HOME > インタビュー > SHURE「KSE1500」開発者インタビュー。8年かけたのは「最高のイヤホン」を作るため

驚愕のコンデンサーイヤホンシステム

SHURE「KSE1500」開発者インタビュー。8年かけたのは「最高のイヤホン」を作るため

公開日 2015/10/23 17:25 文:高橋敦/聞き手:岩井喬・高橋敦
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
ティザー展開を経て昨日発表された、SHUREのコンデンサ型イヤホンシステム「KSE1500」(関連ニュース)。その内容に大きな驚きを覚えた方は多いことだろう。昨日の発表会、明日からの「ヘッドフォン祭り」のために、SHUREのイヤホン・ヘッドホンの企画・開発を担うキーマンが来日。インタビューすることができた。

メンバーは日本でもおなじみのお二人、カテゴリー・ディレクターのマット・エングストローム氏、プロダクト・マネージャーのショーン・サリバン氏に加えて、オーディオ・エレクトロニクス・デザイン・エンジニアのアルジュン・クリシュナクマー氏だ。また、さらにタイミングよく、当サイトでもおなじみオーディオ評論家の岩井喬氏も同席した。

右からカテゴリー・ディレクターのマット・エングストローム氏、プロダクト・マネージャーのショーン・サリバン氏、オーディオ・エレクトロニクス・デザイン・エンジニアのアルジュン・クリシュナクマー氏

以下の記事は我々聞き手側の発言を「ーーー」、SHURE側メンバーの発言を「SHURE」と整理し、筆者・高橋が整理した形でお届けする。

ーーー 昨日の発表会によると、この「KSE1500」の原型は8年も前に提示されたもので、そこから開発を続けていたそうですね。

SHURE ご存知のように我々はマイクブランドでもあるのですが、あるときあるエンジニアがコンデンサー型マイクの振動板を流用し、無理やりイヤホンの形にした奇妙なものを持ってきたのです。

インタビューの様子

その音を聴いて、無視するべきではない可能性を感じ、本格的な開発を進め始めることにしました。基礎研究における技術者個人個人のそういったチャレンジを奨励しそれを拾い上げていくことは、SHUREという会社の伝統でもあります。

SHURE「KSE1500」

ーーー KSE1500の開発自体は「SE846」の開発より前から始まり、そして並行して進められていたということは驚きです。

SHURE 実はSE846発表時のプレゼンや発表会で訪れた会場近くのホテルで、このシステムのプロトタイプを聴いていたりしたこともありました。全く新規の、2つのハイエンドモデルの開発を並行して進めることは大変な経験でしたね。

SE846は最高のBAイヤホン、KSE1500は最高のイヤホン

ーーー 「SE846を超える次のハイエンド」として開発したというわけではないんですね。

SHURE はい。SE846は現時点でもSHUREの考える「最高のBAイヤホン」です。そしてKSE1500はそれとは全く別のコンデンサー型の「最高のイヤホン」として提供するものです。そのさらに前の世代のハイエンドである「SE535」を超えるべき目標として、それぞれ別のアプローチで並行して進められたふたつのプロジェクトが「SE846」と「KSE1500」に当たります。

ーーー その「全く別」である最大のポイントはもちろん「コンデンサー型ドライバーの採用」です。コンデンサー型という発想のきっかけは、一人のエンジニアのアイデアとのことですが、イヤホンの進化の方向として、近年ではBA型ドライバーを12基とかそういうレベルで多数搭載するという手法も提案されています。SHUREがそちらの手法を採らなかったのはなぜですか?

次ページマルチBAドライバーではなくコンデンサーに挑戦した理由

1 2 3 4 5 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

トピック: