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音質を高める技術的背景を開発者に聞く

「音の良いPC」を作るNECとヤマハ ー 豊岡工場で見た “こだわり” 技術

公開日 2014/09/09 10:24 コヤマタカヒロ
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ヤマハでこれらのソフトウェア技術を担当するのが石田氏だ。

「ホールの設計では、音響システムなど、電気的に補正することがあります。そういったノウハウを民生用に落とし込んでいます。また、弊社ではずいぶん前から世界中のコンサートホールや教会などの音響の実測データを計測し続けてきました。それぞれのホールの残響を電気的に掘り起こしてあげる。あるいは、ソースを加工するための材料にできます」(石田氏)。

これらのノウハウや音響データはDSPデバイスとして、国内外のメーカーのAVアンプやテレビなど、多くの民生品に提供されているという。しかし、これらは基本的に半導体(ハードウェア)として提供されるものだった。そこで、今回2014年モデルのNEC製PCにこの技術を搭載するにあたり、ソフトウェア化を実現したという。

今回採り入れられたのが以下の5つの技術だ。

【Acoustic Total-linear EQ】(トータルリニアフェーズ“音響補正”)
高精度に周波数する技術。位相(時間軸)まで補正することで音質をより自然に改善し、ソースに忠実な音像位置を再現する技術。よりクリアで自然な定位感を実現する。

Acoustic Total-linear EQの解説

【Spacious Sound 3D】(実演データに基づいた音場拡大処理)
コンサートホール設計で培った技術を元に、視聴位置にとらわれることなく、より自然で美しいサラウンド空間を提供する技術。仮想音源を用いた音場創生技術を応用し、奥行き方向に立体感を与える効果や人間の聴覚特性に最適化されたサラウンド効果を実現する。

【Harmonics Enhancer Extended】(Missing Fundamentalを利用した帯域拡張処理)
脳の錯覚を利用して、スピーカーでは再現できない基本周波数を抽出し、おの倍音成分を強調することで、あたかも低域の音が再生されているように認識させる技術。付加される倍音の大きさや比率で音質が変化することを利用し、奇数次と偶数次の倍音を巧みに組み合わせることで実態感を高める効果を実現している。

Spacious Sound 3DとHarmonics Enhancer Extendedの解説

【Clear Voice(CLV)】
セリフやナレーションなどの音声の通りを改善することでBGMや効果音などに埋もれがちな人の声を聞き取りやすくする技術。人の声と背景音を分離処理することで輪郭を整え、嫌みのない自然な押し出し感を実現している。

【Adaptive Volume(ADV)】
人の聴覚に基づいたレベル検出手法にてコンテンツ毎にばらつきのある音量感を自動調整。従来の自動調整機能で課題とされた音揺れ、反応の遅れ音質の変化にも対応した自然な補正を実現している。

Clear VoiceとAdaptive Volumeの解説

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