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独自DSP技術「S1LKi」などの技術を随所に盛り込む

ローランド初のUSB-DAC「Mobile UA」登場 − キーパーソンに聞くその革新性

2014/10/24 季刊NetAudio編集部
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Mobile UAのコアとなるDSPによる変換技術「S1LKi」

― なるほど。いま、コンシューマーオーディオの世界ではどんどんサンプリング周波数が上がってきてはいるんですが、そのスペックをフルに活用できる音源がないという現状も一方で挙がっています。そう考えると、この音源との親和性を高めるこの設計は実にローランドらしいところですね。そんなMobile UAに搭載された技術のなかでも特に興味深いのがS1LKiです。そもそもS1LKiというのは何かの略なのですか?

安東 “スーパー・1ビット・リニア・キネティック”です。それの“1”を“アイ”と読ませて「シルキー」と発音するものです。

こちらがS1LKiの概念図。通常DACチップの内部で行われる動作を別途用意されたDSPで行うことになる。これにより、回路に合わせた最適な補間フィルターを形成することができ、音に大きなメリットをもたらすという

― これはMobile UAで初めて搭載された技術ですよね?

安東 そうです。今回のMobile UAのために開発した変換技術となります。S1LKiはPCMデータをアップサンプリングする技術と、アップサンプリングしたPCMをさらに1bitへ変換するための技術です。

― とはいえ、多くのDACチップの仕様を見ていると、内部で最終的に1bitにするというのは珍しい話ではありませんよね。決定的な違いはどこにあるんですか?

櫻井 一般的にはDACに既存で存在する機能ですね。ただし、S1LKiではDACに搭載されるこの機能をあえて外に出してやって、自社のカスタムチップ内のDSPでアップサンプリング、さらに1bit化するという仕組みになっています。今回、なぜあえてこういう仕組みにしたのかというと、一般的なDACに搭載されているオーバーサンプリングの機能には補間フィルターというのが必要になるんですけど、この補間フィルターは固定されたものなんですね。ある程度バリエーションはあるにはあるのですが、それでもやはり決め打ちになってしまいます。しかし、この補間フィルターは音にものすごく作用するものなんです。回路全体を作っていく際にアナログ部分を考慮するにあたって、必ずしもその補間フィルターがベストな結果をもたらすとは限らないんです。最適な信号処理をするために、自分達が全体を知った上でフィルターを作れる、特性を自在にコントロールできるというのがS1LKiの最大のメリットになります。

Mobile UAの開発者である櫻井氏。搭載する回路に合わせた補間フィルターをコントロールすることができるとS1LKiの魅力について語る

― これをこの価格帯の製品でできるというのが、さすがはローランドというところでしょうね。

安東 自社製のカスタムチップとエンジニアを持つ強みですね。

― 使用しているDACそのものはどういったものなんですか?

安東 DACは32bit対応という観点からと4chの出力が必要だった関係で、どちらの要求も満たす高いグレードものを搭載しています。


Mobile UAは独自のドライバーアプリケーションを用意。S1LKi内部の「1bit」モードのオン/オフや出力切り換え、ボリュームバイパスなどの基本的な設定は、全てこのコントロールパネル上で行うことができる
― ―場合によっては「PCMはPCMのままで」というケースも考えられると思うのですが、この1bitモードをオフにすることはできるんですか?

櫻井 もちろん、32bitの信号を32bitのまま出力することも可能です。Mobile UAのコントロールパネルから「1bit」をオフにした場合は、入力された32bitのPCMデータを、32bitのままのPCMとしてDACで再生しています。

― DSDの伝送はASIO2.1以降によるいわゆる「ASIO native」ではなくDoPで行っているとのことですが、そこには理由はあるんですか?

櫻井 MacとWindowsの両方に対応させられるというのが一番大きいですね。

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