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名門ブランドの今後の方向性とは?

英Naim Audio レイサム氏インタビュー。「mu-so」で目指したこと、そしてこれから

公開日 2015/05/22 14:28 インタビュー/記事構成:季刊NetAudio編集部 浅田陽介
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■アプリやソフトウェアを自社開発できる強み

そしてもうひとつ注目したいのは、ネイムがソフトウェアはもちろんのこと、スマートフォンやタブレットデバイス向けアプリまで開発できるメーカーということである。これはオーディオ専業ブランドとしては極めて珍しいことだ。

mu-soのコントロールアプリは自社開発されたもの。UPnPに対する豊富なノウハウを持つ同社らしく、操作性や視認性などは極めて高いレベルを実現している

「ネイムはコンポーネントを手がけてきたブランドですので、本来ソフトウェアやアプリは全く別のフィールドのものとなります。しかし、昨今のコンポーネントを見ていただければ分かる通り、いまではソフトウェアやモバイルデバイスのアプリ開発もオーディオブランドとして避けては通れないものとなりつつあるんです。そのため、数年前からネイムではソフトウェアの開発に関わるチームを設けています。

ポイントは、やはりどんなアプリケーションでも完璧に動作することが求められるということ。ネイムの場合はそれを自社で完結することができ、何度も納得が行くまでカット・トライを繰り返すことができるということが大きな強みにもなっています」


事実、日本では最もポピュラーなサーバーソフトとなるTwonky Mediaの設定項目には「Naim Audio SetUp」という項目が用意されているほどで、UPnPを採用するヨーロッパブランドのネットワークプレーヤーの中には、この設定に合わせるモデルも多い。ヨーロッパにおけるネイムのネットワーク関連製品は、いまやスタンダードとも言える地位を築いている。

「ネイムがストリーミングオーディオを開発したことには、CDリッピングやダウンロードしてきたデータ音源を楽しみたいというニーズが高まったことが背景にあります。ファーストモデルとなるUnitiからもう6年が経過していますが、今回のmu-soでもこれまでの開発で培ってきた技術をふんだんに投入しています。例えば、UPnPのテクノロジーは全く同一です。なお、このストリーミングオーディオ機器は、ネイムのなかでも3割ほどの売上を誇るほど、高くご評価をいただきました」

■変わることのないネイムのアイデンティティ

このように、オーディオ再生に関わるコントロールから、最終的に音となってリスニングルームに響き渡るまでのプロセスを全てカバーできるネイム。そんな同社は、いまのオーディオの市場をどのように捉え、またどのような製品を生み出していこうと考えているのだろうか?

「mu-soの開発を開始してからの2年の間に、ヨーロッパのオーディオ事情もかなり変化しました。これまでのトラディッショナルなオーディオブランドではなく、もともとはオーディオからスタートしていない新しいブランドが、また違った意味でヨーロッパのオーディオ市場を盛り上げています。

先日、独ミュンヘンにて開催されたMunich HIGH ENDの同社ブースの様子。同社のハイファイコンポーネント群をはじめとした一連の製品群は、ヨーロッパの音楽ファンを中心に高い注目を集めている

こうした流れの影響もあり、もちろん従来のオーディオというマーケットもかなり様変わりしてきました。コンポーネントは、プレーヤー、プリ、パワー、スピーカーというようにそれぞれの機器が独立していたわけですが、いまは音質面よりもデジタルのフォーマットを活用しながらオールインワンで使いやすいコンポーネントを作り上げることが求められるんです。これはある意味では悲しいことでもありますが、受け止めなければならない事実です。

その一方で、アナログを体験したことがなかったような若い層が、レコードへ関心を寄せているというのは興味深い事実だと思います。レコードとデータ音源の中間にあるCDは、難しい局面を迎えています。いまの音楽ファンの皆さんは、ストリーミングサービスで音楽を流しっぱなしにして、もし気に入った曲があればそれをダウンロード配信やレコードで探すという傾向です。

こうしたことを踏まえたうえで、ネイムではこれから先5年間のロードマップはもう考えており、開発を進めます。その中には、当然これまでのハイファイコンポーネントの製品もありますし、mu-soのファミリーとなるラインアップも考えています。いずれにしても、『ネイムだからこその製品』というアイデンティティは変わることはありません」




(インタビュー/記事構成:季刊NetAudio編集部 浅田陽介)

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