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名門ブランドの今後の方向性とは?

英Naim Audio レイサム氏インタビュー。「mu-so」で目指したこと、そしてこれから

公開日 2015/05/22 14:28 インタビュー/記事構成:季刊NetAudio編集部 浅田陽介
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■「1000ポンド」の中にネイムの全てを注ぎ込む

mu-so以前は、日本でもおなじみのブラックの筐体を持つ単品コンポーネントが主流だったネイム。ネイム自身はプレーヤーからアンプ、スピーカー、そしてケーブルに至るまでを開発・発売する総合オーディオブランドだったが、mu-soはそれらのノウハウを全てオールインワンという限られたスペースのなかで実現することが求められた。レイサム氏は「ネイムにとってmu-soは全く新しいものを作るための新しいチャレンジだった」と語る。

ネイムオーディオは、その表現力豊かなサウンドで、地元ヨーロッパで特にポピュラーなブランドのひとつである。だからこそオールインワンシステムとはいえ、ブランドバリューを落とすような製品であってはならない。その一方で、これまでの製品開発とは大きく異る部分もあったはずだが、それはどのようなものであったのか。

「mu-soの企画自体が立ち上がったのは3年前です。開発そのものには2年を要しました。開発にあたる軸となったのが価格です。『ネイム=2000ポンド、3000ポンドの高い製品』というものがこれまでのネイムに対するイメージでしたが、このイメージを払拭して、これまでネイムに興味を持たなかった新しい層へ向けた製品をいかにして作りあげるか、そしてクオリティの高いサウンドをいかにして提供するか、というところが最も大きな課題だったんです。このことを実現するためのポーダーラインとなったのが、『1000ポンド』という数字でした。この価格のなかで、いかに優れたデジタルオーディオシステムを作り上げるのか、ということが最も重要なミッションとなったのです」

1000ポンドという限られた価格の中で、ネイムの技術を注ぎ込んだMu-so。スピーカーユニット初め、随所にネイムのノウハウを活かした設計としている

値段を抑えながら、全ての要素を盛り込む。現在のオールインワンシステムの市場を見ていると、リビングに収められる機器ということもあってデザイン性を重要視する傾向が強い。ネイムはこのデザイン面においてもラグジュアリなアルミ筐体やヒートシンクと一体となったWi-Fiアンテナ、タッチセンサー内蔵のボリュームノブなど、他の製品にはない質感を実現している。しかし、ネイムが最もプライオリティを置いたのはサウンドだったとレイサム氏は語る。

デザインや操作性などの完成度の高さもMu-soの大きな特徴だ。その上で高いサウンド性を実現することがMu-soに課された課題だった

「もちろん、リビングに置いて十分な満足感が得られるデザイン性の高さなども重要でしたが、私たちがもっとも重要視したのはサウンド。万人とはいかずとも、できるだけ多くの方に『いい音だね』と言っていただけるサウンドチューニングに最も時間をかけましたし、また細心の配慮もしました。mu-soのためにスピーカードライバーも新たに設計したり、アンプ部も最適化を図ったりと、あらゆるコンポーネントを手がけるネイムだからこそできることを全て注ぎ込んだんです。

さらにもうひとつ大きな軸となったのがDSPです。これには、ネイムが世界的に高級車として知られるベントレーの音響設計にも携わっていることが関係します。高級車の音響設計にあたっては、極めて限られた空間内で最良のサウンドを実現することが求められるわけですが、今回のmu-soに搭載されたDSPテクノロジーの面で、そのノウハウを活かしたわけです」


こうした話を聞いていると、mu-soが世界的な人気を博している理由が見えてくる。総合オーディオブランドとしてハイファイコンポーネントにて高い評価を獲得し、「全く新しい層へ」という想いのもと、限られた条件下で持てる技術を全て投入したこと。このことこそが、冒頭にレイサム氏が話したネイムにしかないオリジナリティという部分に直結しているのだ。

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