HOME > インタビュー > 記事

インタビュー

ピュアオーディオでも新たな価値訴求に挑む

Astell&Kernで強い存在感を示すアユート。今後の展望を渡辺慎一社長に聞く

Senka21編集部
2015年07月03日
ハイエンドポータブルプレーヤーのブランドAstell&Kernで高い存在感を示すアユート。PCパーツ、オーディオ製品の総合商社である同社の展望を、渡辺社長が語る。

株式会社アユート 代表取締役社長 渡辺慎一氏

音の良さにこだわりコト提案で楽しさを広げる

 —— 御社、また渡辺社長ご自身についてご紹介いただけますか。

渡辺 私は当初、半導体の商社で産業用機器や8ビットのマイコンなど民生機器のメーカー向けセールスに従事しました。Dos/V PCの自作ブームであった1996年にPCパーツの代理店であるシネックス(現テックウインド)に入社してプロダクトマーケティングの仕事をさせてもらい、目をつけた商材が世の中に広がっていく面白さを知ったのです。

2005年にテックウインドがMCJ(マウスコンピュータージャパン)グループの傘下になりました。グループ内のメーカーや商社、メディア事業などの企業再編で、私がMVKというアユートの前身である会社を預からせていただくことになりました。もともとMVKは、パソコン工房などを運営するユニットコムという企業の子会社で、海外製品の調達部門でした。私が代表として着任したのが2013年4月、その後テックウインドの傘下となり、2014年に社名をアユートとしたのです。

 —— オーディオ製品のお取り扱いのきっかけは?
 
渡辺 MCJグループのひとつに、マウスコンピューターのオーディオ製品を取り扱う部門として機能していたアイリバージャパンがありました。グループの企業再編でその中の代理店業務が分かれることになり、私が手を挙げて引き継がせていただいたのです。
 
アイリバーの取り扱うMP3プレーヤーはメジャーな存在でしたが、スマートフォンの台頭で新たな存在感を示す必要がありました。そこで2012年10月に登場したのが、高音質プレーヤーの初代機Astell&Kern「AK100」です。高額な製品で、市場は当初懐疑的でしたが、私自身は高音質再生に特化したプレーヤーとして存在感を示せると見て、MVKでやってみたいと思いました。社名もアユートに変え、我々にとってPC依存を脱する決意表明としてもしっかりやっていこうと。これがオーディオ商品を直接取り扱うことになったきっかけでした。
 
それからの1年間、私自身も試聴会には可能な限り参加し、お客様や販売店様と直接お話しさせていただきました。こういう人間がバックグラウンドにいる会社だということ、我々が真剣にオーディオに取り組んでいるということは、少しでもご理解いただけたのではと思います。
 
—— 現在のオーディオでの製品展開は。
 
渡辺 アイリバーの高音質プレーヤーAstell&Kernブランドをオーディオ事業の軸として、ポータブルプレーヤーをタテ方向に展開してきました。その後市場にさまざまなハイエンドプレーヤーが出るようになり、おかげさまでその中でもAKシリーズはリファレンスとしての存在感を徐々に確立してきたかと思います。
 
ハイスペックのプレーヤーを積み上げる縦軸の進化だけでなく、音楽を聴く楽しみを広げる横軸展開もしっかりやっていく。そのひとつがイヤホンやヘッドホンの提案です。いくつかのメーカーと協力させていただき、AKシリーズを楽しむ視点で展開しています。ただ音がいいというだけでなく、例えば様々な音楽ジャンルでの楽しみ方を想定しながら、BA型、ダイナミック型と選択肢も増やしています。
 
海外製品を日本にもってくる際、国内の試聴イベントなどに参考出品し、お客様からいただくいろいろな声もフィードバックします。たとえば欧米人とアジア人との耳の位置の違いなども考慮し、ヘッドバンドの調整域を修正するなど製品の仕様を日本向けにも合わせるべく、メーカーと積極的に意見を交わします。音がいい製品だからと単純に代理店権をとって売るだけではなく、きちんとこだわりをもって、お客様に本当に楽しんでいただくまでの責任は全うしたいと思っています。
 
価格帯は市場の売れ筋よりも高めですが、我々がご提案したいのはあくまでも楽しみ方。そのきっかけづくりができればと考えます。お客様にはいろいろなイヤホンやアンプなどの相性や、組み合わせの妙を自由に楽しんでいただきたいと思っています。

ピュアオーディオでの新たなチャネル展開に着手

 —— このほどネットワークプレーヤーもご提案されました。
 

渡辺 Astell&Kernブランドのデスクトップ・ネットワーク・オーディオプレーヤーAK500Nです。価格は160万円と高額ですが、ピュアオーディオのお客様に楽しんでいただける製品だと思っています。
 
当社は高音質での音楽再生を核に据えた楽しみ方を訴求しながら、Astell&Kernでポータブルオーディオ市場でのある程度の立ち位置を確立できたかと思いますが、それに加えてピュアオーディオ市場での認知を広げたいという思いがあります。そこで重要なのは、全国のオーディオ専門店様との関係づくり。ピュアオーディオの商材としてAK500Nをしっかりと訴求するべく、専任の営業体制を秋口を目指して構築しているところです。Astell&Kernについては当社にプロダクトマネージャーがいて、ポータブル機から据置機までの全般的な情報をもっていますから、その人間がハブセンターとなって、ポータブル系の営業、据え置き系の営業とを分業させるイメージでおります。
 
ポータブルオーディオとピュアオーディオの市場は、それぞれに裾野から頂点までのピラミッドを形成しており、双方のお客様はほとんど重複していません。ピュアオーディオの市場には従来からのオーディオファンのお客様がいて、ポータブルオーディオの市場にはiPodやiPhone、PCでの音楽再生に親しんできたお客様が多くいます。私はそれぞれのお客様が混じり合うことでそれぞれの市場が活性化されると考えていますが、当社の製品がその一助になれれば幸いだと思います。
 
AK500Nはピュアオーディオユーザーに向けたネットワークプレーヤーとして、オーディオ専門店様が日頃お取り扱いになる他社のアンプやスピーカーと組み合わせるなど、お店様独自のご提案の一環に加えていただければと思います。まずは製品の良さや楽しみ方をきちんとご説明させていただき、専門店様に認知いただける環境づくりに注力して参ります。

 —— 今後の展開はどのようにお考えですか。
 

渡辺 オーディオには、アナログからデジタルまでいろいろな製品があり、さらにホームネットワークにつないだ聴き方も広がります。すると我々も、これまでやってきたPC系の製品とのコラボレーションも提案しながら、オーディオ専業の商社さんとは違うスタンスでオーディオ市場に取り組めるのではないかと思っています。
 
一方で課題となるのは、若いお客様の取り込みです。PCの市場でも、自作系のお客様はDos/V互換機自作ブームの時代からそのまま持ち上がっている様相ですが、オーディオの市場でも製品展開やお客様、メーカー、販社とのおつきあいなど、より注意してやっていかなくてはと思います。ありがたいことに、ポータブルオーディオ関連のイベントには高校生の方も来られていますから、そういう方々が離れていかないよう、しっかりと注力して参ります。
 
今年新たに取り扱いを始めたブランドのマスター&ダイナミックなどは、デザイン製をアピールしつつ、音のよさを実感していただけます。iPhoneでの通話機能も搭載しています。こうしたお客様にとって身近な存在となる製品も展開しながら、いろいろな方に向け音楽の楽しみ方をアピールしたいと思います。

 —— 今後のご活躍も、おおいに期待しております。



このインタビューは「Senka21」7月号に掲載されています。
詳しくはこちらをご覧ください。
http://www.phileweb.com/editor/senka21/2015-07/

関連記事