ソニーのオンラインショップなどで販売される。購入の負担を少しでも軽減するため、通信キャリアと組んでスマホのように月々サポートを合わせて月賦で購入ができるようになればありがたい。ソニーモバイルは東京電力エナジーパートナーと組んでスマートホームサービス「TEPCOスマートホーム」を展開しているので、機器をリースのような形で試せる機会があればHello!の魅力が多くのファミリー層に受け入れられると思う。

まずは全国のソニーショールーム、ソニーストアやイベントでXperia Hello!がどんな製品なのか、ぜひ体験してみることをおすすめしたい。

(山本 敦)

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